グループワーク4

国立工芸館

星野グループ

09 星野グループ 
ガリバーになって見てみよう——異なる距離感で鑑賞する試み

ファシリテーター
星野 立子(新潟市新津美術館 副主査 学芸員)

サブファシリテーター
今井 陽子(国立工芸館 工芸課 主任研究員)

概要

一作品を丁寧に鑑賞すると、思った以上に多くの発見や情報が得られること。その体験に基づいた授業づくりは、教科の別や鑑賞/創作の垣根を超えた拡がりを持ち得ること。そして、自ずと鑑賞者の実感や実生活と結びついた内容となること。グループワークを通じて辿り着いたこうした一連の気付きは、当初隠れたテーマとして掲げていた「主体的・対話的な深い学びと鑑賞教育」に、結果として明確に応じるものであったように思う。

課題作品
松田権六《蒔絵竹林文箱》1965年
活動内容
  1. 午前・午後を通じて、同じ課題作品を鑑賞し内容を連動。午前は「箱」という形式を前提に五感を働かせて楽しむ。画像は鑑賞素材BOXの1枚のみ、拡大はしない。
  2. 午後、全員で自己紹介。各々が地元で撮影したお気に入りの風景写真を紹介しながら。
  3. 課題作品を再度鑑賞。今度は「風景」の要素を加味して作品世界に没入してみる。導入とした問いは「ガリバーの小人になったつもりで作品の上に降り立ってみたら、どんな風景が見える?」。拡大した画像や他の角度から撮った画像も用いながら。
  4. ファシリテーターから種明かし。午前と午後で、「箱と自分」・「表現世界の中の自分」という二つの異なる距離感を作品に対して設定していた旨を伝える。多角的な鑑賞を重ね合わせ、沢山の情報が引き出せることを体感する。
  5. 普段教えている生徒に同じ作品で授業を行なう前提で、それぞれ授業案を考え発表。
  6. 実物の作品を取り扱う様子を生中継。デジタルと実物、異なる鑑賞法の特徴も考える。
感想

受講者の方々から、創作や言語活動、地域文化の学習等と結び付けた魅力的な授業案が次々提示された時、出発点として「作品をよく見ること」の重要性と可能性を再認識しました。参加者の頭にあった鑑賞教育の意義や役割、或いは「鑑賞対象として工芸は特殊?」といった先入観を、具体的に考え直す契機になったように思います。また「没入感」と「視点の共有」という点で、手段としてのオンライン対話鑑賞の有効性も感じました。