グループワーク 小学生対象

奥村+後藤グループ 鑑賞体験と資質・能力

ファシリテーター:
奥村高明(日本体育大学 児童スポーツ教育学部 教授)
サブファシリテーター:
後藤真理子(千代田区立富士見小学校 主任教諭)
受講者:
10名(小学校教諭6名、指導主事1名、学芸員3名)
課題作品:
オーギュスト・ロダン《青銅時代》1877年
同《説教するヨハネ》1880年(原型)、1944年(鋳造)
同《バルザック(習作)》1897年(原型)、1944年(鋳造)
同《考える人》1881-82年
同《瞑想》1900年以後
グループワークの進め方

2グループに分かれ、8のアクティビティをもとにアプローチ、活動内容や流れを工夫しながら以下の問いの答えを導く
問1:「子供にとって美術館はどんな場所・空間・時間なのか?」
問2:「鑑賞体験が子供にもたらすものは何か?

アクティビティ:

「体で鑑賞」作品のポーズをとる
「エッセンス・スケッチ」視覚的なエッセンスを少ない線で表す
「感覚のポエム」作品から感じた言葉を表し、他の人が作品を探す
「モールで彫刻」選んだ作品をモールで表す
「あなたはロダン」ロダンになったつもりで体を使ってパフォーマンス
「ラウンド・スケッチ」作品を囲んで画用紙を置き短時間ずつ交代に
 スケッチ
「作品を言葉で表す」視覚が不自由な人に向けて作品を言葉で表す
「彫刻の空間」作品を取り囲んでいく空間を描く



  • ラウンド・スケッチ

  • モールでスケッチ

  • ゴム手袋で量感をとらえる

グループワークを振り返って

彫刻作品に触る、彫刻のつくりだす空間を考える、多方向から彫刻をスケッチするなど、彫刻ならではの鑑賞活動を通して、子どもたちが発揮している資質・能力について考えました。FAは活動の大枠を提示し、参加者自身がアクティビティを工夫する方法で取り組みました。FAが予想もしない鑑賞活動が生まれて、参加者、FA、サブの皆にとって役に立つ時間となりました。(奥村高明)

奥村グループは、経験豊富なメンバーが集まりました。最初に「鑑賞体験が子供にもたらすものは何か?」など大きな問いが与えられ、答えを多様なアクティビティをもとに班ごとに模索していきました。ロダン作品を対象に、つくる・描くなどの表す鑑賞活動、体を使って真似る・触れる鑑賞活動など活発なワークが印象的でした。「見方」「感じ方」が鍛えられる主体的な活動を設定いただいた奥村先生に感謝いたします。(後藤真理子)

柴﨑+青木グループ  「美術館って、楽しい!」~小学生のためのプログラム作り~

ファシリテーター:
柴﨑裕(聖学院大学 人文学部 児童学科 特任教授)
サブファシリテーター:
青木加苗(和歌山県立近代美術館 学芸員)
受講者:
10名(小学校教諭4名、支援学校教諭2名、学芸員4名)
課題作品:
ダフィット・テニールス(子)《聖アントニウスの誘惑》
ヤン・ファン・ホイエン《マース河口(ドルトレヒト)》1644年
イサーク・ファン・オスターデ《宿屋の前の旅人たち》1645年
ヤーコブ・ファン・ロイスダール《樫の森の道》
ヤン・ステーン《村の結婚》
グループワークの進め方
  1. 自己紹介:本館2階フロアの散策、お気に入りをスマホで撮影した画像をもとに
  2. 受講者による「いきなりビックリ・ギャラリートーク」:受講者2名がトーカーに、他の受講者は小学3年生に、みんなで絵を見る、話す楽しみの体感
  3. ギャラリートークで発見したことをもとに、このコーナーの作品群で小学校3~4年生を対象にどんなプログラムが考えられるかをフリートーク
  4. 「テニールス・グループ」と「ホイエン/オスターデ/ロイスダール/ステーンの4点・グループ」の2グループに分かれて鑑賞プログラムを考える


  • 展示フロアで見つけた
    お気に入りをもとに自己紹介

  • テニールスの妖怪たちのセリフは…?

  • 4つの作品で贅沢な紙芝居…始まるよ!

グループワークを振り返って

コルビュジエ建築の光の回廊の下、中庭を覗く大窓の横に、課題作品テニールス《聖アントニウスの誘惑》とステーン《村の結婚》は展示されている。ここは全国指導者研修のお宝スポット、見どころ満載の展示フロアだ。これらの絵から生まれるストーリーを活かし、はずむ会話を楽しむ鑑賞遊びへ…、その構想は受講者の感想、「これってポケモンじゃん!」…。「結婚式、なんか楽しそうじゃないね…」から始まった。この発言で作品と子どもの世界が一瞬でつながり、その可能性は広がった。受講者の目の付けどころは…さすがだ。(柴﨑裕)

私たちのグループが題材とした17世紀の絵画作品は、作品のテーマや背景を知らないから取りあげにくいと敬遠されがちです。しかし今回、受講者も私も、作品を自分の眼で観察し、子どもたちの視点を想像しながら自由にストーリーを紡ぎ出す作業によって、ここまで作品に近づき、また新たな意味を生み出せるのだとあらためて理解することができました。これはみんなで話し合って検討したからこその結果だったのではないでしょうか。このプロセスを大切に、先生方はぜひ相談できる学芸員を見つけてください。学芸員としても先生方と協力することで、子どもたちと美術館の関係がより豊かになっていくことを実感しています。(青木加苗)

遊免グループ 鑑賞の可能性を考える―彫刻編―

ファシリテーター:
遊免寛子(兵庫県立美術館 学芸員)
受講者:
10名(小学校教諭5名、指導主事1名、学芸員4名)
課題作品:
オーギュスト・ロダン《オルフェウス》1908年(原型)/1921年(鋳造)
グループワークの進め方
  1. 自己紹介
  2. 対話を用いたギャラリートークを通して、ロダンの《オルフェウス》を鑑賞
  3. ペアになり、ひとりは目を瞑り、ひとりが手引きをし、手袋をしてロダンの作品を触って鑑賞
  4. 視覚と触覚、それぞれの鑑賞について振り返る
  5. ふたつのグループに分かれて、以下のお題について考察: ①小学生と彫刻を鑑賞したら、どのような発見や学び
     ・課題があるか
    ②授業で彫刻を鑑賞するとしたら、どのようなことが
     できそうか
  6. グループでの意見をまとめて発表後、あらためて全員で意見交換


  • ギャラリートークの様子、体を使って鑑賞

  • 目を瞑り、触って鑑賞

  • 彫刻の鑑賞について全員で意見交換

グループワークを振り返って

彫刻は、視覚はもちろん触覚など体全体を使って鑑賞することができます。また、子どもたちの身近な場所に作品があることも多く、気付かぬうちに触れている表現でもあります。彫刻ならではの特徴が+にも-にもなるという指摘は、視点の違いが価値観を変えるという極めて基本的なことを教えてくれました。それは指導者が常に意識しておくべきことでもあります。子ども以上に目を輝かせ、これからの鑑賞活動について熱く語る参加者のみなさんとご一緒できて本当に幸せでした。(遊免寛子)

今井グループ モネ、知ってるもんね!

ファシリテーター:
今井陽子(東京国立近代美術館 工芸課 主任研究員)
受講者:
10名(小学校教諭7名、指導主事1名、学芸員2名)
課題作品:
クロード・モネ《ウォーター橋、ロンドン》1902年
同《黄色いアイリス》1914-17年頃
同《睡蓮》1916年
グループワークの進め方
  1. 「モネ、知ってる…よ?」:自己紹介とともにモネについて知っていることを発表
  2. 観察①:課題作品を観察し、五感を通して言語化
  3. モネからの手紙 モネや友人らによる手紙や評論を読み、観察を深める
  4. シェア:観察の結果を同じ作品グループ、また他作品グループとシェア
  5. 観察② ふたたび各自作品と向き合う
  6. 子どもたちはどう見るか?:対話型トークを演習しながら、子どもの視点を推察する
  7. 子どもたちとどう見るか?:授業案を作成
  8. ふりかえり:今なら自信をもって言える!「モネ、知ってるもんね」


  • 共有、共感の喜び

  • モネ空間をまったり満喫

  • 絵でも文字でもモネトーク

グループワークを振り返って

指導者研修に集まる皆さんならば、モネを知らない人はまずいないでしょう。でもあらたまって聞かれると、知っていることって何?とちょっと不安になってくる。それはもしかしたら、知識が作品体験と乖離したところに格納されていたからかもしれません。言語化したり、絵を描いたり、音で表したりと作品とさまざまに向き合った結果、モネについて語る、語る、語る…モネトークが止まらない楽しい時間となりました。その突き動かされるようなエネルギーが、子どもたちの鑑賞の充実を企図する私たちには欠かせないものなのではないかと思います。(今井陽子)