ワールドカフェ
ワールドカフェとは
ワールドカフェは、カフェのような設えのリラックスした雰囲気の中で、話し合うメンバーを変えながら、4~5人の小グループで話し合いを続けることによって、お互いの想いを共有したり、知識や知覚を触発したりしながら、集合知を生み出す話し合いの手法です。結論を出すことを目的としていない「決めない会議」でもあり、1995年、米国のアニータ・ブラウンとデイビッド・アイザックスによって編み出され、研修や会議などで拡がってきたといわれています。
一昨年度から指導者研修会にも導入し、非常に好評を博しているため、今年度も開催することにしました。
- 日程:
- 7月30日(火)13:00~15:00
- 会場:
- 国立新美術館 1階
- 司会:
- 寺島洋子
- 目的:
- 参加者同士の話し合いを通して、鑑賞教育の目的や課題を再確認するとともに情報交換や将来の連携のきっかけづくりの場を提供する。
- 方法:
- 参加者(委員、ファシリテーター、サブファシリテーターを含む)は、地域(北海道~宮崎)ごとに4~5人ずつ、28卓のテーブルに着席。テーブルには、模造紙が敷かれ、マーカー、飲み物、菓子、「カフェのマナー」カードが用意されている。鑑賞教育にまつわるテーマについて、メンバーを変えながら話し合いを続け、各々の考えや思い、意見を共有・交換する。
- テーマ:
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第1ラウンド「あなたの心に残っている鑑賞体験は何ですか?」
第2ラウンド(メンバーを変えて第1ラウンドと同じテーマ)
第3ラウンド「(メンバーを変えて)子どもにとって作品を鑑賞することの意味とは何でしょう?」
第4ラウンド(再び最初のメンバーとともに、それまでに聞いた話や、各自の感想、アイデアなどを話し合う)
活動の詳細
- 第1ラウンド
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「あなたの心に残っている鑑賞体験は何ですか?」というテーマについて、20分間オープンに話し合います。
模造紙には会話をしながら、キーワードなどを自由に書いたり、イラストを描いたりします。発表用ではなく、その後のラウンドで新しくテーブルに移動して来たメンバーに、各テーブルでどんな話し合いがなされたかを説明するためや、メンバーのアイデアをつなぎあわせていくために使用します。 - 第2ラウンド
- グループごとに1名のテーブル・ホストが残り、他のメンバーは、旅人として別の場所に自由に移動します。
テーブル・ホストは、旅人に自分のグループでの対話内容について簡単に説明します。旅人も、自分のグループで出たアイデアを紹介し、第1ラウンドと同じテーマについてさらに20分間話し合いを続けます。 - 第3ラウンド
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テーブル・ホストは残り(テーブル・ホストは最後まで最初と同じ場所にいます)、旅人は再び別の場所に移動します。
2番目のテーマ「子どもにとって作品を鑑賞することの意味とは何でしょう?」について20分間自由に話し合います。 - 第4ラウンド
- 最初のグループに旅人は戻ります。テーブル・ホストは、それまでにその場所で出た話しを紹介し、旅人は旅先で得たアイデアなどを紹介しながら、気付きや発見を統合し、つながりを探求します。 全体セッション数名の参加者から、ワールドカフェで得た気付きや思いなどを紹介していただきます。 最後に、長田謙一委員(名古屋芸術大学教授)から実際に参加された印象など、コメントをいただきます。
- 全体セッション
- 数名の参加者から、ワールド・カフェで得た気付きや思いなどを紹介していただきます。 最後に、西村徳行委員(筑波大学附属小学校教諭)から実際に参加された印象など、コメントをいただきます。
- 沈黙の時間
- ワールドカフェの感想、印象に残った言葉や自分自身にとってキーワードとなって来た言葉などを、付箋紙に自由に書いて貼り出します。
講評
長田 謙一
(名古屋芸術大学美術学部教授)
以前、研修会でワールドカフェをはじめて経験し、小さなディスカッションを重ねながら多くの人と意見を交わすことができることに驚きました。私は今年、名古屋芸術大学に着任したのですが、大学の授業でも早速、ワールドカフェを採り入れています。本日、参加させていただき、全国から皆さんが集まっている研修会にふさわしい討論の場、コミュニケーションの場になっていると感じました。
美術館と学校が提携して美術鑑賞の方法を論じ合いながら、それぞれの条件の違いも浮き彫りになりました。たとえば「美術館に行くには遠くて不便」とか、「近くにあっても今の学校の忙しさの中で美術館に行く時間を作るのは至難の業」であるとか、そういう話をしながら、その中で美術館と提携して学校の子どもたちが美術鑑賞活動することの意義をいろいろ語れたと思います。
現代美術を目の前にしたときに、現代美術がある意味、子どもたちに一番近い問題と真正面から向かいあっている場合も少なくありません。そういう作品と出会うことの大切さも語られましたし、非常に大きなテーマをいろんな角度から語れたと思います。今日、いろいろ出た問題が次のワールドカフェで深められるようなれば素晴らしいと思いますし、皆さんがそれぞれの都道府県に戻って回りの先生方や美術館とリンクを張って、そこで課題や問題を分かち合って何か新しいことが次々と連鎖してはじまると素晴らしいと思います。どうもありがとうございました。
受講者アンケート(ワールドカフェ)
受講者感想(抜粋)
小学校教諭
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- いろんな場で使える対話形式、ぜひやってみたいです。ふるさとに戻ってきた気分でした。ワールド(全国の方との)語らい楽しかったです。
- 初めての体験で新しい価値観にも出会えた。
- はじめての体験でした。初めての方ばかりでしたが、たくさんの考えや意見がたくさん聞けてとてもよかったです。このような意見交換会を帰ったらみんなに知らせて取り入れたいと思う。
- ワールドカフェという方法がよくわかりました。様々な活動で使えると思いました。
- 東京にいると今の鑑賞活動のあり方や子どもの見方が当たり前であると思っていたが、地域によって(職種によって)温度差があることが分かった。
- 3つの題での話を十分することができた時間で、改めて自分の活動を振り返りました。
- 特に学芸員の方との交流ができて良かった。
- 他県の方と多く話すことができた。中学校の先生からよい指導法を教えてもらったので活用していきたい。
- 人見知りで不安もありましたが、たくさんの方と意見交流ができてとてもよかったです。鑑賞教育についてとことん考えることができたことも大変有意義でした。このような機会を与えていただいたことをうれしく思います。今後に生かしていきたいと思います。
- ワールドカフェ初体験でした。このような手法はいいと感じました。旅をして広げたものを持ち帰り、最後に深めることができました。グルーピングも適切でした。
中学校教諭
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- リラックスした雰囲気の中で、いろいろな立場のいろいろな意見を聞くことができ、学びも大きかったし、楽しかったです。
- 初対面の方々でしたが、美術を仲立ちとするとあれだけ会話がすすむのかと感動しました。はじめての経験でしたが大変すばらしい時間でした。
- 新しい方法を体験できました。落書きのように記録できる事がすばらしく、その中からいくつも核心にせまるようなことばが生まれました。
- 自分自身、考えていたことを整理できた気がします。同じ思いを持たれているかたも多かったので良かったです。
- この企画が一番楽しかったです。
- たくさんの県の先生や学芸員の方の考え方を聞けて大変参考になった。
- 様々な地域の悩みや情報を知ることができて今後に役立つ。次のテーブルに伝えるという手法が自分たちの前テーブルで話し合ったことを振り返るにもなり大変よかった。
- 皆さんが日頃同じようなことで悩み挑戦されていることが分かりほっとしました。
- 時間は十分だった。また同じ地域、近隣の方々と話をすることができたのでグループ編成がよいと思えた。
- 色んな意見交換ができたのでよかったです。ワールドカフェは何度もやってきましたが、こんなに大規模なものは初めてでした。
指導主事
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- 自分自身の意識の向上と、鑑賞教育への取り組み等についての再認識ができた。中学校の授業の中にも取り入れていきたい。
- こういう手法もあるのかと新鮮な思いで参加した。いろいろな気づきがあった。
- フリートーク型のスタイルでリラックスして行うことができた。テーマに対して深く洞察するには、簡潔に伝える技術が必要なことが分かった。
- 話をすすめるうちに、自分自身の教えが次第にまとまってきました。自分一人ではなく次々と他の方の意見を聞きながら自分の思いにつながるものがその考えを作り上げていったように感じます。
学芸員
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- 学校の先生、他県、近隣の地域のお話を聞けて悩み相談ができ充実した時間であった。
- 初めて出会う方々との会話がとても楽しく、また話すことで自分の中の繁り(鑑賞について)が明確となりました。
- 色々な分野の方のざっくりとした、飾らない「美術」についての言葉を聞けて、今後自分が色々な分野の人と協力していく際の下地作りの一つになったと思う。今度につなげたい。
- 11人の方と意見交換し交流できた。これだけの人と短時間でも鑑賞の話ができる機会はなかなかないのでいろいろ考えるきっかけとなった。
- テーマを決め色々な方と共有する体験は本当に快いものでした。自分の考え感じたことを受けとめてもらえる体験を生徒にもさせてやりたいです。