アンケート集計
美術館/学校と連携した鑑賞教育のうち特に、
③鑑賞が子どもの日常生活に与えた影響のエピソードなどについて
小学校教諭
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- 特に色の美しさ、大きさの対比の表現などに気付き、別の題材の授業でデジカメの撮影の仕方を工夫することができた。4年生の児童が彩色表現が多様になった。ぼかし、陰、にじみなど自分で工夫をして表し、教科書の表紙に選ばれた。(新潟県)
- 校内に桜台美術館を設けており、そこで鑑賞教育を日常的に行っている。また、地域の美術館とも連携をし展開を試みている。継続して取り組むことによって子どもたちは、自然体で受け止め学んでいるように感じている。(神奈川県)
- グループでストーリーを考えたり、子どもたちの身近にある材料を使い、遠近法や体を使ったの表現を楽しんだりする。アーティストの作品を鑑賞したり、触れあったりしながら作品制作をすることで、自分たちも現代アーティストになったつもりで活動している様子があった。そのときの子どもたちの様子を見て、こういった実践にまたチャレンジしてみたくなった。(東京都)
- ボーダレスアートNO-MAという美術館が市内にあり、企画展のたびにチラシを届けて下さるので、家から美術館に出かける子どもが何人かいた。澤田真一さんの作品を見た子どもが感激し、普段作文を書くのを嫌がるのに、5枚分もお礼のお手紙を書いた。その中に「ぼくの将来の夢が一つ増えました。芸術家です。澤田さんみたいなすごい作品を作れるようになりたいです」という文章があった。本物の持つ力ってすごいなと思った。(滋賀県)
- 初めて子どもらをつれていったときの子どもたちがわすれられません。普段やんちゃな子たちが、なんと真剣に作品に見入り、模写し、普段なら描いていても、もう終わったとすぐにあきらめていた子が、先生裏にも描いていいですか?と質問に。もちろんいいよと答えると満面の笑みでガッツポーズ。油絵の盛り上がりに気づき、退館後、友だちに熱く語る姿。連れてきてよかったーとつくづく思いました。教室後ろの掲示板を利用して、何人かでいろんな作品を見つけては模写した模写美術館が勝手に出来上がっているときには、ほんとうにびっくりしました。本物はやっぱり本物なんだと思います。(大阪府)
- 敷居の高かった美術館に、保護者に働きかけて自ら足を運ぶ子どもが増えた。(兵庫県)
- 美術館にふれあったことのなかった児童が雰囲気を感じとり、共同作品製作や友だちの作品のよさを見つけあった。(福岡県)
中学校教諭
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- 美唄アルテピアッツア見学研修、安田侃氏の彫刻作品に触れて、乗っかってじかに体験できたことが親しみを得るきっかけとなった。その後、別の場所で設置されている本人の作品にも興味をもったようだ。(北海道)
- 見ることの理解を深め、対象を観察する意義を反芻しながら、コミュニケーションのスキルを向上させている。(宮城県)
- 美術館の1時間だけでは大きな変化はありませんが、校内での鑑賞、掲示を充実させることにより、子どもだけでなく、他教科の教師も美術好きに変容していきました。(宮城県)
- 感想(直接の言葉や記述)から、本物の作品のもつ力を感じ取った生徒や保護者がたくさんいたことがわかった。(群馬県)
- 旅行の際に子どものリクエストで美術館に寄り、家族で美術鑑賞を行った。(静岡県)
- 子どもたちが実際に足を運んで直接、生の作品を鑑賞する機会はあまりなかったのですが、学校から引率して鑑賞する機会をつくったことで、美術館の敷居が低くなり、家族などと見に行くきっかけになりました。 特別支援学級の生徒は自分自身で制作することに満足するだけでなく、鑑賞の時間も楽しみにしています。北斎などの教科書に載っているような作品は日常生活で目にすることも多く、親しみをもって楽しく鑑賞することができました。さらに保護者の方に、鑑賞したことや、作家名、作品名を説明することができました。保護者の方は、名画を知って話すわが子の様子を見て、「教養を身につけることができてよかった」と喜んでいただくことができました。美術館のアートカードはゲーム感覚で美術作品と日常生活を結ぶことに役立つツールだと思います。(愛知県)
- 一度本物が見てみたいという感想を述べる生徒が多い。美術館への興味関心を持つ。(滋賀県)
- 鑑賞授業の影響かどうかはわからないが、校内の展示作品の前で足を止めたり、作品について友だちと話す姿が見られるようになった。(香川県)
- 郷土の作家なので美術館で鑑賞する機会が多い。美術館へ行きたいと答える生徒が多くなった。(大分県)
学芸員
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- 学校の授業の一環で、当館に来館し絵画鑑賞教室を体験した児童が、数ヶ月後、当館で開催した別のイベントに、親子で参加されました。イベント終了後、帰ろうとする母親に対して、自分が絵画鑑賞教室のときに好きになった絵を母親にぜひ見てほしいと、母親の手を引いて、嬉しそうに展示室へ入っていきました。児童が見せたかった作品は、当館のシンボル的な作品で、常時展示してあったため、もう一度親子で作品を楽しむことができました。(栃木県)
- 何度も見学にきている子どもは(少し得意げに)以前見た作品との比較をしながら鑑賞していた。その他、市内であっても学校の規模・距離的に美術館を訪れることが難しい小中学校があるので、明治・大正期に活躍した作家の鉛筆デッサン、水彩画100点余りを学校教材用に貸し出して活用できるようにした。(千葉県)
- 団体鑑賞で当館を活用していただいた小学校5年生・女子が、一週間後の日曜日、ご両親と再び来館してくれました。ご両親から次の話しがありました。「1週間前に学校から団体鑑賞で美術館に来ました。その日、学校から帰って来た娘が『お父さん、お母さん、今度の日曜日に東京富士美術館に連れて行って、おもしろい絵があったよ。私が説明してあげるね。』というのです。この子はこれまで、こんな事を言う子ではなかったので、本当に驚きました。それで、私たちも嬉しくなって、時間をつくってきました。子どもも上手に絵の説明をしてくれました。このような切っ掛けを作っていただいた学校と美術館に感謝しております。(東京都)
- 普段の授業では発言しない子が、対話型鑑賞で作品について語る姿が見られるとの話は、実践校の先生方から、時々出ている。(石川県)
- 授業や学校生活外の日常生活中に、作品を観るという行為が子どもたちの中に自然と組み込まれており、それを積極的に話してくれた。その経験をふまえ、次の鑑賞につないでいっている様子がうかがえた。(長野県)
- 印象派などの西洋絵画にしか興味のなかった生徒が、日本美術のよさを実感し、本物を見るために美術館に来館した。(静岡県)
- 当美術館では、希望する小・中学校のバス送迎費用を美術館、市教委が負担する団体見学事業を開催し、見学を受け入れています。この設問の趣旨と異なるかもしれませんが、この事業を利用した学校の先生方から伺ったお話で、印象に残っているのは、「美術館や、そもそも美術というものと、今までも、この後も一生縁の無いかもしれない家庭環境の子どもたちがいます。だから、今のこの機会に出会わせてあげたいと思ったのです。」という言葉です。予算の厳しい状況ですが、一人でも多くの子どもさんに、美術との出会いが叶うように、事業を続けていけるように寄与したいと思いました。(福岡県)
- 体験の最後には、美術館のオリジナル絵葉書を1人2枚ずつ好きな絵柄を選んでもらってプレゼントしています。そのうち、1枚には家族にあてて、美術館での体験内容を伝える手紙を書いてもらい、学校から美術館に一度預けてもらって、館内でのパネル展示に活用させていただいております(活用後は返却)。中には、別の日にスケッブックを持参してスケッチしていた子も過去にはおられました。また、友人同士で来館したり、中学生になってから職場体験の際に、6年生の時に来館した時のことを教えてくれる子もおられました。(大阪府)
- 子どもたちが再度来館して親に説明をしていた。(京都府)
- 中学生による一般のひとたちへのワークショップ指導を実施したところ、中学生から教える楽しさということを感想としてもらった。教える楽しさというものは美術にかぎるものではないが、作品を通して共感するということが一層心に残る体験となったのだろうと感じでいる。(兵庫県)
- 事後のアンケートから。作品(作家)に対する見方が変わった/美術館の見方が変わった/(絵を見た後に)自分でも描いてみたいと思った/今度は家族と一緒に行きたいと思った/絵を大切にしたいと思った、など。おおむね美術館での鑑賞授業は好評であるが、子どものその後の日常生活にどんな影響を与えたかについては情報が無いのでわからない。先生へのアンケートが必要だと思った。(広島県)
- ある小学校一年生の子どもたちが、抽象表現の作家の企画展会場で鑑賞授業を行った。担任がファシリテーターとなり、2時間、展覧会会場で見えたものについてお話を作ったり、友だちと話し合ったりした子どもたちは抽象的な表現について何の抵抗感も持たず、抽象的な表現を楽しむようになったとのこと。担任が替わり、二年生となった初めての教室で、担任が「イスや机に貼る名札シールの周囲に、好きな絵を描いていいよ。」と言うと、子どもたちの中には、具体的な物を描かず色を重ねたり、模様のようなものを描く姿が見られた。キャラクターや好きな物を描くと思っていた担任が不思議に思って尋ねると、一年生の時に鑑賞した企画展の作家の名まえを誇らしそうに応えたとのことだった。この年その作家を学校に招き、この学年に対して図工の授業を行った。(鳥取県)
- 日常生活ではないが、アートカードゲームのプレゼントゲーム(家族に一枚プレゼントする)を行った際、高学年女子児童が「鰹」の作品を選んだ。当初、グループ内で理由をなかなか発言しなかったが、最後に照れながらも「漁に行っているお父さんに」と一言。子どもにとって実経験と当館での鑑賞が完全に一致した瞬間であった。子どもの頃、鑑賞した当館所蔵の彫刻作品に心揺さぶられ、忘れられず、どうしても同じ場所で働きたいと願った者が現在、大人となり、念願かなってスタッフとして業務にあたっている。(宮崎県)
- 鑑賞活動が、日常生活に影響しているかは分かりませんが、鑑賞活動と人間関係との関連性についての話をするように心がけている。(宮崎県)
指導主事
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- 公費で購入した教材の図版を、授業で使うだけでなく図工室にも常設した。子どもたちは授業で鑑賞した作品を見て「これ、見たことある。」と言いながら、「これは知らんけど…。」などと他の作品にも目を向けていた。(滋賀県)
その他
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- 東日本大震災後、子どもの日常生活の出来事が鑑賞時に吐露されることが度々あり、考えさせられた。八戸市内の小学校で出前講座を行った際、津波を目撃していた子どもたちの心の重さが、ギャラリートークが進むにつれて吐露され、精神的ケアにおける絵画鑑賞という観点もありえると思った。(青森県)
- 子どもたちは作品のみではなく、美術館という場や、学芸員という人などにも意外な関心を示す。美術のみでなく、大きく社会勉強(総合学習)としての側面があることに注意が必要であると思う。(東京都)
- 美術館での鑑賞教育が初めての子どもたち(中学1年生)だったので、美術館での鑑賞の仕方といった基本的なマナーから学んだ。多くの子どもたちにとって、美術館は日常生活であまり関わる機会のない場所だが、活動後のアンケートでは楽しかったという意見が多く、美術館という場所を良いイメージで捉えることができていたように感じる。(石川県)