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講演

3.美術館との連携

 

次は、美術館との連携です。今回、特に小学校のほうは美術館との連携で「連携」という言葉が入りました。美術館との連携の部分というのは、これは、やはりここに会する全ての人が、例えば指導要領上でどのように押さえられているのか、これはちょっと知っておいていただきたいことだと思います。


小学校の指導要領

図画工作では、各学年の「B鑑賞」の指導に当たっては児童や学校の実態に応じて地域の美術館などを利用したり連携を図ったりすることが位置付けられています。 解説の説明の中には、幾つか押さえておきたいなと思うようなことが書かれています。ちょっと前は省略していますが、児童の鑑賞の充実の観点から児童や学校の実態に応じて地域の美術館などを利用したり連携を図ったりすることについてこのことは示しているのだということですね。だから美術作品を活用するということではなくて、美術館を利用したり、美術館と連携する、美術館そのものと連携するということを示しています。
利用においては、鑑賞の能力を育てる目的で行うようにするとともに、児童一人ひとりが能動的に鑑賞ができるように配慮する必要があるということですね。今まで私が少しお話ししたことがここにも書かれているということですね。
まず、児童の鑑賞の能力を育てる目的で美術館と連携しながら行うのだということ、それから児童一人ひとり が能動的に鑑賞できるようにしていくということ、ここをやはりしっかり押さえて、その上で美術館と連携していこうということです。
少し長くなりますが「ただ、美術館などは、作品の保存や収集、展示、研究、教育普及など、様々な目的をもっている。それぞれの施設に応じて特性が異なるので、これらに配慮した上で、施設が提供する教材や教育プログラムを活用する、学芸員などの専門的な経験や知識を生かして授業をするなど、多様な取り組みが考えられる」ということで、先生方がそれぞれの地域のほうに戻られる中で、このようなことで多様な取り組みが考えられるということですので、ここはやはり知恵を出し合って、子どもたちにとって美術館での鑑賞というものをより充実していくように、いろいろな多様な取り組みを現状の中でも考えながらやっていくということ、このようなことがしっかりと解説の中に書かれていますので、学芸員の方々ともこの内容についてまた広げていただければな、というように思います。


中学校の指導要領

中学校のほうは、連携という言葉は指導要領でもその取り扱いには言葉としては入っていません。「積極的に活用するようにすること」という言葉ですけれども、解説本文の中には「地域によって美術館・博物館等の施設や美術的な文化財の状況は異なるが、学校や地域の実態に応じて、実物の美術作品を鑑賞する機会が得られるようにしたり、作家や学芸員と連携したりして、可能な限り多様な鑑賞体験の場を設定するようにする」ということで、ここで作家や学芸員の方と連携したりしてという、ここに「連携」という言葉が入っています。基本的に考え方は、小学校と中学校と美術館との連携という考え方は同じです。このようにきちっと位置付けてやっているということを全ての方に知っていただくということは大切なことだと思います。


美術館のプログラムや教材の活用

また、先ほどの解説の分にもありましたように、いろいろな美術館にはプログラム等のそのようなものがあります。私も、昨日、ポスターセッションのときに、皆さんもそうだったと思うのですけれども、たくさんの美術館が一堂に会して、その中でいろいろな取り組み、そしていろいろなプログラムがあることを、私も初めて見た物もたくさんありました。
このようなプログラムは、多分、今回参加されていなかった、地域に戻られたらそれぞれの美術館でもあると思うのですね。だから、ぜひ、あのような物をやはり先生方も見て活用するということもありますし、場合によっては美術館と学校の先生方が連携して、あのようなプログラムを作っていくこともすすめてほしいですね。また、実際にそのようなことも地域によっては、行われていることを聞いています。
また、そのような働きかけは、先生も美術館も両方とも思っているのだけれども、何かどちらが言い出したらいいのかというようなので止まっている状況というのは結構あると思うのですね。だから、ぜひ、この研修に参加した先生方などは、また地域に戻られたときにそのようなことを呼び掛けてみてください。お話ししてみたきっかけで、より今まで以上にいいものができるということはあると思いますので、またそのような連携も進めていくということが必要かなというように思います。


これは、東京国立近代美術館のものですね。いろいろと中を見させていただくと、本当に丁寧に作ってあって、使えるなと思うこともたくさんあります。これは、昨日、ポスターセッションでかなりの人が、うわーっとたくさん来ておられたアートカードです。
このようなものも、いろいろなところで作られて、それぞれの特色がありながら行われていると思います。ぜひ、これも、本当にいい物が作られていますので、また皆さんに教えていただけたらなと思います。

活動紹介「マイ美術館」

このアートカードの解説の中に書いてある「マイ美術館」という、テーマに合った美術館の美術作品を関連づけて集めたりするという活動があって、ちょうどこのカードではないのですけれどもそれと似た活動があるので、少しだけこのようなカードの活用を一つご紹介しようと思います。


中学校の1年生なのですけれども、もちろん具体的な名前が付いているのですが、マイ美術館を作ろうというような取り組みです。 封筒の中に10枚のカードが入っていまして、その10枚のカードをグループごとに配ります。グループのほうの10枚の組み合わせというのは、それぞれの組み合わせなのですね。その封筒の中のカードを使って自分たちの美術館というものを作ってみようということで、そのような題材なのですが、これは『学芸員の仕事』という副読本か何かでしょうか、このように書いてあって、そこを今紹介しているところですけれども、このように書かれていることがありますね。
このグループごとに封筒に入ったカードを見て、どのように並べるかというのを考えるわけなのですが、このときに少し活動を促進させるためにちょっと仕組みがしてありまして、10枚カードが入っているのですが、その美術館のスペースの関係で8点しか展示できない、8枚を選ばなければならないということをわざと入れてあります。
だから子どもたちは、全部を並べることだけを考えるのではなくて、まず10点のうち要するに8点に絞るということで、絵をどれにしようかというような活動の中でしっかり見られる、そのような仕組みを作ってやっております。子どもたちは、絵と絵を交流しながらその辺を決めていくわけですね。 展覧会の題名を考えようということと、この展覧会の企画に当たってのねらいを考えてみよう、それから1枚目の作品を選んだ理由をみんなに伝えようというのは、1枚目の作品が要するに展覧会のポスターになる作品だよという設定になっています。だから、1枚目は一体何を持ってきたらいいのかなと。
これも、1枚目を選ぶことが目的というよりも、1枚目を選ぶという仕組みを入れることで、やはりその10枚のカードをそれぞれじっくりと見つめさせるというようなことをこの先生はねらいにしていたわけですね。
入り口・出口というこのような細長い紙がそこに張ってありまして、そこへ子どもたちがそれぞれ自分で考えた作品を並べてマイ美術館を作るというような活動です。あとは、それぞれの企画に合わせて子どもたちが作品を鑑賞し合って、どのようにしているのかなというようなことを見るというカードを使った例です。このような活用の仕方も一つあるということですね。
このような美術館が持っているいろいろな資料やそのようなプログラム、それから先生方が持っている美術や図工の授業のノウハウ、そのようなものをこのように合わせて鑑賞活動をお互いに育てていくということ、これができていくということがすごくこれから先の鑑賞の活動を高めていく大きな力になるのではないかと思います。

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