NCARの作品活用促進グループでは、2023年度より国立美術館の所蔵作品を対象とした科学調査を行っています。2024‐2025年度は、2カ年にわたり、国立国際美術館が所蔵するジャスパー・ジョーンズ《パン》(1969年)の科学調査を行いました。
《パン》は、木製パネルを覆う薄い鉛板の上に、金属製のオブジェが取り付けられた作品です。2010年頃に鉛板の変形、膨張が認められて以降、展示が困難な状態となっていましたので、作品の保存修復方針決定のため、鉛板の劣化原因の究明を目的に、国立アートリサーチセンター、国立国際美術館、奈良文化財研究所が連携して科学調査を実施しました。
奈良文化財研究所により、作品のデジタル顕微鏡観察、微細試料の微小部X線回折分析(試料を構成する化合物の同定)、マイクロフォーカスX線CT(試料の内部構造の観察)での材質調査が行われました。その結果、鉛板は、基材の木製パネルと接する面から腐食が進み、作品表面に向かって凸状に変形が起こっており、また、腐食層の内部には多数のクラックが観察され、鉛そのものが脆弱化している様子が確認されました。
鉛板の劣化原因、作品の劣化抑制対策についての報告は、NCAR紀要の71~78頁に「国立国際美術館所蔵 ジャスパー・ジョーンズ《パン》に使用された鉛の劣化に関する調査」として掲載されております。
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