アンケート集計
美術館/学校と連携した鑑賞教育を行ったことのある方は、
その内容について簡単にお教えください
小学校教諭
-
- 教師が事前に鑑賞して、クイズ形式のワークシートを作り、帰校後に振り返りをした程度です。(青森県)
- 美術館の環境を活かした鑑賞活動:「美術館探検」として学芸員の方に案内してもらいながら、いろいろな視点で周りの環境を見つめ直す。 気に入った場所をのぞき見る事が出来るフレームを設置し、互いに見合う。友達のおすすめの場所を探しながら、再度美術館探検を行い、友達がどんなことに心を引かれたのかを感じ取る。初めは見慣れない環境に興味の向くままフレームを置いていた児童だったが、何カ所も探したり、互いに見合ったりしていくうちに、見る目が研ぎ澄まされていくのがわかった。それと同時に、いろいろな視点から見ることができるようになり、普段あまり気にとめないようなものにも美しさやおもしろさを発見する児童が出てきた。(宮城県)
- 地域に関係する作家の作品や作家紹介を、美術館のスタッフにお願いして美術館が制作した映像を用いて鑑賞を行った。図画工作科と社会科の授業を合わせた形で行ったが、資料集だけで授業を行うよりも、児童の関心を高めることができたと思う。また、美術館にある複製画も鑑賞することができ、日本画の緻密な表現を実際に見ることができて、深く印象に残すことができたと思う。(茨城県)
- 群馬県立近代美術館から、「移動美術館」として絵を中学校に5点ほど持ってきていただき、その絵についての講演をしてもらいました。身近で本物の作品を見られたことと、詳しくその作品についての説明を聞くことができたことが生徒にとって大変貴重な経験だったと思われます。また、小学校では2年前に群馬県立近代美術館勤務の先生と連携を図り、アートカードを利用した授業を行いました。小学校1年生が対象だったのですが、近代美術館にある作品を教室で楽しむことができたと思います。(群馬県)
- 東京都現代美術館のアーティスト訪問をきっかけに泉太郎さんを招いて、作品を鑑賞した後、ビデオカメラを活用した表現活動を行った。(東京都)
- 東京都図画工作研究会での研究において、東京国立近代美術館と連携。鑑賞学習と表現活動の一体化を図り、鑑賞学習を経て表現活動を行い、製作したものを持参して鑑賞学習と、2回美術館を訪れた。子どもによっては、美術館により親しみをもちポスター等に関心を持った子、作品のなかに美術館でみた作品の感じを思い出しながら表現する子がみられた。(東京都)
- 新潟市では、新潟市美術館、新津美術館でオープンギャラリーを企画し参加校を募って実施しています。立仏小学校は、毎年この企画に参加し、毎年1学年ずつ美術館に実際に行って鑑賞活動を行っています。学校でアートカードを使った活動を事前に行い、意識を高めてから美術館に行くように計画を立てています。どちらかというと、進んで美術館に行く家庭が少ない地域なので、オープンギャラリーをきっかけに美術鑑賞に関心を持ち始める子が多くなり、良いきっかけとなっています。(新潟県)
- 美術館のスタッフと知り合いになり、出前授業をしていただけた。作品は岐阜県ゆかりの作家のもの。美術館への興味を持てた子が増えた。(岐阜県)
- H25:碧南市藤井達吉現代美術館「ベルギーの印象派展」(2年・6年異学年交流)対話鑑賞事業。碧南市藤井達吉現代美術館「彫刻家高村光太郎展」(特別支援学級)本物鑑賞授業。 H26:高浜市かわら美術館「鬼と妖怪の造形」(6年)鑑賞と表現をつないだ授業。 地元出身の彫刻家・山本眞輔氏を招いて実技鑑賞授業(5、6年)(後援:文化庁)。H27:刈谷市美術館「宮西達也展」(6年)鑑賞と読書活動をつないだ授業。地元出身の画家・田中宏治氏を招いて鑑賞と表現をつないだ授業(後援:西尾市)※H12から名古屋市美術館、愛知県美術館、名古屋ボストン美術館や地元の画廊での鑑賞実践を試み、子どもと共に楽しんできました。教頭として(研修経験者として)、H25実践は、校内で教頭が事前授業をし、美術館ではグループに分かれ、各担任の先生に対話鑑賞のファシリテーターになっていただき実践しました。(愛知県)
- 美術館と連携した取り組みはありませんが、地域にある大学の博物館と連携した取り組みはここ数年行っています。二年前には、武蔵野美術大学の学生さんやその作品の鑑賞境域の取り組みを行いました。作品を通して交流する中で思わぬ発想をする子どもたちの一面に触れることができました。(奈良県)
- 和歌山近代美術館と小学校、中学校、高校の先生方と連携して、2ヶ月に1度の土曜日を研修として開いています。内容は、夏休みの美術館のワークシートを制作したり、その生徒が書いてきたワークシートの内容について研修したり、鑑賞について研修しています。今年もワークシートについて色々な提案が出され、完成できたところです。生徒は、夏休みの宿題として美術館に行き、ワークシートを仕上げます。ワークシートも1つの作品として展示できるようなつくりになっていて楽しめる内容になっています。今は夏休みに生徒が行くだけになっていますが、いずれは学芸員の方と協力して授業作りをしていきたいです。鑑賞教育に力を入れるようになったのは美術館を活用した鑑賞教育の充実のための指導者研修のおかげだと思います。もう一度行けるなら行きたいです(和歌山県)
- 昨年度、4年生で国立国際美術館へ遠足で行きました。 事前に、アートカードを使ったゲームと、ジャン・フォートリエ展のパンフレットにある絵を鑑賞・交流をしました。 当日は、学芸員さんの美術館についてのオリエンテーションや、ワークシートを活用して鑑賞をしました。教師が予想していた以上に、現代美術の作品を子どもたちは自由に鑑賞し楽しむことができました。ワークシート、パンフレットなどを子どもの人数分いただけたのも、子どもたちが鑑賞を楽しむ手掛かりになったのだと思います。遠足に行ったことを堺市の初等教育研究会図工部の先生方にメールで報告しました。他校の先生から「今年美術館に遠足で行きます」との報告もありました。(大阪府)
- 郷土の作家が自身所蔵の作品を小学校に展示した。 一般公開、美術館学芸員によるギャラリートーク、作家による講演、全校児童の鑑賞ワークショップ、作家指導による児童の作品製作、感想文などから、子どもたちの受信力の素晴らしさを感じた。事業後に2週間程度、朝の登校後に始業までの時間を活用したワークショップブースに多くの児童が参加し、作品作りを楽しむ様子が見られた。(兵庫県)
- 兵庫県立美術館の出前授業を、4年生と参加希望の保護者で受講し、鑑賞と表現をつないだ授業を行った。作品は学芸員さんにお任せで、フロッタージュの技法を学び、コラージュして作品にした。その後、保護者といっしょに美術館に行った児童がいた。校内研究で行った国語の聞き合いの手法が、鑑賞の伝え合いに生かされ、感じたことを積極的に言葉で伝えたりよく見て考えたりすることができ、子どものすばらしさを感じた。(兵庫県)
- 高松市の研究所での研修で、高松市美術館の収蔵品を使っての鑑賞を、CD―ROMに焼きつけて、学校のコンピュータを活用した授業を行った。高松市美術館の学芸員の協力を得ながら 、CDを作る著作権のクリアに取り組んだ。作品の著作権保持者によって活用許可の制限が違い、地域教材(地元出身作家や教育経験のある作家)に焦点を絞って許可をもらうことはできないかと考えた。当時許可を得るのに理解があったと感じられたのは、地元に関わりのある藤川栄子、木村忠太、教員経験のある香月泰男の記憶が残っている。(香川県)
- 猪熊弦一郎現代美術館との連携で鑑賞教育を行っている。5年生では、鑑賞して学んだこと感じたことを、パンフレットを作って、家族に伝えようという学習を展開している。パンフレット作りはとても楽しく意欲的に取り組んでいる。(香川県)
- 以前、美術部の生徒が収蔵庫で作品を選んで展示を行うという取り組みをさせていただいた。その後、美術館にネットワークを活用してこれから行われる美術展の紹介をしていただけないかと協力をお願いしたことがあるが、「実際に来てくれないと困る」と断られた経緯がある。遠隔地での美術館の教育活用としてインターネットを通じた美術展のアピールや館員の方との連携授業などができないだろうかという希望がある。(宮崎県)
- 毎年、佐賀県立美術館で、「佐賀の子どもたちの版画展」という展覧会を開いています。これは、普段の授業で取り組んだ版画作品を一同に展示し、子どもたちやその家族、広く一般の方にも呼び掛けて鑑賞していただくという取り組みです。コンクール形式ではなく、サイズもさまざまで、子どもの感性があふれある作品が寄せられます。つまり、どの子でも出品することができるということです。何の後ろ盾もなく、展示から撤去まで出品された先生方の手作りの展覧会です。資金面等や現場の多忙化等で年々開催に難しさを感じていますが、美術館に鑑賞に来られた子どもたちやご家族の笑顔や会話の様子が本当に温かく、楽しいのです。自分の作品を見つけて走っていき、「こっち、こっち」「見て!見て!」という子どもたち。一人の作品にお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんとたくさんの方が見に来られる様子。「自分の作品も上手と思ったけど、他の学校の人もの見たらすごかった!」という感想・・・こんな姿を見て毎年頑張っています。 鑑賞された方々の感想を読むと、子どもたちの作品を通して、感動したり、考えたり、心動かされたりしていることが伝わってきます。今年度も頑張って開催したいと思います。(佐賀県)
- 参加を希望した小学4年生を公共交通機関に乗せて、鹿児島市立美術館で自作の鑑賞教育プログラムを行った。「美術館の回り方」「作品の味わい方」について一通り学ばせた後は、所蔵作品の一つである和田英作の「赤い燐寸(マッチ)」を教材にした鑑賞タイムを実施した。「今はいつごろ?」「ここはどこ?」「この人は、あなたにとって誰?」「今、何を言おうとしている?」などといったことを自由に想像しながら、感じた事を言語化させたり、動作化させたりした。図画工作科の教科書は、児童作品が溢れている一方で、芸術家による優れた美術作品は少ししか掲載されておらず、しかも、レイアウトの都合上、どれも数センチ×数センチのサイズである。だから、美術館での鑑賞教育プログラムに参加した児童は、終始、「本物」の「大きさ」に素直な驚きと喜びを示していた。そのことが一番印象的だった。(鹿児島県)
- 元永定正「あみだだだ」の絵本や、「ころころころ」「もけらもけら]「カニツンツン」などの原画の作品鑑賞を通して、言葉や形から感じるイメージの世界を、発砲スチロールを使って立体作品に置き換えて制作しました。鑑賞の際、中辻悦子さんにナビゲーターになっていただき、児童の鑑賞を広げる手助けをしていただきました。児童による音読の表現や、教師による読み聞かせ、原画作品鑑賞、フロアー作品など多様な鑑賞の形式を用いて 体験的な鑑賞ができました。作家が学校現場と交流し、表現と鑑賞の世界にかかわって、よりよく連携できたことで、新しい展開が生まれました。また、制作した作品を地域の展示場に運び、自分たちの作品を鑑賞しました。(兵庫県)
中学校教諭
-
- 美術部による定期参観(レクチャー含む)…美術館の提案する展示風景や展示計画など、美術部による文化祭等での展示活動に大いに参考になった。 ・美術館が主催するバックヤードの研修会に参加(指導者)…生徒への関わりや、授業計画に参考になった。結果、美術館が身近に感じられ、生徒への情報の提供の機会が増え、生徒の自主的な展覧会参加につながった。(北海道)
- 5~6年程、北海道立旭川美術館(学芸員)と旭川市内の美術部(美術教員)と北海道教育大学旭川校の造形ゼミの学生(大学教員)の3者で連携し、鑑賞プログラムを作成している。例年、400人ほどの美術部生徒が参加しており、3年間参加している生徒の発言やワークシートの内容を見ると、作品の見方や関わり方などの学びの成長が感じられます。(北海道)
- 5~6年程、北海道立旭川美術館(学芸員)と旭川市内の美術部(美術教員)と北海道教育大学旭川校の造形ゼミの学生(大学教員)の3者で連携し、鑑賞プログラムを作成している。例年、400人ほどの美術部生徒が参加しており、3年間参加している生徒の発言やワークシートの内容を見ると、作品の見方や関わり方などの学びの成長が感じられます。(北海道)
- 昨年2月、本校で行われた学校を美術館にするプロジェクト「中ハシ克シゲ展in 小湊中学校」は、県立美術館の出前講座と本校美術科の授業との連携から始まりました。青森県立美術館の教育普及チームによる協力で、作品の輸送並びに作家の招聘、授業でのサポート等が行なわれました。そして、授業を通して、展覧会の企画立案、作家との交渉、広報活動、展示、鑑賞という一連の流れが生徒達の手で作り上げられ、まさに、作家と生徒、地域がつながっていくプロジェクト型の学習であり、生徒の手づくりの展覧会が実現しました。こういった取り組みを、単発で終わらせずに継続して取り組むためにも、この指導者研修でのつながりを活かすことや、地域へ発信していくこと、行政の枠組みづくりなどが必要なのではないかと考えています。(青森県)
- インスタレーション作品の作者と連携して、材料作り作業を手伝い、完成した展示作品を鑑賞した。今後の作品作りの中で、自由な発想やイメージ作りに役立てられればと考えている。(岩手県)
- 1学年80人を美術館に連れて行き、教師自身が対話による鑑賞の授業を行っています。勤務校で続けて4年になります。美術館のスタッフに授業をしていただきたいのですが、断られることが多く、私自身が行っています。その分自分のスキルはこの4年間でだいぶ上がりました。(宮城県)
- 私は平成14年から宮城県美術館に1年生を半日(授業時間で4時間)連れて行っている。9:30~美術館の概要学習をホールで、その後グループに分かれ、①学芸員による作品紹介、②教科書出版会社による作品紹介、③ワークシートを使った鑑賞、を行ってきた。改良の余地はあるが、ほぼルーチン化している。特に②については教科書に掲載される作品について制作会社から直接話を聞けるのが良いし、教科書会社の方にとっても生徒に伝える勉強になっている。(宮城県)
- 美術館学芸員として…学校の授業の一環としての美術館利用において、ギャラリートークのみならず、校種や学年に合わせたワークシートを作成して取り組ませたり、展示の中に体験的要素を盛り込み学校利用に対応した。 中学校教諭として…学年ごとにテーマを設定し、美術館のコレクション展の郷土作家作品から1~2点選定して鑑賞することで、郷土作家を知りその良さを感じ取る機会とした。(秋田県)
- 震災後、鑑賞する機会が変化した。日本画家が直接自分の作品の話と実技指導を行っていただく機会があり、その後毎年、日本画家から学んだ内容を生かした授業を続けている。しかし、美術館と本校の距離が遠く、生徒全員での鑑賞教育は難しいため、美術部員での鑑賞活動を毎年行ってきている。特に日本画やグラフィックデザインの作品に対するギャラリートークで日本画に深い興味を持って絵画表現に生かされたり、歴史的なグラフィックデザインの作品がどのように生まれたか知ることができ、写真などにも興味を持ってデザインの制作に取り組むようになった。(福島県)
- 群馬県立近代美術館の作品を5点勤務校にお借りして(1日)校内美術館を開き、全学級に鑑賞授業を行った。また、保護者に公開する時間を設けた。(群馬県)
- 美術の時間の中で、美術館との連携授業を計画するのはなかなか難しい現状です。しかし、千葉の柏という立地条件から、1年生の校外学習では「上野の散策」を丸1日で行っています。国立西洋美術館や国立博物館を見学地の1つとしているが、なかなか有効な鑑賞活動とできていないのが現実です。(千葉県)
- モネの「緑のハーモニー」を鑑賞題材にして、色彩学習や絵画表現と関連づけた題材開発を行った際、横浜美術館学芸員に相談にのっていただいたり、レプリカ(カラーコピー機で自己作成したもの)をよりリアルに鑑賞できるように、所蔵の額縁を提供していただいたりと、良い授業が実践できようにサポートしていただけてことがありがたかったです。 また、横浜市では年間を通して、中学校美術研究部との連携事業が様々あり、いつでも相談できる関係にあることが心強いです。(神奈川県)
- 本校では、特色ある地域教育として「美術館と連携した鑑賞」が位置づけられている。夏休みに生徒引率で美術館へ行き、学芸員から鑑賞指導を受ける。なんといっても、本物を見られるという良さがある。教室では見られない生徒の「感想、気づき」が興味深い。また、美術館から「レプリカ」を借りて、学芸員の出前授業も行った。専門家の「うんちく」は、生徒以上に興味深い。この研修会な参加して、自分の「伝える力」を見直すことにもなった。ファシリテーター、サブファシリテーターも魅力的だった。(神奈川県)
- 中学校の通常の授業で美術館に行って学習をするのは、不可能に近いと思います。したがって、主に美術部などの美術に対して意識の高い生徒を対象に、夏休みなど時間が自由にとれる時間に少人数で鑑賞活動をしています。対話しながら有意義な活動ができています。授業として取り組む場合は、美術館からの出張授業のようなことができないと難しいなと感じます。(神奈川県)
- 川崎市にある岡本太郎美術館や市民ミュージアムを見学。岡本太郎美術館に行った際には、美術館から事前にアートカードなどを借り、カード遊びなどを通じ鑑賞授業を行ってから見学した。主に地域にゆかりのある作家について調べて、鑑賞することが多い。(神奈川県)
- 横浜市芸術プラットホームに参加し、横浜美術館の方に授業をコーディネートしていただいた。アーティストを学校に招聘し、彫刻作品を校内に展示してもらった。授業内容は、Aアーティストの話と鑑賞(彫刻に触らせてもらって感動していました)、B学芸員による鑑賞、C巨木をノミで彫る体験で、1時間×4コマの授業でおこなった。 子どもたちの発達段階と質を考えて、作品の選定は、わかりやすく芸術性の高いもの、またアーティストのお話しが具体的で子どもにわかりやすいこと、観る言葉にするばかりではなく、彫刻にふれる、実際に彫るなどの体験が含まれること。教師は子どもたちについてよくわかっているので、事前にうち合わせをしながら学校独自のプログラムを作った。子どもの心に残る授業ができたと感じている。(神奈川県)
- 地域の美術館と連携し、日本画の画材や表現方法を学んだ。美術館へ訪問し、学芸員から指導を受けた。(新潟県)
- 鑑賞教育を行う場合、作品の選び方は重要だ。そして、できるだけ計画を立てて準備する方がいいようだ。しかし、どれだけ準備万端であっても、それは本番が上手くいく保証にはならない。相手に算数のような解答を教えるでもなく、明確な指標を示すでもない。感受性の領域の問いかけである。答えは無数にある。予想なんてできない。それが鑑賞教育をユニークに、スリリングにさせている。 実践者は楽しさと難しさの間を行き来しつつ、続けていくしかないのだろう。鑑賞教育とは生き物である。(富山県)
- 富山県立近代美術館の企画で行う一日学校美術館(美術館側で選定された作品を学校に展示して鑑賞するもの)で実施。本物の力強さが感じられ、子どもに大きな感動を与えていることが端から見ていてもよく分かる。ただ半日と時間が限られ、規模の大きい学校では、1クラス20分ばかりしかとれず、十分作品の世界に浸ることができない。集団行動や鑑賞マナーに年々時間を割く必要が出てきたり、予算の関係で毎年実施できるものでもないので、力を入れて準備することもできない。他県の例のように、電子的に鑑賞資料が手に入れば、バーチャルでも作品の大きさを感じ取ることができるのではと今後に期待したい。(富山県)
- 遠足に美術館へ行って鑑賞できるようにスケジュールを組んでいる。事前学習をしていくので本物を見る機会があり生徒たちも楽しみにしている。富山県立近代美術館や金沢21世紀美術館など。そのあとモダンテクニックや色のイメージで春とか優しさとかの抽象的な表現の作品に取り組む。小松市の宮本三郎美術館の出前講座を利用し、思いを表現することを学び、人物画に取り組んだ。(石川県)
- 福井県立美術館のアートカードについているCD-ROMから拡大図版をプリントアウトし、それを使って対話型鑑賞をしている。その鑑賞の後、国語の時間に鑑賞文を書く単元を行っている。国語科の先生からも好評である。(絵について鑑賞するのは美術の時間の方が深く鑑賞してこれるから)
・福井県立美術館より「三上誠」の作品を何点かお借りし、それを個人で感じたことをメモをとりながら鑑賞し、その後グループで「作品が描かれた順番を理由をつけて考えてみよう」という課題で話し合わせた。作品からストーリーを読み取り、作者の人生観にまで触れられる授業となり、生徒も楽しんで鑑賞できた。また、学芸員さんからの「5年後?に三上誠展がある」という言葉には、大変興味を示していた。5年後、この生徒たちが「あー、中学校の時見たやつやー。」と興味をもってくれたらとても嬉しい。3年間いろいろなパターンで鑑賞をしてきて、この最後の「三上誠」の鑑賞につなげた。それがとても生徒にとって心に深く落ちた様子だったので、今後もこの流れを続けていけたらと思っている。「三上誠」の授業をしたときに、3年間の鑑賞の授業がきちんと子どもの中に残って大きく心が育っているのを感じられた。
・福井県立美術館より菱田春草「落葉」のレプリカをお借りして授業を行った。実物大のレプリカ、しかも屏風というものを見る経験もほとんどない生徒たちなので、大変興味深く鑑賞することができた。また、たまたま国語の教科書に永青文庫の「落葉」が掲載されており、それと比べて鑑賞することで、より関心をもてたようだった。嬉しかったことは、初めは「地味」「なんでこれが宝物なの?」という感想をもっていた子どもたちが、終わる頃には「どうして県立美術館の方の「落葉」が重要文化財じゃないの?」「こっちの方が好きやぁ」という声を発していたこと。もちろんどちらが好きかは人それぞれではあったが、どちらが好きにしろ、全く興味もなかった作品に、これほど愛着をもってくれたことが嬉しかった。やはり、郷土に誇れる作品をもっともっと紹介していかなくてはと思った。そして、そのためには美術館との連携がとても大切だと思った。(福井県) - 美術館より作品をお借りして、対話型鑑賞授業を行った。 ・アートカードをお借りして授業を行った。 ・美術の先生の研修会で、美術館が行っている活動を紹介した。(長野県)
- 信濃美術館から学芸員同伴でレプリカ作品を学校まで貸し出していただき、教室を美術館風に設定して、4年生のクラスで対話型鑑賞の授業を行った。東山魁夷の作品の中より子どもたちが本物を見てみたいと希望の多かった、「緑響く」「華明かり」「黄山雨過」その内「緑響く」は、学校近くのセイコーエプソン広丘事業所が所蔵する原寸大のレプリカをお借りすることができた。普段はおとなしく、それまで学級の中では発言することのなかった転入生のY君は、「花明り」で先生から「どこが光ってみえる?出てきて指さして」 と言われて、「この辺」と指を指したことをきっかけに、その後自分から挙手しだした。「月の光で上の桜はきれいにピンク色だけど、その上の桜がさえぎって下の桜は月の光があまり射して来ないからピンク色じゃないんじゃないか?」の発言や、黄山雨過での「奥の方はあまり岩が見えないけど、前の方は岩が見える。」の発言につながっていった。色彩の変化や色の濃淡を的確に捉えて、遠近感を感じている。鑑賞をした児童の感想 「(みんなで)これを見ていればテレビはいらない」「絵が描きたくなった」。対話型鑑賞により、自分では気付かなかった考え等を共有し合う楽しさを感じることができる。発言に正解・不正解がないために、普段の授業ではあまり活躍できないお子さんでも、自由に発言ができる。(長野県)
- 美術館と連携した授業は、時間、交通手段、予算等で難しい。しかし積極的に美術館が学生を対象とした鑑賞事業を立ち上げてくれているため、美術部の活動として定期的に美術館まで出向き、鑑賞活動を行っている。また、学芸員とタイアップした取り組みも行っている、 その他には、全校生徒を対象として夏休みに美術館レポート等の課題を課し、必ず美術館へ足を運ぶような取り組みを行っている。(静岡県)
- 愛知県美術館が全県の小中学校に配布した「あいパック」を利用して授業をしました。研修で紹介いただいたので国立美術館のアートカードも購入して、それも使って授業をしました。カードになっている作品は、多くの方の目で選ばれた作品なので、安心して授業で使用できます。子どもたちからも多様な意見が出てよかったと思います。学校の近くの美術館で地元の作家の展覧会が開催されるとき、作家の方にギャラリートークをしてもらい、会場で授業をしました。ギャラリートークをしていただけるということは、ただ見るだけではない授業ができるということです。美術館の方に情報をいただいたり、作家との打ち合わせをセッティングしていただいたりしてありがたかったです。美術館に協力いただけることで、管理職等の理解も得られることができました。こういう機会があると、鑑賞の授業の計画が立てやすいと思いました。(愛知県)
- 昨年度は、美術館と連携した鑑賞教育をテーマに、神戸市中学校教育研究部が研修会を行いました。地元にゆかりのある小磯良平について知らない生徒が多すぎると、研究部長が1年間をかけて動いた一環です。内容は、先生方にギャラリートークを体験してもらうというものと、鑑賞教材(A3ポスター)を使って鑑賞授業の指導案をグループでつくるというものでした。その後、研究部で鑑賞用教材を作成し、年度末に全校に配布をしておられました。この年の研究会には、ファシリテーターとして小学校の図工の先生方に来ていただきました。小学校の先生方の方が実際に美術館に児童を連れて行くことも多いし、よく研究をされている方が多かったからです。小中の連携にもなり、良かったです。私自身は、美術部の生徒を美術館に連れて行くのがやっとの状態ですが、小磯記念美術館と打ち合わせをしていく中で、新宮晋展を通して、部活内ですが鑑賞と表見を繋いだ活動をすることができました。美術館で鑑賞をした後、アトリエで動く立体造形をつくり、夏休み後は美術館の休憩コーナーに生徒の作品を展示させていただきました。他の中学校にも声をかけたところ、2校が参加してくれました。本年度、夏の研修会は兵庫県立美術館の常設展の中で、ギャラリートーク研修を行う予定となっています。(兵庫県)
- 美術館から5点作品を学校に持ち込んでもらい、鑑賞授業をおこなった。事前に展示場所の確認をしていただき、日光が入らない、ほこりが立たない場所を選ぶことができた。作品の選定は、生徒たちが自由に作品の背景を想像できるようなものを選定していただいた。実物作品の凄さを実感でき、他の生徒の様々な価値観を知っていけるような授業にしたいというこちらの要望に応えていただけた。事前学習として、プリントと画像による作品鑑賞をおこなった。その時感じたことと、実物を鑑賞した時の違いをまとめさせた。画像ではわからない大きさや色の鮮やかさ、細かさに非常に驚いた様子だった。(広島県)
- 個人的に行っていることではあるが、美術館の学芸員と交流があり、美術館で行われる展示に関連したワークショップや鑑賞教材を一緒に企画している。授業で鑑賞に行く際にそれを使うことを目的としているが、作った教材をそのまま美術館での一般利用者への鑑賞にも配布してもらい利用してもらっている。また、若い保護者をターゲットにして美術館(博物館)の利用者を増やすためのワークショップなどを企画している。(鳥取県)
- 学校教育ではアートカードを使った授業などを行っている。また、対話による鑑賞を実施し、生徒の学びを中心に授業を進めるなどの工夫をしている。全クラスでゴッホのひまわりを鑑賞し、15本の花の中で自分がどの花か考える授業を行った。その後、自分自身のことを語る人権集会において、生徒がひまわりの花を自分に重ねて全校の前で堂々と発表することができたときはとてもうれしかった。(島根県)
- 美術館が所蔵している作品にシュールレアリズムの作品が多かったので、中学校でどのように指導しているかを美術館の学芸員の方々に見に来ていただき、その後協議をした。 協議の内容は具体的に以下の3点である。1.価値があると教えれば、将来も価値があり続けることになる。これが鑑賞教育なので、美術館としてどんな作品を扱ってほしいか(少ない時間数で扱ってほしい作品)。2.作品の見方は作品によって違うので、作品のジャンルと見方の両方を教える必要があること(鑑賞の仕方を教えることの必要性)。3.美術館との連携を学芸員に授業をおねがいするといった間違った解釈がある。教員は教え方のプロであるから基本的には教員が教える。ただし、連携して行えば教育効果が上がる(教員が学芸員から作品の価値と鑑賞の視点を学ぶこと、学芸員が教員から鑑賞者への伝え方を学ぶことの必要性)。(山口県)
- 徳島県立近代美術館学芸員による出前授業(高校生対象:学芸員の仕事、美術館での作品展示・保存などの講演)(中学生対象:水墨画の体験) ・徳島県立近代美術館鑑賞→アートカードゲーム ・大塚国際美術館鑑賞→「最後の晩餐」ダ/ヴィンチ、「睡蓮」モネ、「自画像」「ひまわり」ゴッホなどの鑑賞授業(学校にて) ・美術館鑑賞をすると、生徒の興味・関心が高まる。鑑賞したことを文章で感想を書いたり、ビジュアルで表現したりすることで自己の見方を深めることができている。美術館に対して敷居が高い雰囲気がなくなり、文化に触れる楽しさを体感できると思います。徳島県では、美術館での中学校美術科研究大会も行われ、10年間で授業研究が進み様々な実践が行われていると思います。(徳島県)
- 美術館の所蔵作品を学校に持ってきてもらい、学芸員のかたに鑑賞の授業を行ってもらった。(香川県)
- 2009年に大分県立芸術会館の学芸員とともに参加させていただきました。鑑賞に関する様々な活動や実践発表を見て、二人で夢のような気持になりました。その後、実践発表をされた鎌倉小学校の高松智之先生に、臼杵市で2011年に造形教育研究会が開催時、講師として来県していただいたことや、大分県立芸術会館と連携した鑑賞授業も数多く実施することができました。その中でも一番の思い出は、2012年に行われた、芸術会館の所蔵品を45点ほど勤務校の体育館に展示して、地域の方に鑑賞していただいた「スクールミュージアム」です。これは、ある事情から県内全域の小・中学校で芸術会館が取り組んだ活動ですが、搬入から搬出まで充分な予算をかけて実施した貴重な活動です。本番は、子どもたちが一日学芸員になり、作品の紹介を来場者に行う形で過ごしました。子どもたちはとても素晴らしい学芸員振りで、地域の方にも大好評でした。一日で110名ほどの来場者がありました。これらは、地域の方や職場の管理職・同僚が協力して成功させた鑑賞授業でした。すべては指導者研修が一つのきっかけになっています。2009年には芸術会館との連携が大成功しました。現在、大分県立美術館も開館し、さらに教育現場と美術館が密接につながりを持とうと始動しています。(大分県)
- 中学2年生での次のような実践を行いました。まずは、愛媛県美術館で展覧会(ピカソと20世紀美術の巨匠たち)を学年全員(40人×4クラス)で鑑賞しました。1クラスを5グループに分け、美術館のボランティアスタッフがトーカーとなりギャラリートークを行いました。美術館での鑑賞の後、生徒一人一人に展覧会の作品の中からお気に入りを選ばせ、その作品について小集団で発表し合う授業を実践しました。キュビスム、アンフォルメル、モダンアート、ポップアートなどの多様な作品について直観的な印象や感じたことなどを思い思いに述べ合うことができました。それまで生徒たちは美術館での展覧会鑑賞=高尚なものとして堅苦しさを感じていたようでしたが、もっと感じるままに自由でいいんだというように意識を変えることができたと思います。(愛媛県)
- 大分県立美術館と連携して鑑賞教育を行いました。大分県出身画家髙山辰雄の作品「山を行く」で鑑賞を行いました。(大分県)
- 宮崎県立美術館で、次のような活動をしていただいている。 ・移動美術館で学校にハイビジョンの機材を運び、全校生徒で鑑賞した(へき地の学校) ・アートボックス(鑑賞用のカード)が各地区の代表学校に置いてあり貸し出すシステムになっている。 ・夏休みに「たんけんミュージアム」を開催し(児童生徒向け)、生徒にパンフレットを配付している。 ・夏季休業中に美術館教育講座「先生のためのアートセミナー」が実施される。(宮崎県)
学芸員
-
- 学校団体来館の際のギャラリートーク(対話型鑑賞)。対象:小学生~高校生。人数:1班10人以下。ファシリテーター:ボランティアスタッフおよび美術館職員が1班に1人つく。所要時間:1作品15分程度。鑑賞作品の選定基準:常設展の展示作品のなかからファシリテーター各自が自由に選ぶ。(展示替え毎に研修を行い、対話型鑑賞に適した作品や生徒の年齢に合った作品についてディスカッションを行っている)。(青森県)
- 美術館のセカンドスクール的活用の中で、展覧会を鑑賞後に関連した実技のワークショップを学年に応じて実施している。そのためのプログラムを、展覧会担当と教育普及担当とで考えている。(秋田県)
- 教育機関のセカンドスクール的利用ということで、当館では年間に約100校の学校さん(幼稚園~高校)にご来館いただき、鑑賞や実技、館内探検等のプログラムを活用していただいている。(秋田県)
- どの作品を鑑賞するかは、事前に先生方と打合せを行い、鑑賞のねらい等を確認して決定していました。ねらいによっては、数点の作品を選択して対話型で鑑賞をしたり、展示室の概要や鑑賞のマナーだけを説明して、後は自由に鑑賞したりするなど、美術館での滞在時間や人数も考慮して計画を立てていました。(宮城県)
- 中学2年生の職場体験受け入れを過去2年(2名×2回)行っている。4日間の日程で、美術館の業務を体験してもらうものだが、その中に作品撮影とキャプション作成を入れている。作品撮影は掛け軸撮影(直角・平行)の難しさ、キャプションはお客様に作品を紹介するような文章に手書きで仕上げてもらっている。文字通り、作品と向き合う作業である。これらは同意を得て、次回の展覧会で実際にキャプションとして使用する。写真は記念に、キャプションはコピーして学校提出用にさし上げている。中学生の瑞々しい新鮮な感想が、こちらの刺激にもなっている。(宮城県)
- 美術館を会場とした絵画鑑賞教室(栃木県)
- 学校のスケジュール等が優先にあるので、生徒の学年等に配慮したものではなく、学校が来れる日にやっている展覧会を鑑賞するというのが現状です。先生によって、自由に見学させたり、一列に並ばせて歩かせたりと様々でした。事前に先生方と、どのように鑑賞することが大事なのか、鑑賞の方法について話し合う機会を設ける必要を感じました。小規模特認校に、何年か続けて市出身のアーティストと出前ワークショップ講座にいったり、図工部会や美術部会の研修にもアーティストのワークショップをコーディネイトしたのですが、制作で終わってしまい、そこから鑑賞につなげるにはもう一工夫が必要だと感じました。(栃木県)
- 県内の小学校より、全国大会のプレ授業を行って欲しいとの要請があり、これまでに数度行っている。指導者研修を受けたことにより、学校の先生方の意識を以前より理解することが出来るようになり、当方も積極的に協力する意識をもつようになっている。(栃木県)
- 当館は日本画を中心とした展示活動をおこなっているため、日本画の教育普及活動を目的として教材を開発し、事前授業をおこなった後、美術館で鑑賞授業を実施した。教材は岩絵具について知る内容のため、鑑賞作品は教材による知識が活かせることを考えて選定した。教材で日本画への理解を深めたことにより、作品に対する児童の興味が高まり、鑑賞授業への取り組みが活発になったと感じた。さらに、学校で日本画を描く実技を組み合わせ、総合的なプログラムとして実施したが、担当教諭の退職により、活動は縮小傾向にある。(群馬県)
- 当館には県内他館と合同で製作したアートカードがあり、教室でのアートカードを活用した授業→美術館でのホンモノ鑑賞、という二段階鑑賞ができることが理想である。ただし、学校側が2コマ用意せねばならないこと、美術館に来館できるとは限らないこと(距離的に)、アートカード作品が必ずしも展示されている訳ではないこと、などの理由で、なかなか実現することは難しい。アートカード作品が展示されていない場合は、任意の作品のカラーコピーを学校に提供するが、鑑賞者の話がなるべく広がるような作品を選ぶようにしている(単一モティーフではないもの)。美術館側としては、やはりホンモノに触れて欲しいのだが、来館のための手段確保が課題である。(埼玉県)
- 中学校の美術部の先生方とは、お互いに顔の見える関係になってきたので、連携がかなり進んでいると思う。美術館でアートカードを作成する際も、先生方のご意見等を反映させて作成した。小学校との連携はあまり進んでいないが、ボランティアを育成し、VTSでの鑑賞を進めていきたいと考えている。(神奈川県)
- 地域の小学生を美術館に招き、作品を選びながら対話式の鑑賞を行っている。作品選定については、先生から任されることが多いため、学芸員の間で話し合い決定している。研修にあったように、先生と学芸員が協力して、より深い内容にしていきたい。時間や人員の制約があるため、クラス単位での実施となる。小グループに分かれて行うほうが望ましいが、地方の美術館ではこれが現実だと感じる。研修はとても有意義でした。地域に還元できるよう努力します。(神奈川県)
- 当館から徒歩7分のところにある小学校(各学年1クラスずつの小規模校)との交流。全学年が学期に1回来館し、作品と対話し、美術館に親しんでいる。低学年は工作(展示作品とかかわりのある内容)などを交え、作品の理解へとつなげている。高学年になるにつれて、ギャラリートークの要素が強まり、卒業時には6年生児童による当館常設展示作品のギャラリートークを行っている。学齢に応じて解説する作品を選定しているが、生活年齢を意識し、言葉にしやすい作品から概念的な作品へと心がけている(当館作成のアートカードも活用しながら、作品との出会いをプロデュースしている)。また、近所の美術館として、当館の芝生広場などで放課後の時間に遊んでいる児童も多い。卒業してからも気軽に立ち寄れる美術館として存在していると思われる。他校の児童生徒から比べるとはるかに敷居は低いものになっていると感じる。(山梨県)
- 通常は、学校から事前に連絡があり、時間によってプログラムを柔軟に考えている。時間がたっぷりある場合には、鑑賞作品に関連するような簡単な制作を行う時間も入れて、常設展示室・特別展示室を鑑賞する。鑑賞の手助け役として、学芸員あるいは教育指導主事が20人に1人くらいつく。作品を数点選び、子どもたちと対話をしながらの鑑賞を心がけている。(山梨県)
- 当館では八王子市教育委員会と連携し、市内の公立小・中学校と団体鑑賞を推進している。交通手段は、当館が契約した民間バス会社のバスを利用し、無料送迎を行っている。(東京都)
- 作家(書道家や日本画家、洋画家など)とその作品を、学校現場に派遣するプログラムは、鑑賞と表現はスムーズにつながるが、一過性の「イベント」になりがちだった。美術館への受入れは、交通手段や授業時間の確保が、学校現場の課題だと感じる。展示作品を鑑賞して詩を作る等、美術以外の教科との連動したプログラムに可能性を感じる。職場体験の受入れも恒例化している。(新潟県)
- 昭和の美術作家の作品を制作年順に見せて行って、劇的に変わった変わり目に一体この人に何が起こったのだろう、ということを考えた。また、どうして変遷していったのか、作家の体験を想像した。子どもたちは思ったよりもよく作家を理解して、思いがけない感想を言うことに驚いた。(福井県)
- クラブ、部活動での実施(長野県)
- 美術館が無料で配布する鑑賞カードを、学校に6セット(1セット約40枚)お渡ししてそれらを使ってアートカード読み札(かるた形式)を作成して鑑賞授業を行った。その後、美術館に来館し鑑賞した。事前学習にかるたを行ったことでカードで見た作品と実際に見た作品の違いなどで驚きや感動の声が聞こえた。その後、来館された学校の教員からやはり美術館に行くと行かないではその後の取り組み方が違うと報告があった。(栃木県)
- 所蔵作品を学校に持ち込んでの鑑賞授業体験をしてもらう学校出前講座を行っている。内容的には大人数の一斉自由鑑賞ではなく、アートゲームや対話型鑑賞を1クラス1時間で行っている。(石川県)
- 作家による授業が出来るよう現存作家を中心に、日本画・洋画・版画・彫刻・写真など様々なジャンルを取り上げて鑑賞授業を行っています。指導者研修でファシリテーターを勤められた柴崎裕先生の「きぼうの手」プロジェクトの児童作品を借用して展覧会を開催しましたが、事前に長野県北部地震で被災した栄村を応援しようと朝日小学校全児童が参加して巨大絵画を制作し、会場に展示しました。美術館での授業の中でしか子どもたちの様子が見られないため、日常生活における影響は分かりませんが、鑑賞授業での子どもたちのコメントが年齢を増すごとに深まってきていることによく驚かされます。鑑賞授業は美術館と学校の相互理解や協力が必要であるため、どちらかのみが主導で動いているだけでは上手くいかないと感じています。(長野県)
- 美術館展示室での対話による鑑賞(美術館で作成したワークシートも使用)。(静岡県)
- 出張授業での鑑賞プログラム:実物大国宝紅白梅図屏風レプリカを活用している。(静岡県)
- 所蔵作品、作家について学芸員が解説した後、児童それぞれに好きな作品を選んで模写をしてもらい、その後、数人に感想を発表してもらっています。(愛知県)
- 陶磁作品を教材とした、小学校への出張授業を数年前から実施しています。本実践では、作品の形と色の把握、イメージの展開に加え、陶磁鑑賞の特質を生かすために、素材である「土」のもつ材質感への注視や、陶磁を鑑賞する行為自体がもつ歴史性を体感することにも留意しています。本年度は、これまでの実践を踏まえつつ、よい陶磁作品とは何かを、子どもに伝え、かつ考え合う授業を展開したいと考えています。なお、2015年4月から実践報告「古陶磁の鑑賞-美術館から小学校へ、小学校から美術館へ」(『愛知県陶磁美術館研究紀要20』)を同館公式webサイトで公開しています。(愛知県)
- 当館のある安曇野市内には、小規模な美術館・博物館が複数あり、いずれの施設も少ない予算と職員で運営をしている。単館では学校との連携事業は困難であるが、公私立等の垣根を越えて連携し、協力して小中学校への出前展覧会を行っている。また、協力して実行委員会を組織し、文化庁の助成金を得てパスポートやワークブックなどを製作し、小学生が美術館・博物館を複数館巡る試みや、自身で鑑賞を深める取り組みをしている。出前展覧会では、美術品専門の運送業者を手配し、大きな作品の運送と展示も行っている。各館の学芸員が常駐し、短時間であるが、各々が工夫を凝らしたトークを行っている。学校での展示の後、少数ながら、もっと作品を観たいと感じた小学生が、保護者とともに来館することもある。(長野県)
- 美術館本館は交通の便があまりよくない場所にあるため、行ったことのない児童が多くいる。そのため、展示会を狙って行くよりも、美術館という空間に触れさせることが大切であると思う。3年生を連れていったところ、野外の彫刻作品を見て身体全体で真似をしてみたり、話し合ったりすることができた。常設展では、ある男の子は日本画に心魅かれ15分ほどもその場にいた。他の子たちは全体の作品を見て、自分のお気に入りの作品を見つけていた。グループの中で自分の好きな作品を紹介しあい、「好きな理由」「気になったところ」を話し合わせた。授業後、美術館が思いのほか楽しかったという思いから、家族で美術館に行ったという児童が数名いたことは、大きな成果だと思う。(京都府)
- 小学生を対象にしたギャラリートークを開催した。その講師として、大学で美術工芸を学ぶ学生が務めた。(京都府)
- 学芸員が小学校に赴き「知る」喜びを伝える<出前授業>の後、休館日を利用して実際に美術館に赴き本物の作品を鑑賞する<美術館見学>を行っています。(京都府)
- 美術館で実物の作品を見るという体験を作ることが現在も最重要課題であるが、学校行事としての来館は難しい状況にあるため、休暇中の宿題として展覧会の内容も含めて計画を立て、来館を通じた教育に取り組んでいる。(和歌山県)
- 事前に教員と打ち合わせをして、そのとき展示している作品の中から選んでいる。当館では特に、夏期休暇中のワークシートを教員と連携して製作しており、それは活発になっているが、地理的な制約も多く、教員が直接生徒に鑑賞教育の授業を行うことはまだまだ少ない。また同じ夏期休暇中の展覧会では、主に教員を目指す大学生が展示室で直接子どもたち(大人のこともある)にトークをする機会をもうけており、外から見ると大学生による教育普及活動に見える。が、美術館担当者としては、来館者というよりも将来教員となる大学生自身への鑑賞教育活動と位置づけている。(和歌山県)
- 平成17年度より継続して、市の学校教育指導室に協力する形で、市内小学6年生の「文化芸術科学ふれあい体験事業」を行っております。本年で11年目となります。体験時間は約2時間で、展示室3~4室を順に回り、それぞれの展示室で担当学芸員の話(約10分)を聞いた後、気に入った作品等のスケッチ(約10分)をしてもらっています。スケッチブックは子ども1人に1冊ずつ配付しています。(大阪府)
- 企画展開催時には、近隣の学校で、鑑賞教育およびギャラリートークを行っています。(長崎県)
- 当館のアートカードを使って行った「自分だけの展覧会」を小学校や高等学校との連携 ・小・中学校へ作品4点を持って行っての鑑賞教室(宮崎県)
指導主事
-
- 作品は学芸員と話し合いにより選定。ギャラリートークを学芸員に進行してもらい、普段言葉を自信を持って話せない児童が、皆の前で自分の言葉で話す姿を見ることができた。(栃木県)
- 10数年前、関東ブロックの研究大会の授業で、地元宇都宮美術館と連携した授業を行った。 盲学校の生徒と通常の学校生徒が交流しながら鑑賞を行うというものだった。盲学校の生徒がいるため、作品の一つは触察できる作品、「丑久保健一氏の10∞のボール」を選択した。 絵画はマグリットの大家族。対話による鑑賞で行い、目の不自由な生徒との交流は、互いに刺激になり、違ったものの見方や感じ方を共有できた。しかし当時、対話による鑑賞はまだ知名度も低く、まだまだ表現の授業に人が集まるのが現状だった。大会の前の年に、宇都宮美術館で上野行一氏とアメリア・アレナスさんをお呼びしての公演があったが、 参加者は少なかったのを覚えている。今思うと、大変もったいない機会を多くの先生方が逃していたと思う。その後、丑久保さんの作品をお借りしての鑑賞の授業を毎年1年生で行った。現場最後の受け持った学年では、自然体験学習の中で「光のピース」をつくる追体験を実施し、作品への思いを深めることができた。そのことは、彼らが3年生の時に行った街角ギャラリーで、特別展示として、丑久保さんの作品を飾ろうということに発展し、生徒によるギャラリートークも行うことができた。その学年の卒業式で読まれた答辞には、「みんなでつくった、私たちの思いのこもった一つ一つの光のボールが集まった時の美しさは忘れません。あの時、みんなの心は一つになりました。」とありました。長くなりましたが、きっともう二度とできない授業と思われるので、記録として、記憶として紹介します。(栃木県)
- 美術館からレプリカやパネル等の教材を借りて授業をした。さまざまな資料を借りることができたので、子ども達は美術作品に興味を持ち、多く子どもが美術館に入って実物を見てみたいという気持ちをもった。(埼玉県)
- 横須賀市では、全市立小学校6年生を図工の授業の一環として、市教委がバスを配車し、横須賀美術館での鑑賞会を行っています。また横須賀市では、小中学校の先生方と横須賀美術館の学芸員と指導主事とで委員会を立ち上げ、学校と美術館との連携事業に力を入れて取り組んでいます。2年前から文化庁の助成をうけ、鑑賞教材の開発(アートカードやその指導案集、WEBサイトなど)を進め、現在市内の全小中学校に完成したアートカード等の教材を配布し、更に教職員の研修などを行い鑑賞の授業が深まるよう効果的な活用を促しています。アートカードの活用がされるようになってから、美術館での子どもたちの鑑賞の仕方が少し変わったようです。ある学校では授業参観でアートカードを活用した授業を行ったところ、参観の保護者までもが、引き込まれるような場面が見られたということも伺っています。また授業後、子どもが家庭に帰り、『美術館に行こう』と親を誘うという事例なども伺っています。自分の見方で鑑賞し、その思いを他の人に伝えたいという気持ちの表れであると思います。(神奈川県)
- 美術館のアートカードを使って学芸員さんが市内の中学校で授業、夏休みの美術展の紹介をしてくださいました。それを受け夏期休業中の課題で美術館に行こう!と呼びかけます。また美術部の生徒と希望者で夏期休業中に美術展に引率し、学芸員さんからの講義とワークショップを体験しました。(神奈川県)
- 堺市で毎年行われている中学校美術部の全国大会「アートクラブグランプリin SAKAI(全国中学校美術部作品展)」を活用したギャラリーツアーや、対話による鑑賞を、市内の幼小中学生を対象に行っている。幼児・小学生・中学生が鑑賞に来るが、発達段階によって鑑賞の方法や、とらえ方、感じ方の違いを感じる。特に幼児は、生まれて4・5年の経験と照らし合わせて作品とかかわろうとする。園に帰ってから「自分たちのアートクラブグランプリin SAKAIをしたい」と言っていた幼児の様子や、作品カタログを開いて語り合う幼児の姿を園長から聞き、本物の作品を近くで感じた心の動きが与える影響の強さを感じている。(大阪府)
- 美術館での企画展作品を題材に、学芸員による対話型鑑賞授業を高校で実施した。(愛媛県)
- 生徒対象の取組ではありませんが、初任者研修の一環で他教科の教師6名を引率して、県立美術館を訪れました。美術館側の受け入れ体制が良く、学芸員によるギャラリートークを1時間30分行うことができました。地元の美術館に初めて来たという教師もおりましたが、全員が新鮮な雰囲気の中で、「美術」の新しい世界に足を踏み入れました。翌日、皆がその体験を、その先生なりの視点で学級の子どもたちや同僚の教師たちに語ったようです。学校全体に鑑賞を広げるという視点を持つことは美術教育の大切な、日常的な基盤づくりになるかもしれません。(沖縄県)
その他
-
- 学校と美術館を接続する方法の一つとして有効なのは、学校の管理職を巻き込むことです。 私は県立高校に勤務していますが、名高い美術展において生徒向けと同じ鑑賞企画に、県内の高校の校長を招待して体験してもらうと、あたりが良いと考えます。アクティブラーニングの一環として、実物を美術館で見て学芸員のトークで鑑賞を深める、校長にこれを実体験してもらい、美術の教員に声をかけてもらうよう説明します。美術教員が体験してこれを管理職へ話すという流れよりもはるかにスムーズです。美術教員と校長が仲が悪い例外を除いて、効果は大だと思います。(千葉県)
- 美術館に展示されている作品の中から、子ども本意に好きな作品を見出し、その魅力を自分のことばで語ることを行わせた(特段の仕掛けは一切しなかった)。自分がなぜその作品を魅力的と思ったのか、その理由を、作品そのものの中、および自分自身の内部に見出すことを誘導した。「この作品を素敵と思ってしまうわたしって何?」を考える。(東京都)
- 富山県立近代美術館の収蔵作品の映像データをお借りして(データは美術館が選定)、印刷、校内で鑑賞。「自分の好きな作品」を選んだ。その際、いくつかの作品を選ぶことで自分の好きな傾向を感じることができたようであった。その後、実際に美術館に鑑賞へ行った。子どもたちは、自分の好きになった作品を目の前にして、映像では伝わらない本物のすごさを感じていた。その後も、自分の好きな作品を見に、家族とともに鑑賞に行った子どもたちもおり、美術館への親しみを増すことができた。 (富山県)