ワールドカフェ

ワールドカフェとは

ワールドカフェは、人々がオープンに会話しながらネットワークを築くことができる「カフェ」のようなリラックスした雰囲気の中で、お互いの想いを共有したり、知識や知覚を触発したりしながら、集合知を生み出す話し合いの手法です。メンバーの組み合わせを変えながら、4~5人単位の小グループで話し合いを続けることによって、あたかも参加者全員で話し合っているような効果を得ることができます。結論を出すことを目的としていない、いわば「決めない会議」でもあるワールドカフェは、1995年にアメリカで考案され、研修や会議などで用いられて広まってきました。 指導者研修では平成22年度からこのプログラムを導入し、非常に好評を博しているため、今年度も開催することにしました。

日程:
8月5日(火)13:00~14:50
会場:
国立新美術館 1階ロビー
司会:
吉澤菜摘(国立新美術館 学芸課 アソシエイト・フェロー)
目的:
参加者同士の話し合いを通して、鑑賞教育の目的や課題を再確認するとともに情報交換や将来の連携のきっかけづくりの場を提供する。
方法:
参加者(委員、ファシリテーター、サブファシリテーターを含む)は、地域(北海道~沖縄)ごとに4~5人ずつ、26卓のテーブルに着席。テーブルには、模造紙が敷かれ、マーカー、飲み物、菓子、「カフェのマナー」カードが用意されている。鑑賞教育にまつわるテーマについて、メンバーを変えながら4ラウンドにわたって話し合いを続け、各々の考えや思い、意見を共有・交換する。
テーマ:
第1ラウンド:「あなたの心に残っている鑑賞体験は?」
第2ラウンド:(メンバーを変えて)第1ラウンドと同じテーマ
第3ラウンド:(メンバーを変えて)「子どもの鑑賞体験において、大切なことは何でしょう?」
第4ラウンド:(再び最初のメンバーで)それまでのラウンドで聞いた話や、各自の感想、アイディアなどを共有



  • ワールドカフェのスタートです

  • 4,5人グループでの20分間の話し合い

  • リラックスした雰囲気で語り合います

  • 発見やアイディアは模造紙にメモ

  • 旅人たちは別のテーブルに移動

  • 新しいグループで話し合いを続けます

  • 模造紙を見ながら意見を共有

  • テーマを変えて3ラウンド目の話し合い

  • 旅人は最初のグループに戻ります

  • 各自の気づきや発見を統合します

  • 長田先生からのコメント

  • 最後は「沈黙の時間」

  • 付箋紙を貼り出します

  • 感想や発見が書かれた付箋紙

活動の詳細

第1ラウンド
近隣地域のメンバーで構成されたテーブルで、「あなたの心に残っている鑑賞体験は?」というテーマについて、20分間オープンに話し合います。
模造紙には会話をしながら、キーワードなどを自由に書いたり、イラストを描いたりします。発表用ではなく、その後のラウンドで新しくテーブルに移動してきたメンバーに、各テーブルでどんな話し合いがなされたかを説明するためや、メンバーのアイディアをつなぎあわせていくために使用します。
第2ラウンド
グループごとに1名のテーブル・ホストが残り、他のメンバーは、旅人として別のテーブルに自由に移動します。
テーブル・ホストは、移動してきた旅人に第1ラウンドでの対話内容について簡単に説明します。旅人も、自分のグループで出たアイディアを紹介し、「あなたの心に残っている鑑賞体験は?」をテーマにさらに20分間話し合いを続けます。
第3ラウンド
テーブル・ホストは残り(テーブル・ホストは最後まで同じテーブルにいます)、旅人は再び別のテーブルへと移動します。
新たなテーマ「子どもの鑑賞体験において、大切なことは何でしょう?」について、20分間自由に話し合います。
第4ラウンド
最初のテーブルに旅人は戻ります。テーブル・ホストは、そのテーブルで話し合われたことを簡潔に説明し、旅人は旅先で得たアイディアなどを紹介しながら、気づきや発見を統合し、つながりを探求します。
全体セッション
ワールドカフェの話し合いの中での気づきやアイディアについて、全員で振り返ります。
最後に、長田謙一委員(名古屋芸術大学教授)からコメントをいただきます。
沈黙の時間
ワールドカフェの感想や印象に残った言葉、研修後に実行したいと思っていることなどを、付箋紙に自由に書いて貼り出します。


講評

長田 謙一
(名古屋芸術大学美術学部同大学院 教授)


私は委員としてより一参加者として、ワールドカフェが美術館研修に採り入れられてから、いろんな発見や経験ができるコミュニケーションの場と思っている一人です。今年の参加者の皆さんや、過去に参加された全国の教員や学芸員の皆さんが、この9年間で積み上げてきた蓄積が、今年のグループワークに非常にはっきりと、何かが変わり始めていることを私が感じ、それを昨日のグループワークで語らせていただきました。 今日のワールドカフェでは、私もミツバチの一人としてテーブルを周りながら、同じようなことを考えていました。いちばん最初のテーブルで一人一人が涙が出るほどの鑑賞経験を語り、そういう話を踏まえて、子どもが先入観なしに、「作品」と出会うという経験が、どうすれば可能になるのかを話し合いました。昨日の館長のお話にも東良先生の講演でも、「豊かな子ども」が美術体験をしていくことを一つの軸としてお話をされていました。この豊かな子どもが作品と出会って、その出会いがさらに子どもの豊かさを保証し、支え、激励していくものになっていく。そういう鑑賞のプログラムの実践ができるといいと思います。子どもたちに参加してもらう鑑賞教育が先入観を植え込むものではなく、一人一人の生活の豊かさに裏打ちされた、その子どもなりの作品との出会いを育んでいけるものができたら素晴らしいと、テーブルを周りながら実感しました。子どもたちの豊かな経験を現代社会の中でどう支えていくのかという課題は、スリリングで可能性に満ちていると思います。


受講者アンケート(ワールドカフェ)

受講者感想(抜粋)

小学校教諭

  • 色々な立場の方と、無理なく意見を交換できてよかった。鑑賞体験の原体験に立ち帰ることで、子どもの鑑賞教育についての気づきがあった。
  • 様々な地方の様々な職種の方と話し合う楽しさを感じた。(話し合うことの楽しさ、様々な考えにふれる喜び、共有して生まれる連帯感など)
  • 多くの人との対談の機を与えられるので、刺激的だった。このような形式のものへの参加は初めてだったが、校内研修等でも取り入れてみたい。
  • はじめに近くの地域の方との設定がよかった。自分の経験に促した話も具体的にしたことで、イメージを共有しやすかった。他のグループの意見も聞いてみたかった。
  • ワールドカフェというやり方自体がとても新鮮だった。様々な考えに触れる中で、今日的な鑑賞教育の在り方ついて考えることができた。
  • まずは近隣の地域の方との交流を深め、情報交換ができてよかった。その後様々な地域の情報、個人の考えに触れることができ、視野が広がった。
  • (自分は小学校の教師なので)中学校の先生方とも交流が持てて良かった。ワールドカフェという方法自体が新鮮で有意義な話し合いが出来た。
  • 異なる地域の方々と話して、今まではハッキリ意識していなかった美術館での体験ということや鑑賞ということについて改めて考え、言葉を深めることの大切さにも気づけた。
  • いろんな人の話を聞くことで、作品との出会いについて深く考えさせられました。

中学校教諭

  • 他の方々の原体験の話が私の記憶と思いをよみがえらせてくれた。聞くこと、そして話すことで自分の中の考えがまとまっていった。これは、一人では出来なかったこと。まさにグループ学習を身をもって体験できた。
  • 初めての体験だったので新鮮だった。授業実践でも活かせそうだと思った。
  • 他府県の方々のお話が聞けて自分がしらなかった情報が聞けてよかった。もっと回数を増やして欲しい。
  • さまざまな人と関わることで、いろいろな意見や考え方、思いなどが共有できてよかった。答えを出さないでよいところもよかった。
  • 初めてこの形式のワークショップに参加した。テーマを絞って簡潔に意見を述べ合う中で自分の課題や思いが整理されていくのがわかり、とても有意義な活動でした。リラックスした雰囲気の中で活動できたのがよかった。
  • 旅に出て戻ってくる間に、あちこちで同じキーワードを収集できた。ネットワークのおもしろさを感じた。様々な人の原体験に触れる事は非常に興味深かった。
  • 今まで知られなかった情報交換の方法で、リラックスして意見を交換、そして共有できた事が良かった。授業や、生徒活動に活かされると思った。
  • 様々な視点の話を聞けたのが楽しかったし、参考になった。みなさんいろいろなやみながら取り組まれている事を知って、頑張らないとという気持ちになった。
  • 「答えが無い」出さなくて良いというところが鑑賞のようでよかった。

指導主事

  • 1テーブルに4人という人数が大変よく、どのテーブルでも充実した話合いをすることができました。
  • 心に残る鑑賞体験の交流、大変おもしろかったです。
  • 色んな意見を効く話す事ができました。教員研修のなかでもこの手法を取り入れるともっと本音で話ができるのでは無いかと感じました。
  • 自分の話をしたり、相手の意見を聴いたり、自ら働きかけていく活動の中での交流非常によかったです。
  • 先生方向けの研修会に早速取り入れたい。
  • 美術、図工教育に対して関心が高い人たちばかりのディスカッションであるので、さまざまな子どもがいる現状の教育現場にたちかえって話す事も必要と思う。
  • 様々な地域や人々の話、活動について居ながらにして聞くことができ、大変参考になりました。

学芸員

  • 心に残る鑑賞体験という、私たち、子どもたちに鑑賞をさせる立場にある者が、一番忘れてはいけないことを思い出させてくれ、さらに、それをどのように、仕事につなげることができるのか、ということが話せて、充実した時間でした。
  • 4〜5人で話し合うのが、ちょうどよく、メンバーチェンジもあり色んな意見を聞くことができて楽しかった。近隣の方とは、状況を知っていることもあり、より現実的な話しができたので、そこを基点として動いていくのも、よくできたプログラムだなと思う。
  • 自然に出るときもあるが、答えは出さなくてよいというのがよかった。たくさんの人の一人一人のドラマにふれられてよかった。子どもの頃の話や親が何かをしてくれた話は特に良いと思った。そのような話を聞いて、子どもたちに小さい頃からいろいろなものに出会わせたいと思った。
  • 関わる人や土地によって鑑賞の触れ合い方も違っているのだが、それでも思いが同じところにある方々との対話はとても勉強になった。
  • リラックスしながら考えを発言できる環境で、情報交換、意志共有にはすごく良いと思った。
  • 様々な立場で子ども達との鑑賞に取り組まれている方と同じテーマについてトーク出来て、気持ちの面でも共有できたきがする。
  • 多くの参加者と対話し、問題意識の共有ができた。もっと具体的なテーマにするとより良い意識がでてくるのではないかと思う。
  • 1日目の研修や自分の追体験を使って、研修の集大成のようなことを考えることができた。