2025年8月6日に、「Single Thread Bondingによる破れたキャンバスの補修」を開催しました。
国立アートリサーチセンター大会議室にて、株式会社土師絵画工房代表の土師広氏を講師にお迎えし、切れてしまったキャンバス繊維を一本一本つなぎあわせて補修する修復技術「Single Thread Bonding」について講演していただきました。
事前応募のうえ、油彩画の保存修復士を中心とする30名の専門家が参加しました。
土師さんは、2024年、ゲティ保存研究所 のプロジェクトConserving Canvas Initiative(Conserving Canvas Initiative | Getty Projects )の一環としてシドニーのニュー・サウス・ウェールズ州立美術館で開催されたキャンバス画修復に関する5日間のワークショップに参加され、そのなかでSingle Thread Bondingの技術を習得されました。ワークショップ参加後に、実際の作品をSingle Thread Bondingで処置された際のご報告を、国立アートリサーチセンター|活動レポート|Single Thread Bondingによる破れたキャンバスの補修よりご覧いただけます。
日本では、破れたキャンバスの補修には「かけはぎ」という補強技術が使われてきました。「かけはぎ」は、破れたキャンバス裏面から別の布や糸を橋架け接着するもので、使用する接着剤の量の多さや画面に凹凸が生じてしまうなどの課題があります。これに対してSingle Thread Bondingは、入念な変形修正で繊維を編みなおし、最大限にオリジナルの形状を整えた後で、足りない部分にのみごく少量の接着剤(場合によって新補の糸や布を継ぎ足す)を使用して補修するという方法で、キャンバスに余計な凹凸を生じさせることなく一見補修部分が分からない程度に仕上げることのできる修復技術です。
土師さんには、実践動画を交えた分かりやすいスライド解説に加え、シドニーでのワークショップの体験をもとに、現地で支給された修復キットやご自身で自作、工夫された道具類を実際に披露していただきました。また、Single Thread Bondingと同じく現地シドニーで学ばれた、キャンバスの変形修正「トレッカー装置」の仕様も、実演を交えて詳しくご紹介いただきました。
参加者からは「接着方法と接着剤の選択の幅が広がりました。」「破れや切り傷のある画布の補修に適切な接着方法と接着剤について、豊富なスライドや動画とともに最新の研究成果を共有していただき、ありがたかったです。トレッカー装置や道具、材料についても実物を拝見でき、早速手配して練習&実践したいと思いました。」「具体的な内容でよく理解できました。作業の動画も見せていただいてわかりやすかったです。修復の現場ですぐに実践できそうです。」といった意見、感想が寄せられました。
ワークショップ後も、普段一堂に会する機会の少ないキャンバスを扱う専門家同士が積極的な情報交換、ディスカッションを行う、大変意義深いワークショップとなりました。
日高翠(国立アートリサーチセンター)
国立アートリサーチセンター大会議室にて、株式会社土師絵画工房代表の土師広氏を講師にお迎えし、切れてしまったキャンバス繊維を一本一本つなぎあわせて補修する修復技術「Single Thread Bonding」について講演していただきました。
事前応募のうえ、油彩画の保存修復士を中心とする30名の専門家が参加しました。
土師さんは、2024年、ゲティ保存研究所 のプロジェクトConserving Canvas Initiative(Conserving Canvas Initiative | Getty Projects )の一環としてシドニーのニュー・サウス・ウェールズ州立美術館で開催されたキャンバス画修復に関する5日間のワークショップに参加され、そのなかでSingle Thread Bondingの技術を習得されました。ワークショップ参加後に、実際の作品をSingle Thread Bondingで処置された際のご報告を、国立アートリサーチセンター|活動レポート|Single Thread Bondingによる破れたキャンバスの補修よりご覧いただけます。
日本では、破れたキャンバスの補修には「かけはぎ」という補強技術が使われてきました。「かけはぎ」は、破れたキャンバス裏面から別の布や糸を橋架け接着するもので、使用する接着剤の量の多さや画面に凹凸が生じてしまうなどの課題があります。これに対してSingle Thread Bondingは、入念な変形修正で繊維を編みなおし、最大限にオリジナルの形状を整えた後で、足りない部分にのみごく少量の接着剤(場合によって新補の糸や布を継ぎ足す)を使用して補修するという方法で、キャンバスに余計な凹凸を生じさせることなく一見補修部分が分からない程度に仕上げることのできる修復技術です。
土師さんには、実践動画を交えた分かりやすいスライド解説に加え、シドニーでのワークショップの体験をもとに、現地で支給された修復キットやご自身で自作、工夫された道具類を実際に披露していただきました。また、Single Thread Bondingと同じく現地シドニーで学ばれた、キャンバスの変形修正「トレッカー装置」の仕様も、実演を交えて詳しくご紹介いただきました。
参加者からは「接着方法と接着剤の選択の幅が広がりました。」「破れや切り傷のある画布の補修に適切な接着方法と接着剤について、豊富なスライドや動画とともに最新の研究成果を共有していただき、ありがたかったです。トレッカー装置や道具、材料についても実物を拝見でき、早速手配して練習&実践したいと思いました。」「具体的な内容でよく理解できました。作業の動画も見せていただいてわかりやすかったです。修復の現場ですぐに実践できそうです。」といった意見、感想が寄せられました。
ワークショップ後も、普段一堂に会する機会の少ないキャンバスを扱う専門家同士が積極的な情報交換、ディスカッションを行う、大変意義深いワークショップとなりました。
日高翠(国立アートリサーチセンター)