編集後記

9年目の今年、この研修の参加者がついに1000人を超えました! 展覧会や講演の感覚では、1000人はどちらかというと小さな数字かもしれません。 しかし初年度から、10人単位のグループワークなど濃密な研修内容を提供してきたことを考えると、これはとても大きな数字です。 この数年、各地を訪ねるごとに、必ずといっていいほど、「○年の指導者研修参加者です」と言ってくださる先生や学芸員にお会いします。 1000人が同じ鑑賞体験をするって、かなりすごいこと。継続の力を感じます。 また今年は「発達段階を意識した鑑賞」を裏テーマにしたいと、講師やファシリテータにあらかじめ伝えましたが、みなさん受け止めてくださいましたか。 同じ作品を、小学生と中学生が見るというギャラリートーク分析の設定も、ねらいはそこにあります。 子どもは年齢によって少しずつ見方が変わります。小学校の先生が中学生の鑑賞を見たり、あるいはその逆をしたりできるのも、この研修の良さだと自負しています。(一條)

今年は各グループの活動を、傍からじっくり見る機会に恵まれ、とても勉強になりました。
いみじくも長田先生がグループ活動全体を総括されたように、「如何にして子どもが自分の眼で見て、心で感じることを大切にするか」ということから、 「それと作品をより深く理解することとの関係性について考える」ことへと、この研修が変化してきていることを実感しています。参加者の同士の積極的な意見交換や活動によって、滞ることのない、生きた研修であり続けることを期待しています。(寺島)

指導者研修も今回で9回目。国立美術館の教育普及担当にとっては、夏の風物詩とも言える恒例行事となりましたが、研修全体を通じての印象や、参加者の方々から受ける熱は毎年違って感じられます。 それは、参加者の意識の変化はもちろん、私自身の研修への関わり方の違いによるものでもあると思います。 今年は初めてワールドカフェの司会という立場で、参加した方々の熱に触れさせていただきました。 26のテーブルで展開される4ラウンドの話し合いの様子を拝見しましたが、ラウンドの切り替え時に司会席へと向けられる大勢の目が、回を重ねるごとにキラキラと、 期待に満ちた輝きを帯びていくのが印象的でした。 ワールドカフェは一つの結論や解を導き出すことを目的にはしていませんが、多くの仲間と問題を共有して、熱を感じ合うことで、 鑑賞教育の可能性を探り続ける意欲とエネルギーが育まれる場となったのなら幸いです。(吉澤)

今年度も「ギャラリートーク・ビデオ分析」のビデオ撮影と編集を担当しました。
話し手である奥村先生につけてもらったワイヤレスマイクで先生の声だけではなく、まわりの生徒の声もある程度、収録できるのですが、やはり聞き取りにくい部分が多々ありました。 そこで今年は、ギャラリートーク分析のポイントとなる生徒の発言を字幕として入れることになりました。 特に声が小さかったり、まわりの音にかき消されたりというところの字幕は入れるタイミングが難しいです。 ビデオの該当箇所を何回も何回も(時には10回以上…)見返して、字幕を入れていきました。 ビデオを繰り返し見ていくと、「あ、この子、こんなことも言ってたんだ!」ということに気づくこともあります。 こんな「予習」をして、指導者研修の当日、ギャラリートーク分析での本間先生、三澤先生のお話をうかがいました。ちょっとだけ、役得です。(室屋)

この指導者研修のウェブ報告書の編集を担当して3年になります。 例年、アンケートの回答結果を選択していますが、研修に参加された皆様から、「この研修の内容を現場で生かしたい。」という声を数多く見てきました。 こうした皆様の思いを受けて、この研修をどのように現場で生かしたいと考えているのかを知るべく、 今年はアンケートの質問に「グループワークの経験を、現場でどのように生かしたいと思いますか」という項目を加えました。 この質問に対して、「グループワークの内容を早速秋の授業で取り入れたい」、「子供たちに話しかけるタイミングを参考にギャラリートークをやってみたい」、 「地元の図工・美術部会にこの研修の内容を伝えたい」、「県の学芸員同士で鑑賞教育の勉強会を開きたい」といった具体的な声を聞くことで、この研修が広がっていることがとても感じられました。 日々の業務に追われながら新しいことにチャレンジするのは大変なことですが、この研修で得たことを皆様が思うように現場で生かしてくださればと心から願うばかりです。(井上)

研修スタッフ・関係者リスト

講演・講評
東良 雅人 文部科学省初等中等教育局 教育課程課 教科調査官
(併)国立教育政策研究所 教育課程研究センター研究開発部 教育課程調査官
上野 行一 帝京科学大学こども学科 教授
長田 謙一 名古屋芸術大学美術学部・同大学院 教授
ギャラリートーク分析
三澤 一実 武蔵野美術大学教職課程研究室 教授
奥村 高明 聖徳大学児童学部児童学科 教授
本間 美里 東京都港区立御成門小学校 教諭
ファシリテーター
三澤 一実 武蔵野美術大学教職課程研究室 教授
西村 德行 東京学芸大学 芸術・スポーツ科学系 美術・書道講座 准教授
弘中 智子 板橋区立美術館 学芸員
濱脇 みどり 西東京市立田無第一中学校 教諭
小野 範子 茅ヶ崎市立緑が浜小学校 教頭
松永 かおり 町田市立金井小学校 副校長
山田 一文
埼玉県教育局南部教育事務所 指導主事
南  育子 墨田区立業平小学校 教諭
田中  晃 川越市立大東西中学校 教頭
亀井  愛 三井記念美術館 教育普及員
朴  鈴子 京都国立近代美術館 学芸課 研究補佐員
サブファシリテーター
平谷 美華子
東京富士美術館 学芸部 学芸課 学芸員
本間 美里 港区立御成門小学校 教諭
熊谷 香寿美 東京都美術館 学芸員
江藤   祐子 三菱一号館美術館 学芸員
藤田   千織 東京国立博物館 学芸員
オベル加藤貴子 世田谷区立上北沢小学校 教諭
関  聖美 国立国際美術館 学芸課 研究補佐員
今井 陽子 東京国立近代美術館 工芸課 主任研究員
横山 佐紀 国立西洋美術館 学芸課 主任研究員

運営スタッフ
一條 彰子 東京国立近代美術館 企画課教育普及室長 主任研究員
小谷松 誠司 独立行政法人国立美術館 本部事務局 室長(普及・研修担当)
三村 研太朗 独立行政法人国立美術館 本部事務局 係員(普及・研修担当)
岡村 愛 独立行政法人国立美術館 本部事務局 係員(普及・研修担当)
藤田 汐路 独立行政法人国立美術館 本部事務局 事務補佐員(普及・研修担当)
出村 朋 独立行政法人国立美術館 本部事務局 事務補佐員(普及・研修担当)
細谷 美宇 東京国立近代美術館 企画課 研究補佐員
今井 陽子 東京国立近代美術館 工芸課 主任研究員
鈴木 俊祐 国立新美術館 総務課 係長
羽田野 愛 国立新美術館 総務課 係員
吉澤 菜摘 国立新美術館 学芸課 アソシエイトフェロー
木内 祐子 国立新美術館 学芸課 研究補佐員
寺島 洋子 国立西洋美術館 学芸課 主任研究員
横山 佐紀 国立西洋美術館 学芸課 主任研究員
杉浦 央子 国立西洋美術館 学芸課 研究補佐員
藤吉 祐子 国立国際美術館 学芸課 主任研究員
関 聖美 国立国際美術館 学芸課 研究補佐員
朴 鈴子 京都国立近代美術館 学芸課 研究補佐員
平澤   咲 東京国立近代美術館 企画課 インターン
櫟原千寿帆 東京国立近代美術館 企画課 インターン
杉原未希子 東京国立近代美術館 工芸課 インターン
中里  千尋 東京国立近代美術館 工芸課 インターン
信田  光穂 東京国立近代美術館 工芸課 インターン
佐藤  詩織 国立新美術館 学芸課 インターン
澤田  将哉 国立新美術館 学芸課 インターン 
川上  恵理 国立国際美術館 学芸課 インターン
芝     涼香 国立国際美術館 学芸課 インターン
技術スタッフ
室屋 泰三
国立新美術館 学芸課 主任研究員
記録編集
井上絵美子 国立新美術館 学芸課 研究補佐員

国立美術館の教育普及事業等に関する委員会 委員
奥村 高明 聖徳大学 児童学部児童学科 教授 
小野 範子 茅ヶ崎市立緑が浜小学校 教頭
長田 謙一 名古屋芸術大学美術学部・同大学院 教授
西村 德行 東京学芸大学 芸術・スポーツ科学系 美術・書道講座 准教授
濱脇みどり 西東京市立田無第一中学校 教諭
東良 雅人 文部科学省初等中等教育局 教育課程課 教科調査官
(併)国立教育政策研究所 教育課程研究センター研究開発部 教育課程調査官
松永かおり 町田市立金井小学校 副校長
三澤 一実 武蔵野美術大学教職課程研究室 教授
南  育子 墨田区立業平小学校 教諭
山田 一文 埼玉県教育局南部教育事務所 指導主事

編集
月岡 大輔 月岡編集企画室
撮影
玉田 安生 スタジオダイス
藤川 素子 スタジオダイス
イラスト
宇田川一美  
ウェブ
渡部 護弥 イークリエイト ディレクター
栃澤 亨 イークリエイト