2025.10.07
企業・団体向けアートプログラム【協働型プログラム】

<事例紹介>
バーバパパ55周年 × 国立工芸館移転開館5周年 | 想いをぎゅっと やきものワークショップ

社会連携促進グループ 高田麻央

企業・団体向けアートプログラム【協働型プログラム】 | <事例紹介><br>バーバパパ55周年 × 国立工芸館移転開館5周年 | 想いをぎゅっと やきものワークショップ

(写真:Masahiro Katano)

国立アートリサーチセンター(NCAR)では企業・団体向けに提供するアートプログラムを2種類用意しています。ひとつは「参加型」としてNCARと国立美術館の各館が企画するプログラムにご参加いただくもの、もうひとつは「協働型」としてNCAR・各館と企業・団体の方がともにプログラムを企画・開催するものです。
本レポートでは、協働型のアートプログラムの一例として、株式会社スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー(以下、プラザスタイル)の協力のもと、国立工芸館にて開催した特別企画「想いをぎゅっと やきものワークショップ」について紹介します。

企画の趣旨・背景

(写真:Masahiro Katano)

本企画は、バーバパパの絵本誕生55周年を祝し、幅広い世代にバーバパパの魅力を広めるための取り組みを計画していたプラザスタイルから、国立美術館にコラボレーションのお声がけをいただいたことから始まりました。登場するキャラクターがとても魅力的なバーバパパですが、絵本における地球環境や多様性を考えるストーリーも特徴のひとつです。NCARは、「バーバパパを通して楽しみながら学べる機会を提供したい」というプラザスタイルの想いに共感し、美術館で社会的な課題や多様なものの考え方を楽しく学ぶ機会を作れないかと考え、協働型のアートプログラムの実現に向けて取り組むことになりました。

国立工芸館との連携

今回、プラザスタイル、NCARと一緒にワークショップを企画・開催したのは、石川県金沢市に立地する国立工芸館です。近現代の工芸・デザインを専門とする美術館である国立工芸館は、1977年、東京国立近代美術館工芸館として東京・北の丸公園に開館し、2020年に石川県金沢市に移転しました。2025年は、移転開館5周年の年ということもあり、本企画を「バーバパパ 55周年 × 国立工芸館移転開館5周年」の特別企画と位置づけることになりました。

ワークショップのアイデアと着眼点

具体的にどのようなプログラムができるだろうかと考えていく中で、国立工芸館における「学びと体験」を担う教育普及を専門とする研究員は、可塑性が高く、手のなかでうごめく土のテクスチャーから生まれるやきものの造形が、バーバパパファミリーのフォルムと共通した性質をもつことに着目。また、やきものを自分でつくる体験を通じて、ものを大切に想う心を育んでいただきたいという思いから、国立工芸館ならではの、やきものづくりのワークショップを企画することとなりました。講師には、陶芸家で2025年に日本藝術院会員に就任された十一代 大樋長左衛門さんをお迎えし、豊かな土味を体感しながら大切な人への想いをこめて造形に挑戦する「想いをぎゅっと やきものワークショップ」の企画が生まれました。

※開催概要は、こちらのイベントページをご覧ください。
(https://ncar.artmuseums.go.jp/events/socialcooperation/corporatepartnerships/cooperativeprogram/post2025-2390.html)

当日の様子と参加者の反応

2025年8月10日(土)、32名の小学生が国立工芸館に集まり、ワークショップが開催されました。参加者は講師のレクチャーを聞きながら、やきもの素材である土や「大樋焼」について学ぶとともに、大切な人を思って何かをつくることや、作った器を大切に扱うことについて考えながら、それぞれの想いがこもった作品を作り上げました。

(写真:Rin Nakai)

協働型アートプログラムへの期待

今回の特別企画は、企業と美術館が、「楽しみながら学べる機会を提供したい」というコンセプトを共有し摺り合わせながら、双方の強みやリソースを持ち合うことで実現に至りました。美術館と企業、それぞれ単独での開催では叶わない、コラボレーションならではの魅力が詰まった特別な企画となったのではないかと思います。
このように、企業と美術館が目的を共有しコラボレーションによる相乗効果を生みながら、より効果的な形でぞれぞれの目標を実現できるのが、協働型アートプログラムの特長ではないかと考えています。今後も、連携の形を積極的に試行錯誤しながら、アートの社会的価値向上を通じて豊かな社会の実現につながるような取り組みを目指していきたいと思います。

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