2023年10月28日、国立アートリサーチセンターは、世界的に活躍する保存修復専門家のクリス・スタヴロウディス氏による講演会「近現代美術の保存修復-ジャクソン・ポロック作品の事例から-」を東京国立近代美術館にて開催しました。
当日は92名が参加し、近現代美術の保存修復の実際について知見を深めることができました。スタヴロウディス氏は、修復事例を2つ紹介しました。
1つ目は、ロサンゼルス現代美術館にて公開修復を行ったジャクソン・ポロック作《ナンバー1》(1949年)です。同氏が開発したモジュラー・クリーニング・プログラム(Modular Cleaning Program/MCP)を用いて、アクション・ペインティングをクリーニングし修復したプロジェクトでした。
2つ目はハイパーリアリズムの画家、デイヴィス・コーン作のアクリル画のワニス塗布についてです。ワニスの材料と塗布方法を研究し、作家本人と話し合いながら、画面の光沢を均一に調整し色彩に深みを与える方法を見出しました。
工業製品を用いた近現代美術の保存修復が、日本でも今後大きな課題となることは明らかです。今回の講演会では、保存修復専門家および一般の多くの方々から質問が寄せられ、スタヴロウディス氏は質問に対して一つずつ丁寧にご回答くださいました。
鳥海秀実(国立アートリサーチセンター)