ワールドカフェ
ワールドカフェとは
ワールド・カフェは、カフェのような設えのリラックスした雰囲気の中で、話し合うメンバーを変えながら、4〜5人の小グループで話し合いを続けることによって、お互いの想いを共有したり、知識や知覚を触発したりしながら、集合知を生み出す話し合いの手法です。結論を出すことを目的としていない「決めない会議」でもあり、1995年、米国のアニータ・ブラウンとデイビッド・アイザックスによって編み出され、研修や会議などで拡がってきたといわれています。
一昨年度から指導者研修会にも導入し、非常に好評を博しているため、今年度も開催することにしました。
- 日程:
- 7月31日(火)13:00~15:00
- 会場:
- 東京国立近代美術館 1階
- 司会:
- 藤吉祐子
- 目的:
- 参加者同士の話し合いを通して、鑑賞教育の目的や課題を再確認するとともに情報交換や将来の連携のきっかけづくりの場を提供する。
- 方法:
- 参加者(委員、ファシリテーター、サブファシリテーターを含む)は、地域(北海道~宮崎)ごとに4人ずつ、30卓のテーブルに着席。テーブルには、模造紙が敷かれ、マーカー、飲み物、菓子、「カフェのマナー」カードが用意されている。鑑賞教育にまつわるテーマについて、メンバーを変えながら話し合いを続け、各々の考えや思い、意見を共有・交換する。
- テーマ:
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第1ラウンド「あなたにとって美術館はどんなところですか?」
第2ラウンド(メンバーを変えて第1ラウンドと同じテーマ)
第3ラウンド「(メンバーを変えて)子どもにとって作品を鑑賞することの意味とは何でしょう?」
第4ラウンド(再び最初のメンバーとともに、それまでに聞いた話や、各自の感想、アイディアなどを話し合う)
活動の詳細
- 第1ラウンド
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「あなたにとって美術館はどんなところですか?」というテーマについて、20分間オープンに話し合います。
模造紙には会話をしながら、キーワードなどを自由に書いたり、イラストを描いたりします。発表用ではなく、その後のラウンドで新しくテーブルに移動して来たメンバーに、各テーブルでどんな話し合いがなされたかを説明するためや、メンバーのアイディアをつなぎあわせていくために使用します。 - 第2ラウンド
- グループごとに1名のテーブル・ホストが残り、他のメンバーは、旅人として別の場所に自由に移動します。
テーブル・ホストは、旅人に自分のグループでの対話内容について簡単に説明します。旅人も、自分のグループで出たアイディアを紹介し、第1ラウンドと同じテーマについてさらに20分間話し合いを続けます。 - 第3ラウンド
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テーブル・ホストは残り(テーブル・ホストは最後まで最初と同じ場所にいます)、旅人は再び別の場所に移動します。
2番目のテーマ「子どもにとって作品を鑑賞することの意味とは何でしょう?」について20分間自由に話し合います。 - 第4ラウンド
- 最初のグループに旅人は戻ります。テーブル・ホストは、それまでにその場所で出た話しを紹介し、旅人は旅先で得たアイディアなどを紹介しながら、気付きや発見を統合し、つながりを探求します。
- 全体セッション
- 数名の参加者から、ワールド・カフェで得た気付きや思いなどを紹介していただきます。 最後に、西村徳行委員(筑波大学附属小学校教諭)から実際に参加された印象など、コメントをいただきます。
- 沈黙の時間
- ワールド・カフェの感想、印象に残った言葉や自分自身にとってキーワードとなって来た言葉などを、付箋紙に自由に書いて貼り出します。
講評
西村 德行
(筑波大学附属小学校 教諭)
この指導者研修は、全国の方々から参加者がいらっしゃる研修です。どんな場なのかということを考えますと、第一に、学校教員の方、指導主事の方、学芸員の方、お一人お一人がお持ちの知恵が集まる場。そして、第二に、その知恵が共有されることで、さらに新たな知恵が生まれる場。ワールドカフェは、その象徴的な場であるともいえるのです。こうして円になって話すことで、いろいろな方の知恵を知り、それをもって新しい視点を得たり、感銘を受けたり、同士がいると感じて心強くなったりしたことでしょう。
「鑑賞とは何か」。こうしたことを考え、考えを共有することによって、すでにご自身でお持ちの知恵は大きくなったことと思います。どうか、今日ここで得た知恵を持ち帰って、ぜひ今後の活動に生かしてください。
また、美術館にはいろいろな人がきます。子どもが静かな展示空間にいるとうるさいとおっしゃる方もいるでしょう。けれども、その子ども達の発言を聞いて、微笑ましい気持ちになったり、そこから大人にとっての新たな鑑賞の扉を開いたりすることもあります。むしろ、子ども達の会話を聞くことが、楽しみにもなるかと思うのです。
学校の方は、子どもを貸し出すくらいの気持ちで、美術館にどんどん子どもをつれてきてください。美術館の方は、そういう場を積極的に提供してあげてください。そうすれば、きっと鑑賞が充実した美術館になると思うのです。
受講者アンケート(ワールドカフェ)
受講者感想(抜粋)
小学校教諭
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- 全国の仲間が多くいて、同じように悩んだり考えたりしていることが共有でき、とても有意義でした。
- 話をできなかった人と話をできたことが有意義だった。
- 立場が違う方々との交流はおもしろくもあり、難しくもあった。このようなスタイルは学校でも取り入れられそうだと感じた。新しい考えを知ることもでき、他の人に話すことで自分の考えを見直すよい機会となった。
- 紙上のキーワードやホストの存在で話がしやすいうえに、メンバーが変わるので話が停滞しなかった。とてもいい経験になった。
- 自分が住んでいる地域ではない方の考え方を知ることができ、自分の価値観や考えも広がり、とても楽しくて充実したものとなった。
- ざっくばらんにいろいろな人の話が聞けてとてもよかった。また、いろいろな考えに触れることが心地よかった。
- 席を替えて、様々な人の意見を聞けたことがよかった。立場も故郷も違い多様な考えがあった。
- さまざまな立場の方と親密な意見交換ができた。また、自分がしていることに自信がもてた。
- 短時間で意見交換をし、まとめて話し合うのは、こんなに内容が豊かになるのかと驚いた。最後の西村先生のまとめの発表が聞けたこともよかった。
中学校教諭
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- 各都道府県によって、取り組み等の違いが分かってとても面白かった。最終的には、美術館の実態も知ることができ、自分が作品を通して子どもたちにつなげていきたい事がわかったので良かった。
- 気軽なカフェの空気がとてもしゃべりやすかった。作品保護と開かれた美術館について話し合い、美術館側の想いも知ることができた。
- いろいろな考えを、ざっくばらんに聞くことができた。また、ワールドカフェの手法は、いろいろなところで使えそうだと感じた。
- どんどん話が展開していくのがおもしろかったし、いろんな立場から話が聞けるのもよかった。ただ、ホストとして最後に話をまとめるのが大変でした。また、他のグループの模造紙も見たかった。
- 前向きに多くの方とお話ができて自分自身も整理でき、なおかつそこに新しい気づきをプラスすることができて、純粋に楽しかった。特に学芸員とやりとりできる機会は貴重だなと思った。
- 美術&鑑賞という視点で共通しているため、職種が違っても話を共有することができ、視野が広がるのがよかった。
- 自分の地域の人と情報交換できたのが大きかった。
- 他県の実情や考えに触れて、視野が広がったように思う。
指導主事
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- 個人的には難しかった。じっくり考えることができなかったので、話し合いのあとに1分間まとめる時間があるともっと深く理解できたと思う。堺市でもこのような研修をしたいと思った。
- 20分×4ラウンド、頭をフル回転させた。皆様と意見や考えを交わし、自分の考え方も変わる楽しさを実感した。
- 元に戻るアットホーム感を今回ほど感じたことはなかった。最初と最後に同じ班、というのは大事なおさえどころだった。話がはずみ、本音が聞けた。
学芸員
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- どんどん異なる方と話すことで新しい発見の連鎖があり、興味深い体験だった。最後に元に戻ることで集約もできて良かった。
- たくさんの対話を通して、見方やつながりが広がった。「美術館と学校をつなぐ本質」や「鑑賞教育と子どもの関係」について深く議論できて楽しかった。
- 学校と美術館が連携できれば、出来ることも増えるはずだと思った。
- 問題意識をもった方々と熱いトークができてよかった。
- ワールドカフェに参加することで、考え方が広がり、かつ問題を再確認することができた。連携と継続が大切であり、美術館は地域の拠点、メディエーターとしての役割を果たせるように、(外へ出ようとする)地道な活動が必要と改めて実感した。