参加者の声

「令和3年度 美術館を活用した鑑賞教育の充実のための指導者研修」終了後に実施したアンケートで、参加者88名から有効回答が得られました。 選択回答の結果と自由記述からの抜粋を以下にご紹介します。

※アンケート結果を表した円グラフでは、小数点以下を四捨五入したため、合計が100パーセントにならない場合があります。

1. 研修全般について

Q2
Q5
Q6
Q17
Q18

【小学校教諭】

  • 私は美術科専門ではないので、美術館を活用すること、鑑賞教育について沢山のことを楽しく学ばせてもらいました。作品を見る場合、間違った意見や見方はありません。感じたこと、考えたことを根拠を明確にして引き出すこと、様々な発問を準備して、子供たちが他者と視点や見方を共有できるよう学ばせていきたいと思いました。対話鑑賞は、よく見てその意味を自分でつくりだすこと。国語科では、読解力を求められていますが、鑑賞教育を通した読解力の育成と温かい学級経営を目指したいと考えました。
  • 1日目、2日目ともに、様々な分野の講師の方から多角的な視点で鑑賞教育について学ぶことができました。学校現場においては、絵に表したり作品をつくったりすることに重きがおかれ、鑑賞教育はまだまだ重要視されていないと感じることもあります。そのため、本研修で学んだことを若手研修や図画工作研究会の活動などで共有したり、美術館を活用した学習を提案したり、自分自身の授業改善につなげていったりしたいと思います。コロナ禍という大変な社会状況ですが、オンライン上で様々に工夫しながら研修を行なってくださり本当にありがとうございました。

【中学校教諭】

  • オンラインでの研修でしたが、多くの刺激を受け非常にためになりました。研修で学んだことを生かし、美術教育の普及にさらに貢献できたらと思います。また、美術教育に携わる多くの方とお話しすることができ、様々な方法があるのだと知りました。学校現場だけでなく、様々な方と交流しさらに自分自身を高めていきたいです。準備などありがとうございました。
  • コロナの状況で先の見通しが見えない中、早めに「オンラインでの研修」ヘとご配慮いただきましたこと、またそれに伴いしてくださっていた様々な準備、きめ細やかなサポート等、本当にありがとうございました。美術館に訪れること、来館していただくことのみが連携ではなく、コロナ禍であることも一因ではありますが、今回体験させていただいたことを通して連携の仕方の多様な広がりを感じました。多くのことを学び、感じることができました。このような機会を作っていただきましたことに感謝の思いで一杯です。本当にありがとうございました。

【高等学校教諭】

  • 2日間オンラインでの研修ということが決まり、正直十分な学びにつながるか不安もあったが、様々な事例紹介や対話鑑賞の実施、グループワークなど、オンラインの利点をうまく活用されており、その内容も大変勉強になりました。様々な制約の中でのご開催大変ありがとうございました。
  • 昨今、生徒指導の観点から、主観的な意見や判断で人間関係の構築が上手くできない生徒が多いことを危惧している。鑑賞教育は自己理解、他者理解が可能で、他者の意見から新たに考え方を構築できる。今回の研修から、知識のみの鑑賞から新しい視点の構築ができる協働的な鑑賞ヘ授業を切り替えたい。これを小、中、高、美術館が連携し実施することで、子供たちがこれからの多様性の時代を上手く乗り越えていけるのではと思う。全国の方々と意見交換できる機会を与えてくださり、大変ありがとうございました。

【指導主事】

  • 芸術品、伝統工芸のすばらしさ、学芸員の本格的な解説を聞く深み等、美術教育は心の教育だと改めて感じた。観て、ワークショップで体験し、学芸員や作家からお話を聞く。知らない世界を知り、友達と意見を交換することで新たな視点を得る。それをもとに自分の作品作り(表現)に励む。互いの作品を鑑賞しあう。伝統工芸を受け継ぎたいと思う生徒も出るであろう。この経験は日常生活でもこれまで素通りしていた道端の花、空の色、美術館の存在を意識し、そのことで1日が楽しくなるのにつながると思う。研修を受けた私もそうですが、生徒の生活・将来が豊かになると感じた研修でした。2日間、本当にありがとうございました。コロナが落ち着いたらぜひ、家族と一緒に美術館を訪れ、見せていただいた作品を実物で見たいと思います。美術館カードで作品を家族に見せたら感激していましたので。
  • 本研修を通して、美術館の学芸員さんを身近に感じることができました。学芸員さんが学校教育のためにどれだけのお力を注いでくださっているかを目の当たりにし、地域の美術館の学芸員さんとぜひ連絡を取ってみたいと感じました。まずは美術館と連絡を取り、意見交流をした上で、学校が美術館へ来られる環境を少しでも整えていけたらと思います。有意義な研修会をありがとうございました。
  • この約2年、オンラインの良さを感じることもできました。その点では、自分の県や市だけでなく日本全国の美術館や学校と、気楽に連携した学びが可能なのだと思えました。令和の時代にふさわしい、楽しい鑑賞教育をまだまだ探していきたいです。ありがとうございました。

【学芸員】

  • 鑑賞教育は、やはり学校の先生と美術館の学芸員のタッグによって実現されるべきプログラムであると感じた。こんなに多くの学校の先生方と交流を持てる機会は滅多にないため、今回のようなグループワークだけではなく、例えば一緒に具体的な鑑賞教育のプログラムを考えるワークショップなど、さらに交流を深めることができる研修プログラムをぜひ開催してほしいと願っている。
  • 今回はこのような機会を与えていただき、感謝しております。鑑賞教育の重要性や実践事例を学べたこと、今後に生かしていけそうなことが多くあったのは本当に勉強になりました。そして何よりも、実際に学校の先生方のご意見を聞けて、非常に参考になりました。地域は違えど、美術館と連携していきたいと思っている先生方が多いことを知ることができて、本当に良かったです。今後、学校に働きかけていく上でもとても心強いご意見です。また先生方と鑑賞教育のグループワークを行なえたことで、発問の種類についても改めて考えるきっかけになりました。どうしたら児童・生徒の深い学びにつながるのか、作品の本質を引き出していくことができるのか、気が付くきっかけにもなりました。美術館の学芸員だけだと学校の実態とずれてしまうこともあると思うので、先生方のお話が聞けて、本当に勉強になりました。今回は本当に貴重な機会になりました。2日間ありがとうございました。

2. オンライン対話鑑賞について

Q11-12

【小学校教諭】

  • 「①オープンに話す②相手の意見を否定しない③作品以外の情報は見ない」という約束のもと、みなさんと多様な意見を出し合い、「みんなで絵を鑑賞すると、新しい気付きや価値が見えてくる」ことを体験することができました。ファシリテーターの方が対話鑑賞をする際に気をつけていらっしゃることや、鑑賞の後で作品情報をどの程度伝えるかなど、様々なポイントを教えていただきました。今後の鑑賞の授業や美術館での鑑賞教室の際に生かしていきたいと思いました。
  • 気軽に美術館の作品を鑑賞し、皆で同じ視点で協議をすることがオンライン対話鑑賞のよいところだと感じた。授業の導入部分で取り入れると効果があると思う。問題点としては、同じ視点で協議をすることで共通認識はしやすくなるが、逆をいえば見方が単一となり、するどい指摘や思いがけない意見は出にくいと思った。実物を様々な角度から見て、素材やその場の雰囲気やにおいを感じながらの対話鑑賞の大切さを改めて感じた。

【中学校教諭】

  • オンラインでどのくらいのことが、どのようにしてできるのかということが実感できた研修内容だった。画像も思ったよりも高画質で、作品の細かいところまで鑑賞することができた。残念ながら、生の作品を目の当たりにして鑑賞する独特の臨場感は味わえなかったが、頻繁に美術館に行くことが難しい現場の状況を考えると、オンラインでの対話鑑賞の需要がますます広がるだろうと感じた。
  • 想像していた以上にオンラインで多くの声が交わされること、交わしやすいことに驚きました。そして、何かしら自分も発信したくなりました。また、発表者の表情が画面越しに対面的に見えるということも、共感や同調、思いの伝わりやすさに繋がるのではないかと思います。作品の一部を大きくしてみたり、視点を動かしてみることが出来る鑑賞素材BOXの活用は、各々がじっくりと作品に向き合い、その世界に入ることができ、イメージや感じ方を深めながら他者の意見を聞いて作品を改めて見ることや、新たな発見に繋がるといったことが実感としてありました。様々な情報を視覚的に参加者が同時に見られることも利点です。どの情報をどのタイミングで活用するのか、 表現と鑑賞をどのように結びつけるのか、授業構成の広がりも感じました。

【高等学校教諭】

  • 自分が久しぶりに生徒の立場になって実りのある体験をさせていただきました。 早速、学校現場で対話鑑賞をしたくなりました。人の意見を否定しない鑑賞のルールがとても気に入りました。学校では、どうしても生徒の力関係などが発生して、ひとつの意見が突き進んでしまうことがあります。沢山の意見、物の見方、多様性がどの世界にも尊重されたら人はもっと自由になれるのに……と思いました。
  • やはり現地で実物の絵を前にしての対話鑑賞には敵わないとの思いが拭いきれないのですが、今後また休校期間があるかもしれないので、オンライン授業で鑑賞実施を念頭に方法や切り口を得られたのは収穫大でした。距離を超えても意見交換ができる、思いを共有できるこのかたちは、例えば他校の生徒と鑑賞を共にすることも可能だと思いました。時差がありますが、いずれは他国の生徒や現地日本人学校の生徒と共有も可能かもしれません。

【指導主事】

  • 自分ひとりでは、感じられなかった見方・考え方を同じグループの方から学ばせていただくことができました。参加人数分だけ見方・考え方があり、なるほどと思うことや、自分とは違う視点からの意見を聞き、その視点から見てみようと思えたことは、大きな学びのひとつでした。今回実感し体験させていただいたことを、少しでも県内の先生方へお伝えすることができるように考えていきたいです。
  • 対話型鑑賞の体験では、オンラインでの可能性を感じることができました。今年度「彫刻作品をweb会議システムで映し出し対話型鑑賞を行ない、その可能性を探る」対話型鑑賞をオンラインで行なう研修をしたのですが、解像度、やりとりの問題等、課題が多く出てきました。今回体験した「鑑賞素材BOX」を用いた鑑賞では、オンラインによる鑑賞学習の可能性を感じることができました。県立美術館ともこの可能性を共有しつつ、県下の学校と美術館をつなぐ役割を所属機関が担えるよう、その手立てを考えていきたいと思います。

【学芸員】

  • これまで対話鑑賞を実際に体験したことがなかったのですが、とても楽しくワクワクしました。アートカードを使って自分の思ったことをオープンに話すことができたり、また他の方の意見を聞くこともできたり、同じ作品を鑑賞しても意見や感想が違うことに気づかされました。美術館ではどうしてもキャプションをすぐ見る癖がついているので、まずは作品以外の情報は見ないことも大切だと感じました。
  • オンラインでの鑑賞は展示室で共有するよりも1枚の絵に集中しやすく、自由に拡大して見ることもできるので、「展覧会に行けないことの代替」ではなく、別の鑑賞機会、プログラムとしての活用が考えられると思った。オンラインと展覧会で実際に見ることを併用することで可能性が広がることが実感できた。ICTを使用した鑑賞について、より具体的な説明や活用方法を学べる機会があれば改めて参加したい。

3. グループワークについて

Q07

【小学校教諭】

  • 2グループに分れて、鑑賞作品の質問と返答をする形式が楽しかったです。対象者を考慮し、質問の順序を工夫するなど、同じグループで意見を出し合い決定したことは実際の授業でも役立つと感じました。返答する側としては、紙に書いて大喜利のように答えたことも楽しく、オンラインならではかと思いました。授業でも使えるテクニックだと思います。各グループで様々な方法で研修していたのには驚きました。
  • 鑑賞素材BOXを実際に活用する事例を考えることで、イメージした授業風景をすぐに形に残すことができた。また、幅広い立場の方々の意見をいただいたり、他の方々の考えた事例を聞くことができたりしたため、自分にはなかった考え方やアイデアを吸収でき、自分の中の図工の鑑賞の指導に関する世界観が広がったように感じられた。
  • 美術館を活用した鑑賞の学習を進めるにあたり、美術館での学習の事前・事後全体を通しての指導計画を立てました。1日美術館に行くだけで学習が終始するのではなく、学校の授業の中で「作品を見てみたい!」という思いを子供たちから引き出したり、美術館で鑑賞したことを表現に生かしたり、学校と美術館が連携して、広い視点で鑑賞の学習を進めていくことの大切さに気付くことができました。
  • ファシリテーターを中心に、互いの考えをそれぞれの立場から話し合えたのはとてもよかった。ワークシートという共通のツールを使って、自分ならどの作品でどのように指導したいかを問われることで、鑑賞教育がより現実的で、有用的に感じられたこともよかった。指導者側が何をどう伝え、子供たちに何を感じ、何をさせたいのかを明確にすることで、子供たちには美術作品がより身近に感じられるのだと学んだ。

【中学校教諭】

  • 鑑賞素材BOXの作品をひとつ使った授業プランを考えて共有するというグループワークは、対象学年やねらい、美術館との連携などの視点がきちんと位置づいていたので、実践的で大変よかったと思います。学芸員の専門性が生かされているプランもあり、美術館の学芸員さんと連携する価値を再認識することができました。
  • 鑑賞素材BOXの活用方法を知ることができてよかったです。ひとつの作品を拡大縮小したり、様々な作品をじっくり見ることで今まで気づかなかった点にも気づくことができると思います。グループワーク内で互いに感想を言い合った際には、そこから新しい展開も見つけることができました。また、ワークシートのキャラクターウェブに似たようなものでの鑑賞は過去に実施したことがありましたが、そこから詩を作ったり、物語を作る活動は今後ぜひ取り入れていきたいと感じています。作品を様々な方法で鑑賞し、より理解を深める手立てになると感じました。

【高等学校教諭】

  • 私たち教員の立場としての考えと学芸員さんの立場での考えを共有できる非常に有効的な場であったと思います。日頃関わり合えない離れた地域の方との交流の場にもなって、満足しております。

【指導主事】

  • 異校種の先生や学芸員の方と鑑賞方法について考え、意見交流する貴重なグループワークとなった。自分の感じ取った作品の価値について批評し合い、自分の気付かなかった作品のよさを発見するなどして、いっそう深く鑑賞させることが重要であると感じた。
  • 意見交換ができて、様々な授業アイデアや美術館の情報を得ることができました。また実際に美術館と連携するにあたり、難しい点を挙げ、どのように克服できるのかといった前向きな話し合いとなり、研修を深めることができました。
  • 参加者には小・中・高等学校教員・学芸員・指導主事と、様々な職種・校種の方がいらっしゃり、多様な視点から意見をいただくことができ、ありがたかったです。特に学芸員の方と話したことがなかったので、美術館での鑑賞教育は、絵画との出会いだけでなく、学芸員のみなさまとの出会いも非常に重要だと感じました。個人的にですが、学芸員の方との出会いを大切にした鑑賞教育の重要性を強く感じています。

【学芸員】

  • 実際に美術館内で常設展を鑑賞した後、その内容に沿うかたちで対話鑑賞でのメリットとデメリットを話しあえて、とても参考になりました。また今後の課題として、オンラインで見た作品の本物を見たくなるような働きかけについて、先生の立場からの意見交換もできて良かったです。
  • 学校教員の方の他教科を横断したさまざまな視点がとても参考になった。ひとつの作品から、いろんな方面へと話や学びの内容が展開できることを実感できてよかった。

4. グループワークの経験を今後どのように生かしたいと思いますか?

【小学校教諭】

  • 自分が現在進めている小学校図工での鑑賞教育に関する指導において、考えた実践事例をそのまま授業としてやってみたい。また他の方々の考えられた実践アイデアも試してみたい。
  • 校内現職教育でオンライン鑑賞の仕方を紹介したり、地区の造形部会で対話型鑑賞の授業研究を進めたりしていきたい。また、近隣の美術館との連携をはかり、来年度の校外学習に取り入れられるか検討をしていきたい。

【中学校教諭】

  • グループワークの話し合いの中で、学校側から美術館にアプローチしていくための手立てを考えたり、諸準備にかかる時間や労力などが担当教員の負担になることも考えられるため、実際に積極的な連携が難しいと感じている人も多かったように思う。美術館と連携していくためには、学校や美術館からの働きかけだけでなく、教育委員会や教育センターなど、行政の関係機関にもパイプ役となっていただくことが必要だと感じたので、今後指導主事の先生方を通じて体制を整えてもらえるよう働きかけていきたい。
  • もっと美術館とつながる努力をしたいと思いました。また、オンライン鑑賞のメリットとデメリットについてや、本物を見たいと思わせるにはどうするかなどについて考えるのは、難しい内容でしたが、様々な立場からの意見や考えが聞けて良かったです。

【高等学校教諭】

  • 表現が主体となる授業形態だったが、もっとグループワークを活用した展開を考えようと思った。生徒が自己の意見を言う楽しみを体験したり、他者の意見に耳を傾ける姿勢をこれから育てたい。

【指導主事】

  • 美術館を活用した鑑賞教育をどのように行なっていくか、各学校の美術、図画工作担当の先生がひとりで考えるとなると「難しそう」「ちょっとよく分からないな」と二の足を踏む先生方がいらっしゃると思います。ですが、グループワークで行なったように、何校かの先生方が一緒に考えられる仕組みを作ることができればよいのではないかと考えました。
  • グループワークの中で、対話鑑賞の手法は美術に限らず他の教科、道徳や生徒指導でも使えるのではないかと意見が出ました。私も納得し、活用したいと思います。

【学芸員】

  • 見るだけが鑑賞と思われているイメージがありますが、目の前で起こっていることに対するリアクション・思考することそのものが鑑賞であり創造で、つくることと見ること感じることは分けられるものではないと思いました。今回は分析的に作品をじっくり見る作業が主でしたが、鑑賞のあり方も様々あっていいと思いました。 また小中高校生には発達段階に応じて身につけさせたいものがあるということですので、学校対応の際には先生方と打ち合わせてすり合わせる必要があると思いました。
  • 美術館見学を一過性のものに終わらせるのではなく、学校の先生の要望をよく聞いて、学校教育の一環として取り組んでいただけるように鑑賞プログラムの工夫をしたいと思った。
  • いままでは「見る」ことそのものに重きを置いていましたが、情報提供も内容やタイミング次第で効果的であることがわかりました。鑑賞の授業だけでなく、一般の方向けのギャラリートークにも生かしていきたいです。

5. 事例紹介について

Q10

【小学校教諭】

  • 美術館とのコラボを企画してみたいが、スタッフの数や互いの年間計画の都合により、実現させるには労力がいることが分かった。しかし、誰かがやらないと実現できない。企画を美術館に丸投げにせず、身に付けさせたい資質能力を明らかにしたうえで、提案してみたい。互いに忙しいけれど、目指すところは同じということも分かった。
  • ①学校から美術館へのアプローチの強い事例(鹿児島の中学校)②美術館のプログラムがしっかりと確立されている事例(写真美術館)③学校と美術館のどちらも理解している方がいて連携している事例(浜松)、それぞれの良さを感じました。単発にならず、長期的な取り組みになるようにするためには、誰でも・いつでも・気楽に美術館を活用できた方が良いと思いました。そのためには、お互いの連携が不可欠だと感じています。

【中学校教諭】

  • とても魅力的で素敵な事例がたくさんあり、ワクワクしながら聞かせていただきました。ただ、実際にあそこまで自分でやるとなったら膨大な時間を企画と準備にあてる必要があると思うので、まずできることからチャレンジしてみたいと思いました。
  • 東京都写真美術館と連携して行なわれた活動がとても印象的だった。特に青写真や布を展示した様子が、とても美しく素晴らしかった。写真美術館とコラボして行なわれた鑑賞活動から、子供たちが自分の表現につなげ、そしてその子供たちが制作した(表現した)作品を、また違う形の鑑賞の場に還元していく様子に、まさに表現と鑑賞が相互に関わり合っていることが実感できる事例だったと思う。また、色と形と言葉のカードが非常に興味深く、ぜひ活用してみたいと感じた。
  • 東京都写真美術館の実践、とても参考になりました。「色と形と言葉のゲーム」は、幼児教育や特別支援教育でも活用ができる言語感覚育成のすばらしいツールだと感じました。島口さんの熱意ある実践は大変すばらしいと思いました。学校現場と美術館とをつなげられる存在が増えていくことを願っていますし、自分もその一端を担えるように努力したいと感じました。

【高等学校教諭】

  • 東京都写真美術館のカードが大変良いと思った。様々な感じ方、考え方があることを知る機会として活用したい。また、自由に感じたことを話せる環境があることが良い。事例発表では、先生方が外部との連携を楽しんでおり、その楽しさが児童生徒に伝わっているのだと思いました。ぜひ参考にしたい。

【指導主事】

  • どの事例も興味深く、参考にさせていただきたいことが多くありました。教員だった方が学芸員の立場で、美術や図画工作の授業をどう連携して行なえばよいのか、両方のことが分かって取り組まれているのでとても説得力がありました。本県の美術館等の実情を把握し、何かしら紹介や提案ができることはないか考えていきたいと思いました。
  • 先生方の取り組みを知ることができ有意義でした。美術館との連携には学校にとっては気軽にできるものではなく、特に地理的条件が大きな壁です。しかし事例にあったように今後ICT機器の整備が学校園で進めば、さらに多くの学校園で連携の可能性が広がるように感じました。

【学芸員】

  • 連携した取り組みは、単発になりがちであったり、学校からの要望にこたえる形が多く、展示内容や企画に合わせる形も多いかと思う。校種や発達段階に応じた連携の全体像を描いた、先進性のある取り組みを知りたいと感じた。
  • 教員と学芸員双方の経験、視点から具体的な取り組みを知ることができたのはたいへん参考になった。美術鑑賞に熱意のある教員ひとりが奮闘している印象を受けたので、教員の異動によって途絶えたり、後任者にうまく引き継げないといった課題も感じた。鑑賞の機会が単発のイベントにならないように、美術館側もノウハウを蓄積し、双方向に補完しあいながら長く続けていけるような関係を築くことも視野に入れて取り組みたいと思った。
  • 事例発表を聞いて、明日から大切にしたいと思ったのは「学校との丁寧な打ち合わせ」である。発表の中にもあったが、受け入れる側として、子供たちの実態や目的、先生が求めている効果等を事前に確認しておくことが、活動の質や子供たちの学びの質に大きく関わると感じた。また、ねらいや目的に合わせて内容をカスタマイズできる自身の力量アップや、学校の先生方が活用したくなる教育普及プログラムの開発、学校にプログラム情報を分かりやすく提供するための工夫等も意識して取り組んでいきたい。学校側、美術館側それぞれの立場からの率直な成果や課題を聞くことができ、自身の日々の実践と照らし合わせたり、振り返ったりしながら学びを深めることができた。

6. 講演について

Q23-24

【小学校教諭】

  • 平田先生は、図工の鑑賞活動について研究していくきっかけとなった恩師の先生であったため、久しぶりにお声が聞けてとてもうれしかったです。備前焼の鑑賞に関する実践事例を聞いたので、今後はぜひ地域の作家の方や美術館等とも連携をして、鑑賞活動をしてみたいと思います。
  • 私自身は小学校教諭なので、中学校の学習指導要領を中心として、これからの鑑賞教育についてお話して頂いたことで、小学校の時にどのような資質・能力を育んでいくことが大切か、それが中学校へどのようにつながっていくかを意識することができました。また、本物を見たり触れたりすることが大切な図画工作科や美術科において、題材のねらいに応じてICTを活用する場面・題材を吟味し、効果的に活用することの大切さも学ぶことができました。
  • 「虚と実から考える美術と鑑賞」は内容的に難しかったですが、非常に興味深かったです。美術は「虚」だからこそ意味があるということには、考えさせられました。また、そこから知識の学びの必要性も感じました。
  • 2つの講演とも分かりやすく、考えさせられるものでした。神野先生の講演は、聞き終わった後に、図画工作科や美術教育とは何かを自問自答するきっかけになりました。

【中学校教諭】

  • これまでの自分の授業を振り返ってみたとき、神野先生のお話にあった「意味生成の学び」と「文化の学び」をそれぞれ別に扱ってきたつもりでいましたが、どこか一緒くたにしてしまっていたのではないかと再確認できました。「虚だからこそ意味がある」。その移ろいゆく中にどのような背景があり、思いがあり、挑戦があり、今ここに存在としてあるのか、それが自分の内と外にどのような影響をもたらすのか……鑑賞の深さを感じます。だからこそ大切で、表現と密であることも改めて感じました。
  • 美術教育と認知心理学を織り交ぜてお話くださったことがとても有り難かった。一次意識、二次意識の話など……特別支援教育、支援教育などの視座にかかる部分もあり、もう少し深く先生のお話を聞いてみたいと思いました!

【高等学校教諭】

  • 平田先生の講演を受け、次年度の新学習指導要領にむけてICTの効果的な活用を見直せました。ありがとうございました。神野先生の講演からは、悩んでいた点を明確に教えて頂けました。作品を感覚的に観ることと、作品の歴史や技法などを学び観ることの視点の違いなど、今後の鑑賞でよく見直しながら題材を設定していきたい。

【指導主事】

  • 平田調査官には、具体的に学習指導要領を示しながら分かりやすくご講話いただき、これからの鑑賞教育について考えることができました。神野先生の①鑑賞教育の基本的な枠組みの理解、②虚と実から考える美術と鑑賞というお話を伺い、新しい知識を得ることの喜びを感じさせていただきました。また、そのお話に入られる前の『最後の教育課程である大学で、大学生を対象とした「図工/美術」を実践している意識』というお言葉が心に残っています。小学校、中学校で行なっている「図工/美術」の授業は、目の前の子供の将来につながっているのだという意識を常にもち、生涯にわたって美術を愛好することができるように先を見据えて行なっていかなくてはいけないと改めて思いました。貴重なご講話を拝聴できたことに感謝申し上げます。

【学芸員】

  • 平田調査官のご講演は、鑑賞教育で大切にすべきことについて学習指導要領を基に具体的な事例を通してお話しいただき、とても分かりやすかった。学校と連携する側として、その授業を通してどのような資質・能力の育成をめざすのかをしっかりと共有した上で、一番効果的な連携のあり方を考え、工夫していきたいと思った。 神野先生のご講演にあった「作品を見る経験と学びをどう共有するか」は、自分自身が日々子供たちと鑑賞をする中で、もやもやしていたことだったため、そこに切り込んでいただき大変勉強になった。頂いた資料の中に、「子供たちが自分の眼で見出したもの、感じたことを出発点として、そこでどのような知識・視点を与えることで、その価値を理解することができるか、それが文化の学びとしての鑑賞教育のプログラムをデザインする上で重要」という言葉は、これからも心に留め実践に生かしていきたい。
  • 神野先生のお話の中で、意味生成の学びと文化の学びを取り上げられていましたが、まさに鑑賞と展示の関係性にも似るものと感じました。自己と他者の意見を組み合わせることで、その先に何ができるか(起こるのか)は、美術館活動のいずれの場面でも重要だと再認識しました。
  • 平田先生のお話は学校側で鑑賞に関する考え方がどう変化してきたかがわかり、今後美術館から学校にワークショップ案などを提案する際に参考になると感じました。神野先生のお話は、時として鑑賞事業をやることが目的となり、その先を考える余裕がなくなってしまう現場の状況を振り返り、美術鑑賞を通じて何を目指すのか、美術の社会的な役割とは何かといったことについても思いを巡らせる機会となりました。

7. オンライン研修について

Q23-24

【小学校教諭】

  • Zoomによるこのような大規模な研修は初めてだったが、綿密な下準備やZoomの機能を最大限に活用したプログラムに感動の連続だった。北海道から沖縄まで全国各地の方々と時間を共有できた経験は、オンラインの素晴らしさだと実感できた。「美術館を活用した鑑賞教育の充実のための研修」だったが、オンライン研修の可能性も同時に研修させていただき、倍の収穫となったと感じている。

【中学校教諭】

  • 職場を空けて2日間県外へ出るというのは、それなりの覚悟が必要になります。コロナ禍ということもあり、参集したはよいが自宅待機という自体は大変苦しい状況です。今回のようにオンラインにしていただけたことで、時間や費用、感染リスクなどを心配することなく、研修に集中できたことは私にとっては大変ありがたいことでした。Zoomを使った研修で、ブレイクアウトルームやチャットなどの機能も使いながら、参加者が満足できる研修を工夫して企画し、ご準備くださったことに心から感謝申し上げます。次年度は参集による研修も実現するかもしれませんが、オンラインでも参加できるハイブリッドな形もご検討いただけると、より参加しやすいのではないでしょうか。
  • オンラインでも十分に研修内容についていくことができた。 学期末で忙しい時期に移動時間を割かずに参加できる事は非常にありがたかった。しかしやはり実際に 講師の先生や参加者の方々とお会いしたり、作品に触れる機会があればより充実するのであろうとも感じた。
  • 実際に伺って研修を受けることも大変意義深いと思いますし、地元にいながら全国の研修会に参加できるのもとても有意義だと感じます。今後も状況次第で組み合わせた研修会を実施していただけたらありがたいです。
  • オンラインだからこそ、鑑賞素材BOXの活用やオンライン対話研修の面白さも知ることができたように思います。学校ならこういう風に取り入れることができるかもなど、色々な方法を考えるきっかけにもなりました。ただ、やはり実際の美術館に行きたいという気持ちもより強くなりました。

【高等学校教諭】

  • 自宅で通信速度やつながりが悪く、安定するまで時間がかかってしまった。平日ならば職場でオンライン研修を受講しやすい環境があるので、今後オンライン研修をする際は平日だとありがたいと思いました。

【指導主事】

  • 工夫して研修を進めてくださり感謝しております。画面を通して工芸品を見ることができ、迫力と魅力は伝わりました。ズームアップして、見てほしいポイントをじっくり見る等です。すばらしかっただけに、できれば実際に美術館を訪れて鑑賞しながら学びたかったという思いはぬぐえませんでしたが、バスを借りて生徒を移動させることが厳しいコロナ禍や美術館が近くにない地域でも、このように鑑賞教育ができるのだと示していただけ、教師のやる気が大切だと改めて感じました。
  • オンライン研修は移動距離や時間を考えると、とてもよいと思います。ただ、対話鑑賞などは、対面のほうがより効果的だと思いました。

【学芸員】

  • 工夫された日程の中で、オンラインでも十分な学びがあった。個人的には、「美術館を活用した鑑賞教育の充実」を考える時に、やはり実際に美術館という環境に身をおいて研修を受けたかったという思いはある。
  • 職場から受けられるため、研修前後に仕事ができて、時間が有効に使えたと思います。企画される側の方は、準備が大変だと思いますが、コロナ後もこの方式はうれしいです。

8. あなたの地域での鑑賞教育の現状について教えてください。
  また、研修の経験を現場でどのように生かしたいですか?

Q27
Q23
Q25
Q26

【小学校教諭】

  • 対話型鑑賞を実践されている先生方はいますが、図画工作科・美術科担当の先生が中心という現状はあります。「図画工作科や美術科が専門性が高く敷居が高い。よくわからない」と抵抗感がある先生もいるようです。私は対話型鑑賞の「どの考えも認める」「多様な考えがあってよい」というところは子供の自己肯定感を高めたり、自信をもって自分の考えを発信したりすることにも繋がるので、教科の専門性は関係なく、子供に関わる全ての先生に実践してもらいたいという思いがあります。また子供の考えや言葉を引き出したり、つなげたりする技術を体験することで学ぶことができると思うので、まずは校内の先生方に研修や研究授業などで自分自身が実践をして広めていきたいです。
  • 鑑賞教育を広める美術の先生が少ないこと。美術館を活用しての鑑賞教育を知らない先生方や学校が多いと思います。児童生徒の可能性を広げるものであることを周知して、実践されるよう働きかけたいです。
  • 近くに美術館がないこと、その他の行事がたくさんあること、金銭面の問題、授業時間数の問題などを含め、実際に美術館に行って学ぶことや、制作ではなく鑑賞に力を入れて学習を組み立てるのは非常に難しいです。また、専科制ではなく学級担任が全教科の準備を行なっているため、これだけの準備は物理的に不可能に近いと感じました。興味関心のある教員がここで学んだ要素を少しでも取り入れるということが現実的かと思います。自分の思いや考えを伝える対話型鑑賞や色と形と言葉のゲームなどは、美術に限らず全ての教科において有効だと感じました。実際に取り組めたらと思います。また、鑑賞素材BOXにある作品を児童に見せるなど、環境整備を意識して「本物を見たい」と思える働きかけをしてきたいと思いました。

【中学校教諭】

  • 地域の教育会の研究会に美術館関係者が参加してくださっているので、美術館とは連携しやすいです。美術館同士の横のネットワークもあり、複数の美術館の学芸員さんや美術館ボランティアさんが授業に入ってくださったり、出前美術館のように本物の作品や複製画などを持参して授業をしてくださる活動が何年も前から行なわれています。現在、勤務している学校は山間の小規模校で美術館へ行くことが難しいので、オンラインによる鑑賞授業をさらにやっていきたいと考えています。
  • 私の所属する美術館では、これまで教育普及グループと市美術科職員との連携研究として美術館コレクションを活用した授業づくりを毎年行なっていました。授業案は毎年3つほど検討・提示されており、活発に行われていると感じます。今月中にも美術館コレクションを活用した授業づくり研究会についてのオンライン研修があり、参加予定です。今回の研修で美術館連携に対する考え方が私の中でかなり変容しました。この思いをこれからの授業づくりにおいて生かして行きたいと考えます。
  • 学校に美術の教員が1名しかおらず、美術科として美術の授業時間の中で各クラス実施していくには時間割の編成上難しいこと、校外学習で学年で美術館に行く場合も人数面でのハードルがある。しかし、実際に美術館と事前の打ち合わせで学校の現状を伝える中で実現可能な方法があることを今回の研修で知ることができたので、学校現場で提案していきたい。
  • 今年は新型コロナのために実施できなかったが、例年夏休みに、地域の小中学校の先生方で美術館研修を行なっています。ただし展覧会を鑑賞して意見交換をする程度なので、今回の対話型鑑賞を研修の中に入れてもいいのではないかと思いました。実技研修や鑑賞授業の提案などの研修も、その時の先生方のニーズに応じて行なっているので、今度そのような研修がある場合は、私からも提案していきたいと思います。

【高等学校教諭】

  • 教員の基礎研修で対話型鑑賞を行なった。早速授業で対話型鑑賞を行ないたいと思う。さらにこの研修で感じたことは、生徒の言語能力を向上させたいということ。今後社会に出ていくにあたって必要な力だが、身に付けられずに卒業していく生徒も多くいる。そのために対話鑑賞は非常に有効と考える。

【指導主事】

  • 授業時数の確保が重視される中、1日または半日での美術館訪問等は厳しい状況がある。バスを貸し切るにも予算との関係もある。しかし、オンラインでは県内だけでなく、県外の美術館の学芸員からもお話をいただけることが分かった。とくにコロナ禍の今は、このような方法で視野を広げ、鑑賞教育を通して生徒の良さを伸ばしたい。

【学芸員】

  • 自身の職場でも地域の小学生の受け入れ、出前事業を行なっている。課題として、学校団体は大人数で他の施設での活動も盛り込みながら来館するため、少人数でじっくりと内容を深めるといった鑑賞教育が行ないにくいことや、学芸課と学校団体受け入れ課が分かれているために生じる難しさがある。学校団体との連携において、教育目的を共有することが重要だと学んだ。職場ではその部分を強化できるような働きかけをまずは行ないたい。
  • 当館での活動として、学校団体鑑賞の受け入れや、学校出前授業プログラムでカードゲームを使った鑑賞教育を実施している。また、学芸員が講師を務め、先生を対象とした研修も年1回行なっているが、美術館内の人を対象とした研修がないため、今回の研修に参加させていただき大変よかった。今回の研修で学んだことを自分の中でしっかり咀嚼して、美術館での鑑賞プログラムについてもう一歩踏み込んだものをつくれるようにしたい。
  • 地域ではなく所属館で言えば、積極的な鑑賞教育が行なわれていないのが現状です。鑑賞教育には消極的な考え方だと思います。ただ、今回研修で学んだ対話鑑賞と当館の理念は矛盾するものではなく、むしろ直観力を養うための手法であり、特にデジタルネイティヴで生きているこれからの子供たちを積極的に迎えて対話鑑賞を試みたいと思いました。プログラムを組んで、ひとつの選ばれた作品の前に座り、皆で対話をしていく形式ではなくても、自然発生的に対話鑑賞をするというのもありなのかな? などと考えています。幸い、毎年必ず5年生になると当館を訪問してくれる小学校があるので、現場の先生とそうした話もしてみたいと思います。