講演

「子供たちが自分の中に新しい意味や価値をつくりだす創造活動を通した学び」

講師:
東良雅人
(文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官(併)国立教育政策研究所 教育課程研究センター研究開発部 教育課程調査官)
日時:
8月3日(月) 9:50~10:40
場所:
東京国立近代美術館
講師略歴:
昭和62年に京都市立の公立中学校の美術科教諭として赴任。 その後、京都市の公立小学校図画工作の専科を担当。 平成14年から平成23年3月まで京都市の教育委員会で指導主事を務める。 平成23年4月より現職。

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「鑑賞教育の概念的整理と根拠としての文化理解」

講師:
神野真吾
(千葉大学教育学部 准教授)
日時:
8月4日(火) 15:15~16:05
場所:
国立新美術館
講師略歴:
1993年東京藝術大学大学院修了、東京大学社会情報研究所(現情報学環)研究生を経て、 1995年より山梨県立美術館学芸員として「現代美術百貨展」(2000年)、「新版日本の美術」 (2002年)などの現代美術展を企画。2006年より現職。WiCAN(千葉アートネットワーク・プロジェクト)を主宰。

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受講者アンケート(講演)

受講者感想(抜粋)

小学校教諭

  • どちらの先生の講演もわかりやすく、日々仕事に追われている中では、考えない、自分で知ろうとしない内容についてだったので、大変勉強になりました。美術・図工で培われる力は、子どもたちにとって大変大切なものであり、希望をもって実践していきたいという気持ちになりました。
  • 東良先生は、難しいことをわかり易くお話してくださったと思います。授業を予定通りにすすめることに追われていたことを反省しました。これからの時代がどのように変化するのか考え、その時代の中で、子どもたちが豊かに生きていけるような力をつけてあげたいと思います。神野先生のお話を聞いていると、大学で勉強したくなりました。美術の価値について考えていく講義はたのしかったです。学ぶことは楽しいと、感じさせていただきました。
  • 東良先生のご講演では、学習指導要領内容から鑑賞活動について詳しくまた解りやすく解説していただきました。活動のねらい・対象・活動の関係性・その重要性がとてもよくわかりました。指導者が子ども達を、自転車で先導するような鑑賞活動にならないように気をつけていきたいと思います。神野先生のご講演では、鑑賞のもつ二面性について整理することができました。
  • 図工・美術は時間数が少なく、限られた時間の中で活動していくことになります。それだけに、他の教科も含めて、関連づけて考える必要があると思いました。講演の中で「事実」と「感じること」を明らかにすることがありました。国語でいうなら「本文の言葉、文」と「思ったこと」につながります。自分の考えが、どこから生まれているのかを立ち止まり、そういうことを繰り返していくことで感性を豊かにできると思いました。
  • 美の価値についてのお話の中で、それは自分が決めることであり、人によって違うからこそ、他の人の見方を参考にすると気付かなかった価値に気付くことができるのだという鑑賞教育の有用性について考えることができました。アクションのためには感じるということから始めなければならないと思いました。主体的に考え、社会に参加できる人間を育成するためにも鑑賞教育を大切にしていきたいです。
  • 東良先生のご講演は大変分かりやすく、鑑賞教育だけでなくどの教科、学習でも大切にしたいことがまとめられていました。活動のねらいをはっきりさせ、子どもが試行錯誤しながら学んでいく授業を仕組みたいと思います。神野先生のご講演は、少し難しく感じましたが、今まであまり考えたことのない、価値について、また鑑賞を教育で行う意味などについて教えていただけてよかったです。

中学校教諭

  • 東良先生の講演では、現在、国家がどのような力を子どもたちに身に付けることを目指しているのか、また、そのためにどのような教育を目指しているのか、ということがとてもよく分かりました。また、そのために自分がどのような姿勢で美術科の授業で実践していかなくてはならないか、ということも考えさせられました。未来への予測から、子どもたちに必要な力、必要な教育のあり方を理路整然と説明して頂き、とても勉強になりました。また、これからの授業づくりへの意欲を喚起させられるようなとても情熱的なお話だったと思います。
  • 東良先生の講演は、私が中学校の美術を教える教員という立場から今後の鑑賞教育で子どもたちを成長させることができるかを考える上で参考になりました。神野先生の講演は、東良先生の話より広い意味で鑑賞を捉えることができておもしろかったです。自分自身も現代に生きる一人の鑑賞者として、今の美術における鑑賞とは何かを考えることができてよかったです。
  • (講演を通して)楽しく作品と向き合い、作品や作者に興味を持てるような「出会いの場」を工夫し、子ども自身が大切にしたい作品の魅力や関心に沿って鑑賞活動を深め、教師からの情報をエッセンスとして、見方や価値を見出せるような授業を大切にしたいと思いました。また、主体性や創造性、豊かな感性の育成について、今後取り組むべき課題を明確にすることができました。
  • どちらの講演も目からウロコの内容でした。東良先生の講演は自分の授業を振り返り、さらに希望とやる気を与えてくれるものになりました。神野先生の講演は作品鑑賞について、鑑賞する側の捉え方を問うもので、生徒にもどんなスタンスで作品と向かい合わせるかを考えさせる内容でとてもおもしろかったです。
  • 東良先生、神野先生の御講演から、「自分の見方や感じ方を大切にすること、自分の中に新しい価値や意味をつくりだすこと」「それらを構造化し、行動し、更新された自己を見いだすこと」の大切さ、美術の活動を通して子どもたちに身に付けさせるべき力は何かについて考えることの重要性に気付かさせていただきました。そして、自分がそのような姿勢で生きて行くことの大切さを再認識しました。全ての子どもたちは豊かで常に学ぶ存在であると言うことをおもい、可能性を信じて子どもたちと活動することを忘れてはならないと思いました。
  • 「鑑賞」という言葉の意味を改めて考えさせられました。こういう基本的なことをしっかり押さえた題材設定をしていかないと説得力が無いと思います。職場や地域の理解を得るためには、まず自分自身が物事の意味をしっかり確認しておかないといけないと思いました。

指導主事

  • 違う分野で経験豊富な方のお話を聞けたのがとても良かったです。単純に知識も増えましたし、鑑賞教育の幅の広さ、役割の深さが分かりました。
  • 指導主事という立場上、これまでに何度も講演に参加していますが、鑑賞に特化した内容であったために、より深く理解することができました。博学連携の視点から、美術館関係者とともに聴講することは大変有意義であると考えます。
  • 鑑賞は創造活動であり、とても重要なことがわかりました。日本の教育に欠けているものが、鑑賞教育にはあるような気がします。もっと、いろいろな人に知ってもらいたいと思いました。

学芸員

  • どちらの講演もとても充実した内容で、改めて子ども達にとってどんな経験が大切なのか、美術館とはどのような場であることが望ましいのか、という基本に立ち戻り考えを深めることができました。特に、神野先生のご講演は、美術の価値そのもの、美術館のあり方そのものを問い直す、そんな内容であったと感じています。
  • 東良雅人氏の話の中で、学校の授業で鑑賞を行うとき話し合いの行きつくところは、授業のねらいに沿ったものであること、というところが大いに参考になりました。確かにその通りですが、一人一人の話を受け入れていると行きつくところがバラバラになりがちのため、「ねらい」を意識した進め方をしていきたいと思いました。
  • 東良先生の講演では、鑑賞教育にとって必要なことを的確に学ぶことができました。また「ねらい」の重要性や、生徒自身が価値を見いだす訓練になることなど、その後の研修でもそれらを意識して取り組むことができました。神野先生の講演では、そもそも鑑賞教育ってなんのためにやるのだ、という根本的なことから学ぶことができ、研修をすすめてきたなかで、基本に立ち返ることができました。
  • 指導要領と深く絡めた形で鑑賞教育の意義を指し示すものと、鑑賞教育を倫理的な観点から問い直すという二つの内容により、鑑賞教育に対して様々な視点を持つことができ、方法論に終始してしまいがちな現場に対して示唆に富んだ内容でした。特に東野先生のご講演により、作品にまつわる「知識や情報」の鑑賞教育における曖昧で不明瞭位置づけが概念的に整理されました。
  • (講演を通して)日頃からもやもやしていた部分(会話の落としどころ、作品情報の提供、教員の持つ固定観念をもみほぐす理論)などについて、明快な示唆を得られたと感じています。