ギャラリートーク分析
授業者のコメント
- 司会
- それでは、小学生のトークと中学生のトークの授業をしてくださったお二人がちょうどいらっしゃいますので、その当時の状況などの補足ですとか、今改めて見て感じるところなどがありましたら、一言ずついただければと思います。
では、南先生のほうからお願いします。
- 南_
- ありがとうございました。
奥村先生、一柳先生のお話を伺って、私の言葉、一つ一つが授業の方向付けをしたり、子どもたちに影響を与えているのだと実感しました。あらためてビデオでみると「あっ、あっ、強引な、、」と思うと同時に、鑑賞に限らず、普段の授業でも同じようなことが起きているのだと思いました。
普段の授業では、子どもたちを分析するという目で見ていない、全体をみながら授業がどのように進んでいくのかということへ意識が傾いていることに気付きます。一人ひとりに目を向けてみると、本当に、その場その場を生きているのだなと実感しました。
友だちの影響を受けたり、友だちがつくっている作品を見て影響を受けたり、周りの出来事に影響を受けたりしています。子どもたちの中では影響は受け身ではなく、自分が感じ取り、自分として変わっているということを感じました。
このような事に気付くことができ、また、明日から授業するなかで、子どもをみる自分が少し変わっていくことができるのかな。自分自身にちょっと期待をもちながらやっていきたいと思います。どうもありがとうございました。
- 奥村
- 一つ付け加えをさせてください。
実は、先生方は、そのことを日常的にやっていらっしゃいます。教育関係者の方だったら分かると思いますが、指導案に記す「目標」です。二つの授業を題材目標にするとどのようになるかというと、一つめのミロは、「形や色からイメージを引き出す」というのが多分授業のねらいだと思います。
ということは、「何に見える」ということよりは、子どもが「形や色から、今、イメージを引き出している」ということを意識しながら進めていくことができるわけですね。
二つめの「犬の唄」でしたら、「量とか姿勢など彫刻作品の特徴から主題を引き出す」ということでしょう。それが題材の目標ということになると思います。指導案というところに1度戻られると「あ、この授業は」「この活動は」という分析は案外やりやすいかもしれません。
- 三澤
- 三澤です。3年前の自分を見て「ああ、若いな」と……。
どうもありがとうございました。これは、私がトークした中でも本当に結構思い出に残っているトークで、鳥肌が立ったのですね。一番楽しんだのは、私ではないかと思っているのです。
トークをやるときには常に思っていることですけれども、まず自分が楽しもうと思っています。その楽しむために子どもの意見を利用してしまえと思っております。ですから、そのような点で本当に子どもたちの気付きとか発見を自分のものにしていくという、そのような姿勢で常に臨んでおります。
私は「犬の唄」のことについて事前に調べて、それは全部伏せておいたのです。
なぜ鳥肌が立ったのかというと、自分が調べたことと子どもたちが言っていることとぴったり合うのですよ。特に最後に残った男の子は鋭かったですね。周りの部屋の環境とかを考えながらその作品を見ている子とか、本当に非常にすごいなと驚きました。
これは、初めて会った子どもたちとトークしたわけで、そのような緊張感の中で、かなり子どもたちと集中して作品を見ることができたのではないか。そのような点では、例えば自分の知り合いの子どもとか、自分のクラスの子とかで見たとすると、それとは違う緊張感の中で本当に作品に集中していくことができた。
それがいいかどうかは分かりません。クラスはクラスで、その子どもたちを知っている関係でうまくトークを回していくこともできると思います。
いずれにしても、作品を真剣に見ようというその姿勢をどのように作るかという、そのような点で、どうやったらその作品に興味を持ってもらうかということで、私は「犬の唄」というものにテーマを絞り込んだわけです。自分が知らないということで「教えてちょうだい」ということでお願いしました。常に子どもたちとは対等に、同じ平地に立って、子どもと同じように感じていきたいなと考えております。
本当に鳥肌が立った体験をさせてもらって、これを感じてしまうとやめられませんね。そのような思い出があります。ありがとうございました。
- 司会
- それでは、そろそろ時間ですので、終了したいと思います。
奥村先生、一柳先生には、3月に録画をした直後からずっと連絡を取り合いながら本日のプログラムを準備していただきました。どうもありがとうございました。
受講者アンケート(ギャラリートーク分析)
受講者感想(抜粋)
小学校教諭
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さりげない言葉の使い方や抑揚でトークが方向づけられること。気に入った作品と出会うことを通して自分や他者と出会い、自立に向かっていくこと。子どもの視線や体の動き、発言のつながりや変容に敏感であること。多くのことを学んだ。
- 子どもたちと先生のやりとりを客観的に、専門家の分析を交えながら見ることができて、大変良かった。
- ビデオを見ながら、言葉や子どもの様子など、ポイントを押さえて分析してくださり大変わかりやすかった。小学生と中学生それぞれの鑑賞の目標もわかりやすく、とても実践してみたくなった。
- 実際の子どもの変容を見て、教師、学芸員の発問についての考察を聞くことができて参考になった。子どもの声が聞きとりにくいので、字幕を入れてみるというのはどうだろう。
- トークの内容を解説していただきながら、子どもたちの発言の変化や感じ方の広がりを捉えることができた。ターゲットを決めて分析的に発言や行動を追うことで、周囲の考えを吸収しながら自分の見方や考えを再構築していく様子を見ることができた。
- ギャラリートークの仕方や、子どもたちの変容、周りの先生方の声かけのポイント・進め方などがよくわかった。
- ギャラリートークを行う際に、どのような点に配慮しなければいけないかがよくわかった。実際のギャラリートークも見たいが、今回のようにポイントを教えていただける機会も貴重だと思った。
- ビデオを見ながら、言葉や子どもの様子など、ポイントを押さえて分析してくださり大変分かりやすかった。小学生と中学生、それぞれの鑑賞の目標もわかりやすくとても実践してみたくなった。
- 教師として、ギャラリートークにどうかかわっていくのか、どういう視点で言葉かけをしていくのかを学ぶことができ良かった。教師のかかわりが重要なことを改めて感じることができた。
中学校教諭
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- 1つ1つの言葉に注目したり、表情の変化の瞬間などを客観的に見ることができたりして参考になった。
- 自分がトークに参加するのとは違って、その場でおこっている様々な細かい点をも見ることができとても勉強になった。
- ファシリテータの言葉がけしだいで、トークの方向着地点が大きく変わることがわかりやすく伝わった。言葉がけは無意識に出てしまう部分が大きいので、教員やファシリテータの研修には非常に役立つものだと思う。
- トークの流れを止めながらポイントを振り返ることができたのはとても勉強になった。
- 講師の先生方の分析も参考になったが、これも自分たちで演習してみたい。
- 評価の観点について大変参考になった。言葉のほうに気持ちが集中してしまい、今日のような行動の変化を日頃見落としていると反省した。
- ただギャラリートークを見ているより、この方法の方が、我々教員がどういった言葉がけをすれば良いか、生徒の変容がわかりやすく、大変有効と考える。自分自身の鑑賞の授業でもビデオを使うのは有効と感じた。
- 子どもたちの見方が深まるためには教師の言葉がいかに重要であるかがわかった。子どもたちが他の子どもたちの意見を聞いて、自分の見方を広げていく場面を見ることができ、素晴らしいと思った。
- 作品との対話の進め方、ファシリテータとしての投げかけ、一言の重み、様々な角度からの検証の可能性など学ぶべきことが多く、とても参考になった。
指導主事
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- 生徒、教師のどちらの側からも観察が深められて大変良かった。ぜひまた機会があればお願いしたい。
- ポイントごとに分析の説明が入るため、捉えやすい。トーカーの発問と子どもの答えの関係性について学ぶことができた。
- 何も知らなければやりっぱなしのギャラリートークになってしまい、「本当に必要なの」となってしまいがち。このようにきちんと分析して価値づけしてもらう機会は大変貴重である。
- 指導者の投げかける言葉に対する適切な助言、児童、生徒の鑑賞に対する姿勢、心の有り様の変化をどのように見てとるのかという適切な分析が聞けて良かったと思う。限られた時間の中で、ポイントを絞った分析になったのではないか。
- 一人の児童に着目した分析が参考になった。ギャラリートークの視点・ねらいが明確になったように思う。
学芸員
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子どもたちの「観る」意欲や意識を引き出す見方、言葉、態度など、客観的な分析で少し具体的な工夫を考える機会をいただけたと思う。
- 子どもの敏感で繊細な感性を改めて感じて、それを引き出していきたいという気持ちと、指導者の無意識な言葉がそれを防げる要因になるという危険性を感じた。
- 客観的に子どもたちそれぞれの鑑賞の変化の様子を見ることはなかったので、とても感じるものがあった。
- 自らトークをしている時は子ども全員の動きを全て捉えることはできないので、子どもの言葉・動作を確認し、自分のふるまいも見ることのできる機会になったので良かった。
- ギャラリートークそのものよりも、必要なところで止めて考えたり、振り返ったりという分析が、聞いている側もじっくり考える時間を持つことができ良い方法だと思った。