国立アートリサーチセンター (NCAR)は、多摩美術大学アートアーカイヴセンター(AAC)と共同で、NCARシンポジウム004・第7回多摩美術大学アートアーカイヴシンポジウム「マルセル・デュシャン《大ガラス》レプリカをめぐって——ストックホルム・ロンドン・東京・パリ」を開催します。
既製品の便器にサインをした《泉》という作品で、「アート」の概念を大きく揺るがしたマルセル・デュシャン (1887-1968年)。その代表作のひとつ《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも》(通称:大ガラス)(1915-23年、フィラデルフィア美術館蔵)は、8年の歳月をかけて制作された未完成のオブジェで、解釈の幅が広く多くの議論を呼ぶ作品として知られています。
この作品は移送が困難なため、展覧会の機会などにこれまで3点のレプリカが制作されてきました。アジアにおける唯一のレプリカ《大ガラス東京ヴァージョン》(1980年、東京大学駒場博物館蔵)は、デュシャンの死後、彼と交流のあった瀧口修造と東野芳明(多摩美術大学教授、当時)が監修を務め、東京大学と多摩美術大学の学生らがファブリケーター(制作者)となって制作されたものです。多摩美術大学は、同大学の学生たちによって手がけられた試作群の一部を保管していましたが、本年、デュシャンの遺品を管理し作品を世界に広めるマルセル・デュシャン・アソシエーションの承認を受け、同試作群を他の関連資料群とともにAACで正式にアーカイヴ化することになりました。
これを記念し、本シンポジウムでは、レプリカ所蔵機関のキュレーターや研究者らが各国各都市から一堂に会し、それぞれの制作経緯と歴史、レプリカの保存と活用について情報を共有するとともに、マルセル・デュシャンの代表作をレプリカの視点から見直し、同レプリカの特性やアーカイヴ化の意義、今後の具体的な活用のアイディアを提案します。ヨーロッパと日本で制作された《大ガラス》のレプリカと関連資料を考察する初の機会となる本シンポジウムに、ぜひご参加ください。
開催概要
日時 |
2025年3月1日(土)13:30~16:30 |
会場 |
多摩美術大学八王子キャンパス レクチャーAホール (東京都八王子市鑓水2-1723) |
定員 |
200名(要事前申込、先着順) |
参加費 |
無料 |
主催 |
国立アートリサーチセンター 多摩美術大学アートアーカイヴセンター |
協力 |
多摩美術大学メディアネットワーク推進委員会 |
お問い合わせ |
多摩美術大学アートアーカイヴセンター aac@tamabi.ac.jp |
備考 |
※日英同時通訳有り。 ※本シンポジウムは、同時配信はありません。 後日アーカイヴをウェブサイトに掲載予定です。 ※当日は学内の食堂、コンビニエンスストアは閉店しております。お食事等のご購入はできかねますのであらかじめご了承ください。 ※駐車場はございませんので、公共交通機関をご利用ください。 |
参加を希望される方は、以下申込フォームよりお申込みください(申込締切:2月28日(金)23:59)。
※定員に達し次第、受付終了いたします。
登壇者
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アンナ・テルグレン(博士)Anna TELLGREN
ストックホルム近代美術館 写真部門キュレーター、リサーチ部門長
これまでにラース・ツンビヨルク、インタ・ルカ、アニカ・エリザベス・フォン・ハウスヴォルフなど、北欧圏で活動するアーティスト、写真家の個展をはじめ、数多くの展覧会を企画。2011年、「もう一つの物語:ストックホルム近代美術館の写真コレクション」展を担当。また美術館の50周年を機に出版された『ストックホルム近代美術館の歴史 1958-2008』(2008)の編集に携わった他、美術館の元館長でマルセル・デュシャン作品収蔵に尽力したポントゥス・フルテンに関する書籍も手掛けている。
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ナタリア・シドリーナ(博士) Natalia SIDLINA
テート美術館 国際近代美術部門キュレーター
近代の亡命/移民芸術(émigré art)を専門とする。20世紀初頭の東西ヨーロッパにおける美術的実践を通じた文化横断的な歴史やつながりの形成、グローバルな知の交換に焦点をあてた研究・企画を行う。2015年より現職。現在2025年に開催予定の「The Theatre of Picasso(ピカソの劇場)」展に向け、ピカソ作品におけるパフォーマンス性について研究を進めている。近年の展示に「ゾフィー・トイバー=アルプ」(2021)、「セザンヌ」(2022)、「表現主義者たち: カンディンスキー、ミュンターと青騎士」(2024)など。
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光田由里 MITSUDA Yuri
美術評論家、多摩美術大学教授、アートアーカイヴセンター所長
兵庫県生まれ。専門は20世紀美術史・写真史。富山県美術館、渋谷区立松濤美術館、DIC川村記念美術館の学芸員を経て現職。著書に『高松次郎 言葉ともの』(水声社、2011)、『写真、芸術との界面に』(青弓社、2006、日本写真協会賞)ほか。共著に『日本美術の近現代史』(東京書籍、2014)、『美術批評集成1955–64』(藝華社、2021)など。企画展に「ハイレッド・センター 直接行動の軌跡」(2013–14)、「鏡と穴―写真と彫刻の界面」(2017)、「描く、そして現れる——画家が彫刻を作るとき」(2019)ほか多数。
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パスカル・ゴブロ Pascal GOBLOT
パフォーマー、映像作家、映画監督
2020年に「Richard Hamilton in the reflection of Marcel Duchamp(マルセル・デュシャンを通して見たリチャード・ハミルトン)」(SCAMスター賞)を発表。2006年以降、マルセル・デュシャンの《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(大ガラス)》に着目し、《The Legend of the Large Glass(大ガラス伝説)》という名の一連の作品を発表している。その一環として2014年に《大ガラス》のコピーを10年の期限付きで制作し、2024年にそれを破壊するパフォーマンス《To Be Broken》を行った。
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折茂克哉 ORIMO Katsuya
東京大学大学院総合文化研究科 駒場博物館助教
1993年、明治大学文学部史学地理学科考古学専攻卒業。1997~99年、ロシア科学アカデミーサンクトペテルブルグ物質文化史研究所研究生。2002年、國學院大學大学院文学研究科日本史学専攻考古学コース博士課程後期修了(博士(歴史学))。2002年6月、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻学術研究支援員、同年10月國學院大學21世紀 COEプログラム研究員。2003年、東京大学教養学部美術博物館教務補佐員を経て、2004年より現職。専門は博物館学、先史考古学。
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有福一昭 ARIFUKU Kazuaki
有明教育芸術短期大学教授
1977年、多摩美術大学に入学し、1979~80年にかけ、マルセル・デュシャン《大ガラス東京ヴァージョン》制作に関わる。1982年、多摩美術大学大学院美術研究科油画専攻修了。1985年から2015年まで国立総合児童センター・こどもの城スタッフとして造形教育、ワークショップ企画に携わる。2016年より現職。「マルセル・デュシャン」展(1981、西武美術館/高輪美術館)、「マルセル・デュシャンと20世紀美術」(2004–05、横浜美術館)、「マルセル・デュシャンと日本美術」(2018、東京国立博物館)に際し展示協力を行う。
関連展示
「多摩美術大学アートアーカイヴセンター所蔵資料展6 《大ガラス東京ヴァージョン》 ガラス・スタディ アーカイヴ展 」チラシ(デザイン:加藤勝也)
多摩美術大学アートアーカイヴセンター(AAC)について
多摩美術大学(東京都世田谷区、八王子市、学長:内藤廣)の附属施設。AACは現在、19の資料体を有し、アーカイヴの構築、公開、活用、研究を行っています。活動の成果は、シンポジウムや年報/紀要『軌跡』にて発信しています。また、AACの資料を活用した展覧会をアートアーカイヴセンターギャラリー(八王子キャンパス)にて定期的に開催しています。
公式サイト:https://aac.tamabi.ac.jp/
X:@tamabi_aac/Instagram: @tamabi_aac