グループワーク 小学生対象

奥村グループ 言葉だけに頼らない鑑賞活動と学習効果

ファシリテーター:
奥村高明(日本体育大学 児童スポーツ教育学部 教授)
受講者:
10名(小学校教諭6名、学芸員4名)
課題作品:
ヘンリー・ムーア《ナイフ・エッジ》1961/76年
アレクサンダー・コールダー《ロンドン》1962年
オシップ・ザッキン《デメテール》1958年
山崎つる子《Work》1960年
ジャコメッティの作品及び関連資料
グループワークの進め方

「体で鑑賞」: 身体を通して鑑賞することを通して彫刻的な表現について考える
「ラウンド・スケッチ」: 彫刻作品をスケッチしながら描き手がラウンドすることで、多様な視点があることを実感する
「彫刻の空間」: まず作品を取り囲む空間を描き、次に作品をスケッチすることで、彫刻が占有し、形成する空間を理解する
「モールで彫刻」: モールと色紙で彫刻作品から感じたテーマを簡単な立体で表すことを通してバランス、エッセンス、動きなど表現の特徴を捉える
「感覚のポエム」: グループで、作品から感じた感覚的な言葉をもとに詩にまとめる活動を通して省察的に鑑賞し、作品のテーマを創造する。
「ジャコメッティを考える」: ジャコメッティの作品を調査し、小学校にふさわしい鑑賞活動を1つ考案する



  • ラウンド・スケッチ

  • 「感覚のポエム」の発表場面

  • モールで彫刻

グループワークを振り返って

参加者から以下の感想があった。「ポージングすることで人に見えないものが人に見えた」「他者が描いた絵と作品をよく見くらべることで鑑賞という行為が自然に生まれた」「空間から描くとコールダーの表した空間になるが、作品から描くとそうはならないことが分かった」「(何をつくろうと)主題を考えていると集中して鑑賞する。つくっているときにも自分のつくっている作品と対象作品を見比べた。作品との対話、自己との対話が自然に起こった」「発表の場面では、一言ひとこと、一つの言葉、一つの文節が語られるたび、聞いている者の作品の見え方がどんどん変わっていった」 (奥村高明)

柴﨑グループ  「美術館って楽しい!」~鑑賞遊び・小学生のためのプログラム作り~

ファシリテーター:
柴﨑裕(聖学院大学 人文学部 児童学科 特任教授)
受講者:
10名(小学校教諭6名、指導主事2名、学芸員2名)
課題作品:
高松次郎《影》1977年
須田悦弘《チューリップ》2006年
グループワークの進め方
  1. アイス・ブレーク:美術館エントランス(地上階)で銀色の竹林のような建築を味わいながら。
  2. 課題をつかむ:課題作品2点に出会い、その驚きを共有しながらギャラリートーク。作品の様々な気づきをもとに小学生が取り組めそうな「鑑賞遊び」についてフリートーク。
  3. ランチタイムワーク:課題作品2点の班づくり、リーダーの決定。
  4. 授業構想:様々なアイディアをもとに、対象学年を想定し授業を構想する。「鑑賞遊び」とは、子どもたちが作品を見ることによって生まれる自然なアウトプット。言葉で、体で、身振りで、~見て表す~を繰り返し、見方が深まるような「遊び」の構想。


  • アイス・ブレーク

  • 高松作品の影の前で

  • 柱の上のチューリップを見上げて

グループワークを振り返って

課題作品2点は意外な印象で受講生を迎えた。高松次郎《影》の前で「ほー?…」とみんながため息。この影はホンモノ?どの光が当たっているの?…。須田悦弘《チューリップ》は見つからず通り過ぎてから作品を発見、「なんで君はここにいるの…?」。密やかに私たちの心に住み込むこの作品たちは、きっと子どもたちに楽しい時間をプレゼントしてくれるはず…と授業構想が始まった。(柴﨑裕)

遊免グループ 美術作品の鑑賞を通して得られる学びとは

ファシリテーター:
遊免寛子(兵庫県立美術館 学芸員)
受講者:
10名(小学校教諭5名、指導主事2名、教育主事1名、学芸員2名)
課題作品:
ポール・セザンヌ《宴の準備》1890年頃
パブロ・ピカソ《ポスターのある風景》1912年
佐伯祐三《バーの入口》1927年
ジョルジョ・モランディ《静物》1952年
ヴァシリー・カンディンスキー《絵の中の絵》1929年
ジュール・パスキン《バラ色の下着の少女(青いブレスレットの少女)》1924-25年
藤田嗣治(レオナール・フジタ)《横たわる裸婦(夢)》1925年
パブロ・ピカソ《肘かけ椅子に坐る裸婦》1964年
カレル・アペル《浜辺の出会い》1952年
グループワークの進め方
  1. 自己紹介(実践紹介と課題の共有)
  2. 全員でジョアン・ミロ《無垢の笑い》(1969年)を囲み、小学生役とナビゲーター役に分かれ、対話による鑑賞を実践
  3. 3~4人ずつ3班に分かれ、コレクション特集展示「ジャコメッティとⅠ」の1のコーナーで、以下のお題について考察:
    ① 小学生と作品を鑑賞したら、
      どのような発見がありそうか。
      また、どのような学びを得られるか。
    ② 小学校の授業で作品を鑑賞するなら、
      どのような活動の可能性があるか。
  4. グループで意見をまとめて全体に発表。
    改めて班ごとに意見交換


  • 自分たちで作品を選択

  • ディスカッション中

  • 授業案をお互いに発表

グループワークを振り返って

今回は、ひとつの章全体から作品を自由に選択して、鑑賞の授業を考えてもらいました。こちらの想定を超え、複数のグループが、作品の流れを追ったり、遠くから近くから見比べたり、展示室の中で得られる子供たちの学びを考えながら、授業案を組み立てられていました。確かに美術館での作品鑑賞は美術館という空間の鑑賞でもあります。新たな美術館での学びの可能性を感じる研修でもありました。自ら学ぶ姿勢で主体的に取り組んでくださった受講生の皆様に感謝します。(遊免寛子)