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写真1 ナノセルロースフィルムの作成(ナノセルロース溶液をペトリ皿に入れて乾燥させフィルムを作成)
昨年度(2022年度)、東京文化財研究所では、フランスよりナノセルロースの文化財修復適用に関する第一人者であるレミー・ドレフュス=ドゥセーニュ(Remy Dreyfuss-Deseigne)氏をお招きしてワークショップを開催しました。ナノセルロースは高い透明性や、接着剤を使用することなく紙等をつなげられることなど、これまでの修復材料にはなかった特性を持ち合わせています(活動報告はこちら)。
写真2 ナノセルロースを用いた修復処置の実習(紙資料に筆でナノセルロース溶液を塗布し破れを繕う)
2022年度に開催したワークショップには定員に対して2倍以上の参加申し込みがあり、講義のみの受講となり実習への参加がかなわなかった方もいらっしゃいました。そこで、2022年度の講義を受講された方を対象に、実技フォローアップとして、ナノセルロースフィルム作成と作品への適用の実習を行う1日研修を実施しました。
今回も2022年度と同じくレミー・ドレフュス=ドゥセーニュ氏を講師にお迎えし、博物館、美術館、図書館等の組織において保存修復を担当される方からフリーランスの保存修復専門家まで合計10名の方々にご参加いただきました。様々な種類のナノセルロースのサンプルを実際に手に取り、ナノセルロースフィルムを作成したり処置に使用したりすることによって、講義から得られた知識についてさらに理解を深めることができました。今後、この新たな修復材料が日本でも活用されてゆくことが期待されます。
鳥海秀実(国立アートリサーチセンター)