事例紹介+ワールドカフェ
概要
今年度は鑑賞教育の現場についての報告である「事例紹介」とカフェのような空間の中で話しあう「ワールドカフェ」が組み合わされて実施されました。
まず前半では、小学校・中学校教諭が発表を行ない、内容に基づいたテーマに沿って、ワールドカフェが2ラウンド行なわれました。
昼食をはさんだ後半では、今回初めてとなる高校教諭による事例発表に続いて学芸員が発表を行ない、内容に基づいたテーマに沿ってワールドカフェ2ラウンド、続いて全体セッションを経て終了という進行でした。今年は関西での開催ということから関西圏の学校や機関から発表者が選ばれ、熱のこもった発表がその後のワールドカフェでの充実した会話に繋がっていました。
ワールドカフェは、人々がオープンに会話できるカフェのような空間の中で、お互いの思いや知識を共有したり、知覚を触発したりしながら集合知を生み出す話し合いの手法です。少人数のグループでひとつのテーブルを囲み、メンバーを替えながら話し合いを続けることによって、あたかも参加者全員で話し合っているかのような効果を得ることができます。結論を出すことを目的としない「決めない会議」でもあり、1995年に米国のアニータ・ブラウンとディヴィッド・アイザックスによって編み出され、研修や会議などでの活用が拡がっていきました。指導者研修でも、平成22年度以降、この話し合いの手法を導入しています。
- 日時:
- 8月1日(火)9:30~11:25、13:00~14:55
- 会場:
- 京都市勧業館みやこめっせ 地下1階大会議室
- 事例発表:
- 「〜本物との出会い〜 子どもが見て・感じて・楽しくなる 美術館を活用した鑑賞」
村中誠士(京都市立花園小学校 教諭) - 「京都国立博物館 京都文化協会と進める美術科鑑賞教育」
湯口みゆき(京都市立洛北中学校 教諭)
- 「『高校の美術でできること』~次世代育成の協働の形とその効果について~」
山崎仁嗣(滋賀県立膳所高等学校 教諭) - 「山口情報芸術センターが展開するメディアリテラシー教育 — 自分で探す視点、自分で深める思考 — 」
朴鈴子(山口情報芸術センター YCAM エデュケーター) - 司会:
- 真住貴子(国立新美術館 学芸課 教育普及室長・主任研究員)
吉澤菜摘(国立新美術館 学芸課 研究員)
感想
真住貴子(国立新美術館 学芸課 教育普及室長・主任研究員)
今年は、事例紹介とワールドカフェを合体させるプログラム構成となりました。いきなりワールドカフェで本質的な問いを出されても、なかなか話が弾まないという反省を踏まえてのことです。途中、昼休みが入るため、意識が中断されてしまうのではないかと危惧しましたが、皆さんしっかり議論ができたようです。改善点はあるものの、事例を聞いてからの方が話の焦点が合い、活発な議論になったように思いました。お疲れ様でした。
吉澤菜摘(国立新美術館 学芸課 研究員)
午後の事例紹介が終わってワールドカフェのテーマが発表されたときに会場内に起きたどよめきには、「社会」という主題に対する驚きとともに、この先の議論への意欲と期待が含まれているように感じられました。実際、各テーブルの会話は熱を帯び、参加者が各々の経験や環境を俯瞰的に捉え直しながら、アイデアを出し合っている様子が窺えました。議論を通じて得た視座とアイデアが、各地域での鑑賞活動の推力となることを期待してやみません。