グループワーク 中学生対象
青木グループ 作品の意味は自分たちの中にある
- ファシリテーター:
- 青木加苗(和歌山県立近代美術館 学芸員)
- 受講者:
- 9名(中学校教諭7名、学芸員2名)
- 課題作品:
- オシップ・ザッキン《デメテール》1958年
舟越保武《原の城》1971年
ジャコモ・マンズー《枢機卿立像》1951年
佐藤忠良《帽子・立像》1974年
荒川修作《オパーリン博士の祈り》1958–59年
同《ワックスマンの胸》1958–59年
同《抗生物質と子音にはさまれたアインシュタイン》1958–59年
同《作品》1960年
ジャン・デュビュッフェ《愉快な夜》1949年
グループワークの進め方
- エリア内をぐるりと一周し最初に興味を持った作品の前で自己紹介。
- 展示エリア全体の構成を読み解くように、複数の作品を関連させながら見る。その後、舟越保武《原の城》に絞って、皆でじっくりと観察し、読み解いていく。
- 美術館での鑑賞授業の目的と意義について意見交換。
- 「一人語り体験」
昼休憩中の課題として、作品を見て思い出した自分の経験を考えておき、それを一人ずつ発表。半数は作品の前で話し、もう半数はどの作品かを示さずに思い出だけを発表。同じ作品を見ても、全く違う出発点に立っていることを実感する。 - 2グループに分かれて模擬授業と指導案の検討。
Aグループ:ジャン・デュビュッフェ《愉快な夜》を題材に、どちらかといえば受け入れられないと感じる参加者たちが模擬授業を試みた。
Bグループ:荒川修作《作品》を題材に、鑑賞から制作へとつなげる授業を提案した。 - 鑑賞体験を共有することについてディスカッション。
グループワークを振り返って
一般に、美術史上の位置付けや作家の制作意図を知ることが作品理解だと思われがちですが、美術館でしかできない鑑賞は、作品と直接に向き合った時に芽生える内的な変化に目を向けることではないでしょうか。それぞれのバックグランドを持った私たちの鑑賞は全て異なる体験であり、その多様性を紡ぎ合わせることが作品自体の価値を支えることにもなります。今回のグループワークは、まさに参加者のみなさんが、作品と他のメンバーの両方と積み重ねた豊かな「対話」であったと感じました。(青木加苗)
濱脇グループ もやもやから手ごたえ、そして自信へ
- ファシリテーター:
- 濱脇みどり(西東京市立青嵐中学校 主任教諭)
- 受講者:
- 9名(中学校教諭7名、学芸員2名)
- 課題作品:
- 菅井汲《空間力学》1983年
グループワークの進め方
- ミロ「無垢の笑い」の下でアイスブレイク「私が今ここにいる理由、そして今の気持ち」を本美術館の顔ともいえる本作品に託して伝えあう。
- これまでの各自の実践について、「嬉しかった=青付箋」「困った=赤付箋」「対策案=黄緑付箋」を使って思いや考えを出し合うことから、中学生と行なう鑑賞活動について、考え方の土台を作っていく。
- ファシ主導で、白地に黒、赤の幾何学的な形態の組み合わさった「ド抽象作品」に向きあう。9人の視点で気づきを述べ合う中で、作品に現れた特徴から作者の意図にまでたどり着くことができた。終盤に作者についての資料配布。
- 2グループに分かれ、模造紙と作品の画像を使って、鑑賞活動を考える。対象学年、育成する資質・能力を明確にすることを意識し、手立てを考えていく。
- グループ内発表 → グループワーク全体の振り返り
グループワークを振り返って
事前のアンケートから、鑑賞活動や連携などについて戸惑いが感じられたので、まずその「もやもや」を整理することにしました。始めてみると、戸惑いの多くは参加者の意識の高さからのもので、鑑賞活動、ひいては美術教育の目的についての考えは広く共有できていると感じました。作品の鑑賞からプランニングまでは、非常に濃密な意見交換の時間となりました。アイデアを狙いに即して吟味しながら試行錯誤していくグループワークの経験こそが、私を含めて参加者の財産になったと思います。プランの完成は宿題となりました。皆さん、できましたでしょうか?(濱脇みどり)
松山グループ 中学生が作品とじっくり向き合える鑑賞活動とは?
- ファシリテーター:
- 松山沙樹(京都国立近代美術館 学芸課 特定研究員)
- 受講者:
- 10名(中学校教諭8名、指導主事1名、学芸員1名)
- 課題作品:
- 今井俊満《混沌》1957年
元永定正《作品》1961年
グループワークの進め方
- 「○曜日っぽい作品」を選んで発表。
作品から感じる印象やその背景にある経験や知識が、ひとりひとり違っていることを知る。 - これまでの実践を振り返り、中学生との鑑賞で「上手くいったこと」「課題と感じていること」について共有。
- アンリ・ミショー《無題》を全員で対話しながら鑑賞。
時間をかけて作品と向き合うと自分にとっての発見が増え、また他者と対話することで新たな見方が得られることを実感。中学生だったらどんな反応をするだろう?と考え、授業づくりの出発点を検討した。 - プログラム作り
2グループに分かれ、「活動のねらい」「造形的な見方・考え方をどう働かせるか」「美術館との連携」の3つのポイントを意識しながら、課題作品を用いた授業プランを考える。
グループワークを振り返って
課題作品として、抽象的で造形的な要素が捉えにくい2点をあえて選びましたが、最終的にできあがったプランはいずれも中学生の思考や興味関心に寄り添い、順にステップを踏んで鑑賞が深まるものになっていました。また、今回は作品があらかじめ決まっている状態からのスタートでしたが、本来は子どもたちの資質や能力が十分に伸びるような作品を、先生・学芸員が選ぶという作業から始まります。私たち自身も広い視野を持って、日頃から作品と向き合う姿勢を大切にできればと思います。(松山沙樹)
道越グループ 生徒一人ひとりの学びが深まる、鑑賞の授業
- ファシリテーター:
- 道越洋美(藤枝市立大洲中学校 教頭)
- 受講者:
- 10名(中学校教諭7名、学芸員3名)
- 課題作品:
- 尾藤豊《馬の死について》1961年
グループワークの進め方
- 展示室を1人で鑑賞し、お気に入りの作品の前で自己紹介。
- 2人1組で1枚の作品のタイトルを考え、発表し合う。
- 展示室全体の雰囲気や感じ取ったことを伝え合いながら、課題作品の前に集まる。
- 課題作品について対話をしながら鑑賞し、作品のイメージを色で表現する。
- ファシリテーターが課題作品「馬の死について」を簡単に解説する。
- 3つのグループに分かれて「馬の死について」の授業構想を立てる。
- 3つのグループで話し合った授業について発表し合う。
グループワークを振り返って
美術館の展示室をお借りして、グループワークのメンバー10名と特別な時間を過ごすことができました。1人で見る、2人で見て伝え合う、みんなで話し合う、グループで考える…様々な対話を行なうことで、自分の中の新たな造形的な視点に気づき、見方や感じ方を深める学びができました。課題作品は、誰もお気に入りに選ばなかった作品でしたが、グループで話し合ううちに、この作品が私たちに訴えてくる強いメッセージに全員が引き込まれていきました。鑑賞の授業で子どもがどんな力を発揮するのか、資質・能力を確認しながら、子どもの立場になって授業について話し合う皆さんのお姿に感激しました。(道越洋美)