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写真1 講義風景
講師のアメリカ人絵画保存修復専門家クリス・スタヴロウディス(Chris Stavroudis)氏は、作品のクリーニングに使用する溶媒の配合をコンピューターでプログラム化したモジュラー・クリーニング・プログラムの開発者であり、世界各地で70回以上にわたり同プログラムのワークショップを行われてきました。今回は東京文化財研究所を会場とし、アジアで初めてのワークショップでご指導をいただきました。
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写真2 クリーニング溶液の調製
ワークショップでは70名が午前の講義を受講し、その中から21名が午後の実習までを履修しました。参加者は基礎的なクリーニングの理論および同プログラムに関する講義を受け、クリーニング溶液の調製とさまざまな材質の試料に対してクリーニング・テストを行いました。
スタヴロウディス氏は、「コンピューターは溶液調製の計算を助けてくれるだけで、作品に関して何も理解していない、処置方法を考え決定するのは保存修復専門家自身である」ことを強調されました。当ワークショップは、保存修復専門家の観察・分析力に加え、化学知識や修復倫理などに関する研鑽の必要性をあらためて認識する機会となりました。
2019年に東京文化財研究所で開催された「文化財修復処置に関するワークショップ-ゲルやエマルションを使用したクリーニング法-」で得られた基礎知識の上に、モジュラー・クリーニング・プログラムに関する知識と技術をさらに積み上げることができました。
上記報告書はこちらからダウンロードしていただけます。
鳥海秀実(国立アートリサーチセンター)