参加者の声
「平成28年度 美術館を活用した鑑賞教育の充実のための指導者研修」終了後に実施したアンケートで、修了者全員である99人から有効回答が得られました。以下に、選択回答の結果と自由記述からの抜粋をご紹介します。
1.研修全般について
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- いままでいろいろな研修に参加はしましたが、この研修は本当に充実していましたし、得るものも大きかったです。図工美術に関わる全国の現状を知ることができ、自分の住む地域だけのことではない共通の課題があることもわかりました。これから1年、今回学んだことを実践したいです。そして、やってみて見えてきたことを基にこの研修を受けたら、また違った視点で捉えられるのだろうなと思います。来年もまた受講してみたいと強く思いました。(小学校教諭)
- 指導主事の先生から勉強になる研修だと勧めていただき、参加しました。はじめは不安が大きかったのですが、研修を終えて、充実感を得るとともに今後の課題を見つけることができたと実感しています。自分も研修で出会った先生方のように挑戦していきたいと感じています。(中学校教諭)
- 地方からで遠かったのですが、地方の先生こそ行くべき内容だと思いました。(中学校教諭)
- さまざまな形態で研修させていただき、とても楽しく、有意義な時間でした。毎年このような研修に参加し、交流し、語り、考え、つながっていけたらどんなによいかと思います。 今年から2回めの人も参加できると聞きましたが、各都道府県ごとに参加数が決まっているので、ぜひまだ参加されていない方に参加してほしいと思います。(中学校教諭)
- 前回も感じたことですが、この研修は私たち現場の教員が自信をもって美術教育に向き合うことができる力を与えてくれるものです。何度参加しても新しい発見があり、出会いがあり、何より「早く学校に戻って授業したいなぁ」と心を揺さぶられる感覚があります。一人でも多くの現場の教員が美術の楽しさ、素晴らしさをいま以上に生き生きと子どもたちに伝えられるように、ぜひ今後もこの研修を継続してください。(中学校教諭・2回目受講)
- 鑑賞教育についてだけでなく、話し合い活動の手法やポイントをたくさん学ぶことができました。(中学校教諭)
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- 「東京」で行われるということ自体にも価値があると思います。日本の首都であり、人もモノも文化も情報も集まっている「東京」に触れること自体が、明日の日本を考えられる要素だと思います。一方で次年度は「京都」での開催ということで、日本の伝統・文化の蓄積された「京都」のよさなどを活かした取り組みになっていくといいと思います。(中学校教諭)
- 職場に帰ってからもがんばろうと強く思える研修でした。(高等学校教諭)
- 高校の教員にも鑑賞教育の研修を開いていただき、感謝いたしております。私たちは、ふだん誰とも語り合えないまま授業に取り組むことが多く、いつも孤独を感じながら教育活動に臨んでいます。自分だけでは美術館との連携を結ぶのがむずかしく感じたり、実際のカリキュラム上、実施が困難であったりと、おそらく高校美術を取り巻く状況は非常にきびしいものがあります。私の学校は美術Ⅰのみの履修です。この2単位のなかで生徒にしてあげられることは限られたものになります。いまできることがなんなのかを、考えるきっかけをいただけたと思います。(高等学校教諭)
- この研修では学校と美術館と、それぞれの立場からの率直な疑問や意見を聞くことができ、連携の仕方の具体例まで知ることができました。(高等学校教諭)
- インプットとアウトプットを繰り返す刺激的な研修でした。(学芸員)
- 本研修を経て、新たに立案した事業や試みの成果について、再度、意見交換・事例情報交換の場が設けられたら非常に興味深いと思います。そのような機会があればぜひ参加したいと思います。(学芸員)
2.グループワークについて
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- これぞまさにアクティブラーニング。(小学校教諭)
- 発達段階を考慮して鑑賞作品をどう選ぶかを、本物の作品を目の前にじっくりと考える機会はこれまでになく、たいへん貴重な時間だった。(小学校教諭)
- グループ発表も、新たな発見、学びがあり、現場の鑑賞教育ですぐに活かせると思った。(小学校教諭)
- グループでの鑑賞授業づくりの際、学芸員の方も多くおり、ふだんは聞けなかった学芸員の本音や強い思いを伺うことができました。(中学校教諭)
- 美術作品に囲まれた部屋で一日過ごすたいへん贅沢な時間でした。(中学校教諭)
- 生徒の気持ちに近い状態でのスタートであったので、どのタイミングで面白さを感じるのか、どういうアプローチや発問が思考を深めることができるのか、興味をもって始めることができました。(中学校教諭)
- 一つの作品をあれほど時間をかけて感じ合ったことに感動しています。ファシリテーターの助言やヒントとなる言葉での導きが、考えをまとめるのにとても役に立ったと思います。(高等学校教諭)
- 高校では学校に美術教員が一人という場合が多いので、日ごろから自分の鑑賞教育について誰かと意見を交わしあったり、専門家の方にお話を聞いたりということがほとんどありませんでした。各地の高校美術の教員の方と美術館の学芸員の方たちと1枚の日本画について鑑賞を深めていくとき、ああ、生徒たちにもこんな経験をさせてあげたいなと感じました。(高等学校教諭)
- 鑑賞教育において、事実とイメージを選り分けて作品を掘り下げるメソッドが新鮮でした。この方法は、情報が氾濫する現代社会において正しく分析する視点を得られる、いい方法です。美術と他教科、美術と社会を結びつけるキーアイテムになると確信しました。(高等学校教諭)
- 教員のみなさんといっしょに、授業案づくりを体験できたことは貴重だった。 彼らがどこに重きをおいて授業案を作成しようとしているのか、学習指導要領に繰り返し立ち戻って、案を練り上げていく姿勢が印象的だった。(学芸員)
3.事例紹介について
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- 小学校の事例はもちろん参考になりましたが、中学校や美術館の事例が聞けたのがよかったです。つながりを意識することができました。特に美術館の事例は、学校と美術館の役割がはっきりとし、参考になりました。(小学校教諭)
- 時間があれば、小グループなどでこれらの実践について意見交流する時間があるとよいと思った。(小学校教諭)
- 今回の事例では美術館の近く、または美術館に行くことができる学校の例だったので、その他の学校での事例も聞いてみたいと思いました。(中学校教諭)
- 事例だけでなく、そこに至るまでのプロセスや考え方を聞くことができ、とても勉強になりました。(中学校教諭)
- 小中学校での実践を聞くなかで、児童・生徒は私自身が考えていたよりずっと、考え、行動できる伸びしろを有していることに気づかされました。(高等学校教諭)
- それぞれの学校で、先生方が児童・生徒の発達段階を的確に捉えて、その地域でしかできないことや、その時期にしかできないことなど、機会を逃さずに授業を作っておられることがわかりました。(高等学校教諭)
- 鑑賞の学習を「単発のイベント」にしてはいけないということを再認識した。評価のための単発鑑賞授業が横行している現状を打破するためにも、身につける力を明らかにして継続的・系統的な鑑賞の授業を教育課程に位置づけることの重要性を、学校に広めていきたい。(指導主事)
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- 美術館の鑑賞プログラムを展開していくうえで、学校側のニーズにどこまで応えるのか、いままでたくさんの迷いがあったが、子どもを中心に置いて、よりよい鑑賞体験をしてもらうため、学校と美術館がお互いを理解し合う必要があると感じた。(学芸員)
- 千葉市美術館の発表が、自分の美術館が抱えている課題と近く、参考になった。美術館側と学校側の役割分担について話しておられたが、学校に即したリクエストに応えられる美術館の仕組みづくりについて、事例を参考に早急に考えていきたい。(学芸員)
4.ワールドカフェについて
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- もっと話したい。そんな気持ちが湧き出てくるような企画でした。(小学校教諭)
- いろいろな人と話すこと、聞いてもらえることの嬉しさもありました。これも、鑑賞と同じですね。最後に考えた「そのためにできること」。実践していきたいですし、休み明けが楽しみになりました。(小学校教諭)
- 段階を経るごとに話し合いが深まっていき、鑑賞に関する考えが定まっていくという、初めて経験する実践であった。学校現場でも活用していきたい。(中学校教諭)
- わずかな時間でしたが、直接話をしていない人たちとも、会話をしたように思います。カフェが終わるころには会場全体に一体感があったように感じました。今後、使ってみたい手法でした。鑑賞体験の意見交換では、「本物の作品が与える衝撃」がいまの人生に影響を与えている人も少なくありませんでした。本物の作品と生徒を出合わせたいと思いました。 (中学校教諭)
- 最後の付箋による短い言葉には、感銘を受けました。(高等学校教諭)
- 私は口下手で、始まる前は不安がありました。しかし、案ずるより産むが易しで、あっという間に時間が過ぎていき、話はつきないという状況でカフェの終わりを迎えました。私以上に口下手なシャイな高校生にも、こんな機会を与えてあげたいなと心から思いました。(高等学校教諭)
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- 自分の体験を入り口に活動が始まり、協議がしやすかった。テーブルで話題になったことを次のテーブルで要点を話すため、自分のアンテナに引っかかったことや要点を整理することができた。自分の願い、課題、成果を再認識することができたと思う。(学芸員)
- ふだん、あまり交流することのない高校生の状況も聞けて新鮮だった。核心に迫っていく三つのテーマ設定も、よく練られたものだと感じた。(学芸員)
- 短時間でこんなにたくさんの方と会話をし、「鑑賞」について語り合えるなんて! 感激です。(学芸員)
5.講演について
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- 東良先生のお話は、わかりやすく、研修のスタートにぴったりだった。やる気のわくお話で、前向きになれた。神野先生のお話は、最後にふさわしく、鑑賞教育の広がりや可能性を感じた。(小学校教諭)
- 東良先生の講演から、自分の授業を振り返り、冷や汗が出そうでした。「対話させないと、話し合い活動をさせないと……」と、あせっていました。でも、「自分との対話」が大事であり、「自分の中に、見方・感じ方がある」からこそ他者と対話ができるのだと、頭を叩かれたような衝撃を受けました。今後の授業で忘れないようにしたいです。(中学校教諭)
- 価値観というのは、干渉不可なもののように思っていました。「価値観を育んでこそ、人は意見をもつことができる。その支援としての鑑賞教育の価値」という東良先生のお話は、自分の中で掴みどころのなかった鑑賞教育の意義の柱となりました。神野先生の創作のサイクルについても、いままで実践しながらも意識の上に上ることのなかったものでした。(高等学校教員)
- 神野先生の「美術館の中に鑑賞をとどまらせるのではなく、日常の世界にどう接続していくのか」というお話が心に残った。これはワールドカフェで自分がいたグループで、共通認識として挙がった課題であった。美術鑑賞を日常生活に直結するものとして(=生きる力として)、生徒に美術を捉えてもらえるようなお手伝いができればと思った。(学芸員)
6.この研修の経験を、現場でどう活かしたいですか?
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- さっそく学校の授業で実践したいです。また、校内での研修を行い、広めていきたいと思います。 市の研究局長をしているので、全国大会に向けて授業の見直しをしていくとともに、いっしょに研究をしている仲間にも学びを広げていきたいと思います。(小学校教諭)
- 来週、教職員の研修会で鑑賞授業を公開する機会をいただきました。さっそく、新鮮なうちに研修の成果を発揮したいと思っています。新鮮な気持ちをもちつづけるためには、定期的な研修を受けることも必要です。また機会があれば参加させてください。(小学校教諭)
- 当市は図工専科はなく、担任の先生方が授業をされるので、図工を苦手とされる先生方が多い。そんな先生方のために、図工・美術の研修会(実技研修)などで、本研修で学んだ内容を活かしていきたい。(小学校教諭)
- まずは、自校の教育課程のなかの鑑賞について小1~中3までつけたい力と手法について整理し、職員で共通理解させたい。 また、地域の美術品について発掘し、学習にどう活かせるのかまとめたい。(中学校教諭)
- グループワークで考えたことを彫刻鑑賞の授業に活かす。子どもの発達段階を意識し、育てたい力をより明確にする。この研修の内容を地元のミュージアムの学芸員、市美術部会で紹介し、連携をより深めていく。 アートカードを購入し、授業の導入などで活用する。(中学校教諭)
- 現在行っている鑑賞授業の内容は、「見て、楽しんで、終わり」のような気がするので、研修で学んだ「鑑賞を行ったあとのその次」につながるような教材を作っていこうと思いました。(中学校教諭)
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- 現在の勤務校は、県で唯一芸術科を設置している学校です。しかし、そのなかで実施されている鑑賞教育については、従来の知識一方向の教授タイプのものが多いと思われます。今回の研修の経験を、授業で活かし、子どもたちが造形的な視点を豊かにもち、新しい意味や価値を作り出す深い学びがある鑑賞授業を目指したいと思います。(高等学校教諭)
- 当館のスクールミュージアム事業では、年間30校を受け入れている。しかしながら、教育普及担当者が不在の当館でこの事業を執り行うのは、困難を極めている。私自身、受け入れ時の分担・流れ作業に、毎度疑問が膨らんでいた。今回の研修を受け、日々抱いていた疑問が明確になり、大いに実りある受講となった。制約はたくさんあれど、そのなかで取り組めることから始めようと思う。今後は、問題点を職員同士で話し合い、鑑賞教育について改善していけるように努めたい。(学芸員)
- 今回、同じ県内で参加されていた先生と目的意識を共有できたので、これから実際にどのように連携を行うか相談していく予定である。(学芸員)
- 教育普及事業の実態に合った見直しの提案。(学芸員)
- 市立の美術館である当館では、市内の小中学校との連携が課題となっている。夏休み期間中に宿題で訪れる小中学生に向けてイベントを企画しているが、なかなか市内の小中学生が来館しない。図工教員、美術教員に宛てて案内は出してはいるのだが、今年もそこまでの成果が出てはいない。今回の研修を受け、教員の方々の現場での話を聞き、その理由が少しわかった気がした。学校教育が美術館にやってもらいたいこと、教育の現場でできること、その理解をしていなかった。単に、美術館を知ってほしい、作家を知ってほしいだけではいけない。学校に要望を聞きながら、いっしょに鑑賞プログラムを構築していきたい。(学芸員)
※ アンケート結果を表した円グラフでは、小数点以下を四捨五入したため、合計が100%にならない場合があります。