2024年10月29~31日、国立アートリサーチセンターと東京文化財研究所の共催により、「文化財保存修復に関するワークショップ-写真の識別と保存について-」を開催しました。
パリ自然史博物館教授およびフランス国立保存研究センター研究員であるベルトラン・ラヴェドリン(Bertrand Lavédrine)氏の推薦を受けて、フランス人写真保存修復専門家ゲノラ・フュリック(Gwenola Furic)氏に講師を依頼し、東京文化財研究所を会場として、午前中の講義と午後の実習からなる3日間のワークショップを行っていただきました。午前の講義には59名が参加し、その中から24名が午後の実習までを履修しました。
講義は一日目に「写真技法の歴史と識別」、二日目に「写真の劣化と損傷」、三日目に「予防的保存: 包材、保管、保存環境」のようにテーマを段階的に分けて、分かりやすく説明して下さいました。ダゲレオタイプ、ティンタイプ、ゼラチンプロセスなど様々な種類の写真の実物サンプルを持参いただき、これらを参加者が手に取って観察し議論し合い質問ができたことは、貴重で有意義な経験となりました。
実習では、一日目に19世紀の古典的写真技法である塩化銀紙を作り、実際に硝酸銀溶液を紙に塗布して感光させ写真を焼き出すことで、写真の原理を実体験から理解しました。二日目と三日目は、様々な種類のポジやネガ、紙焼き写真の同定と劣化状況の観察を行い、状態調書への記入と発表、およびディスカッションを行いました。
参加者からは、写真の種類を同定できるようになるためにさらに勉強し経験を積みたい、予防的保存の手法をすぐ実践してみたいといった声が寄せられました。
鳥海秀実(国立アートリサーチセンター)