グループワーク1

東京国立近代美術館

西村グループ/松永グループ
道越グループ/星グループ

01 西村グループ 
子供たちが思わず絵を見たくなる言葉を考える

ファシリテーター
西村 德行(東京学芸大学 総合教育科学系 教育実践創成講座 准教授)

サブファシリテーター
中根 誠一(東大和市立第十小学校 教諭)

概要

「子供たちが思わず絵を見たくなる言葉を考える」をテーマに、東近美の作品を使ったゲーム(大喜利大会)を行ないました。生活や社会の中の形や色、美術や美術作品などに豊かに関わるためには、どのようにすれば子供たちの中に問いが生まれるのか、また対象に働きかける力を引き出せるのかを、「言葉」を柱にして検討しました。鑑賞活動における子供たちの見ることの深まり、学年の発達段階、使う作品の妥当性を、繰り返し考えることの大切さを実感しました。

課題作品
古賀春江《海》1929年
アンリ・ルソー《第22回アンデパンダン展に参加するよう芸術家達を導く自由の女神》1905-06年
徳岡神泉《仔鹿》1961年
活動内容
  1. 挨拶・自己紹介
  2. オンライン対話鑑賞の振り返り:古賀春江《海》を画面共有しながら見る。
  3. グループワークのテーマが「子供たちが思わず絵を見たくなる言葉を考える」であることを知る。古賀春江《海》を使って一人ひとり言葉を考え、紙にペンで書いて発表する。
  4. 2グループに分かれ、各グループ1〜2作品を鑑賞素材BOXから選ぶ。子供たちが思わず絵を見たくなる5つの言葉をグループで考え、紙にペンで書く。出す順番を決める。
  5. 作品画像を共有しながら「言葉を発表する」グループと「答える」グループに分かれて活動する。(東近美杯争奪作品大喜利大会)
  6. 問いの言葉のよさ(子どもから言葉を引き出す)、答える言葉のよさ(よい返し、うまい言葉)をもとに、審査委員長から各賞発表する。
感想

オンラインでの実施となりましたが、そのことで鑑賞することや話し合うことの意味を、あらためて考えるよい機会となりました。グループワークでは「言葉」をテーマとしましたが、グループで話し合いながら、参加いただいた皆様の見方や、日頃の子供たちへの思いが伝わってきて、私自身とても有意義な時間となりました。オンラインではありましたが、素晴らしいメンバーと交流させて頂き、感謝しております。ぜひ次は、対面でお会いしたいですね!(西村徳行)

10名を分割することで、小グループの活動が入り、参加者がより主体的に研修に参加することができました。また、児童の立場になって端末の作品を鑑賞することで、見方や感じ方の広がりを実感することができました。最後に、美術鑑賞に対して「固いイメージ」や「〜しなければならない」という先入観を抱いていた参加者がいた場合、ゲーム形式のワークショップを実施することで、それらのネガティブなイメージを払拭することができると実感しています(グループ活動の前後では参加者の安堵感も随分、違っていたと感じました)。(中根誠一)


02 松永グループ 
ICT活用による鑑賞教育の可能性

ファシリテーター
松永 かおり(世田谷区立砧南中学校 校長)

概要

受講者のみなさん全員に、ICTを活用した鑑賞授業を組み立てる体験をしていただきました。協議で他の方の考えを共有することで、同じ鑑賞素材BOXを使っても多様な方法や迫り方があり、新しい鑑賞教育の可能性を感じていただけたのではないでしょうか。「対面でも、オンラインやバーチャルでも、変わらず目標や指導のねらい、活動の意義などのポイントがある」という共通理解を、協議の中から得ることができました。

課題作品
鑑賞素材BOXの東近美作品からそれぞれが選択
活動内容
  1. 鑑賞教育の経験を含む自己紹介
  2. 鑑賞素材BOXの使い方確認
  3. 個人での取組:鑑賞素材BOXから作品を選び、対象の学年/作品選定の理由/活動のねらい(授業のねらい)/ねらいに迫るための活動や教師の発問のポイント(予想される子供の反応等)/美術館との連携のポイント(学芸員さんとの役割分担など)を明確にして、鑑賞の授業を想定した活動プランを作成
  4. グループ協議:2グループに分かれ、各自の活動プランを共有→全体協議:各グループの協議内容を共有→まとめと振り返り
感想

今回の研修会がオンライン開催であることや、全国の学校共通でギガ端末の活用が進んでいるため、共通テーマは「ICT活用による鑑賞教育の可能性」を選択しましたが、協議では「主体的・対話的で深い学び」や「個別最適な学びと協働的な学び」の話題にも自然に発展していきました。受講者の皆さんの活発な協議のおかげで、充実したGWとなったことに感謝申し上げます。みなさんの、各地域でのご活躍を心からお祈りしています。


03 道越グループ

鑑賞の授業プランを考えることを通して、ICTを活用した鑑賞授業の可能性を探るとともに、子供の学びの深まりに寄り添った鑑賞の在り方を考える

ファシリテーター
道越 洋美(藤枝市立大洲中学校 教頭)

概要

午前中の対話型鑑賞を生かし、まず全員で抽象作品の比較鑑賞を行ない、その後個人で授業プランを考えました。小グループ協議の後に再び10人で共有したところ、ICTの効果的な活用については、即実践に結びつくような例が数多く提案されました。教員や学芸員など、子供の学びの姿をイメージしながら話し合い、鑑賞教育の良さを再確認できた時間となりました。

課題作品
北脇昇《クォ・ヴァディス》1949年
アントニー・ゴームリー《反映/思索》2001年
活動内容
【全員10名】
  • ファシリテーター、参加者自己紹介
  • アイスブレイクとして、抽象作品を比較鑑賞
【小グループ5名】
  • グループをAとBの2つに分け、それぞれのグループで鑑賞素材BOXから1作品を選ぶ
  • 選んだ作品を用いた授業プランを個人で考える
  • 「ICTをどこで使うか」「表現の授業につなげるとしたら」という2つの視点で構想し、協議する
【全員10名】
  • AとBでどのようなプランを考えたかをそれぞれの代表者が発表する
  • 半日のGWの振り返りを伝え合う
感想

初めてのオンライングループ・ワークに進行役としての不安はありましたが、参加者の方々の主体的な取り組みと明るい笑顔に救われて時間があっという間に過ぎました。「造形的な視点をもって世界を見る」見つめる対象は、自分自身であったり社会であったりとその時々によって変わりますが、その素晴らしさと面白さをGWのメンバー全員で感じることができました。まさに、自分としての意味や価値をつくり出したと思います。学びが深まるということの具体について考えることができ、充実した時間となりました。ありがとうございました。


04 星グループ 
「見方や感じ方を深める鑑賞」で大切なことを考える

ファシリテーター
星 博人(福島県立橘高等学校 教頭)

概要

4グループは高校の先生方が多いことから、作品の背景にある生活や社会,時代などを分析的、総合的に捉え、見方や感じ方を深める鑑賞についてグループワークを行ないました。「ICTを活用した鑑賞教育」をメインのテーマとし、インターネットを利用して画像や文献、描いた場所の現在の様子を閲覧するなどして新たな資料を読み取り、鑑賞を深めました。初見での印象から、資料を読み取ることをとおして見え方が変わることを体感し、ICT活用の可能性を探りました。

課題作品
岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年
活動内容
  1. 自己紹介と午前中の鑑賞活動を振り返る。
  2. 午前中の鑑賞活動で扱った岸田劉生の作品を課題作品とし、鑑賞素材BOXの作品解説を読んで感じたこと考えたことを共有する。
  3. 課題作品に描かれた代々木4丁目の現在の様子をGoogleマップのストリートビューを使って探索する。
  4. 東京国立近代美術館リポジトリより、インターネットで公開している「現代の眼497号」の課題作品について書かれた文章の一部を読む。
  5. 3の2つの資料から課題作品について作品の見え方が変わったことをグループ全体で言葉によって共有する。
  6. 2つのグループに分かれ、鑑賞の活動をもとに、ICTを活用する視点と高校生の視点で鑑賞の授業プランを考えて発表
  7. 「鑑賞で大切なもの、大切にしたいことは何か」について活動を振り返りながら意見を共有する。
感想

鑑賞活動で大切にしたいこととしてグループの皆さんと共有したことは、生徒の自由な見方や感じ方を大切にしながら、作品の背景を分析的、総合的に捉えさせるためには、どの情報をどこでどのくらい提供するか吟味すること、生徒の発達段階や習熟度など実態を踏まえてねらいを明確にすることでした。また、ICTの効果的な活用は、美術館連携の機会を増やし鑑賞活動に幅をもたせることができるということでした。受講された皆さんとともに鑑賞のあり方について考える貴重な時間を過ごすことができました。