グループワーク B
子どもたちに問いが生まれることば
- 受講者:
- 10名(小学校教諭6名、学芸員3名、指導主事1名)
- 課題作品:
- ジョルジョ・ヴァザーリ
[アレッツォ1511年-フィレンツェ1574年]
《ゲッセマネの祈り》1570年頃(?)
油彩・板 143.5 x 127 cm
国立西洋美術館蔵
>> 作品解説はこちら - ファシリテーター:
- 西村 德行(筑波大学附属小学校 教諭)
- サブファシリテーター:
- 木暮 和代(市川市東山魁夷記念館)
活動内容
1.アートカードでカルタ遊びをしながら、自己紹介を行う
配られたアートカードの「読み札」を考える。ファシリテーターが読手となり、全員でカルタ遊びをする。正解者が自己紹介をしていく。
2.見つけたり感じたりしたことを記録する
今日の課題が「子どもたちに問いが生まれることば」を考えることであると伝える。《ゲッセマネの祈り》のカラーコピーが配られ、描かれているもの、気がついたことなどを余白に書く。(10分)記入したことが、「子どもたちに問いが生まれることば」を考える際の、大切な資料となる。
3.感じたこと、発見したことを話し合う
3グループにわかれ、各自が感じたことや考えたことを話し合う。グループ内で話されたことは、クリーム色の付箋に記入する。さらに「ワールドカフェ方式」で席替えをし、前のグループでの話題をお互いに紹介する。なお、思いついた「子どもたちに問いが生まれることば」はピンクの付箋に、自分たちの中でもやもやしていることはブルーの付箋に記入することにした。独創的な考えや豊かなイメージが楽しく交換されていく。
4.全員で集まり、グループごとに発表
席替えと話し合いを繰り返す中で、それぞれの場所ではどのようなことが話されたのか、グループごとに発表する。いろいろな考え方や、また言葉がけがあることをあらためて確認できた。またその発表をうけて、模造紙の中心に作品の画像をおき、その周りに関係する付箋を整理しながら貼った。
5.《ゲッセマネの祈り》の「読み札」を考える
ファシリテーターからの最後のワークの指示があり、最初に行ったカルタ遊びのように、もしこの《ゲッセマネの祈り》の読み札を考えるとしたら、どのようになるかを、考え、発表する。
発表
グループワークの最後におこなった、《ゲッセマネの祈り》の「読み札」を考えるワークでは、何とも詩的な「読み札」が発表された。例えば、「お月様だけがすべてを見ている宵」「迫りくる敵は目前、天に召される」「生と死をつなぐ男、深夜に祈る」「夢か現か、天使の羽音が聞こえるのは」等々である。これがヒントとなったのか、グループの発表はジェスチャーと台詞入りで発表することとなった。それぞれが配役を嬉々として決め、簡単な立ち稽古を行い発表にそなえた。本番は、アドリブ満載の楽しいなりきり寸劇が熱演された。
ファシリテーター感想
グループBでは、一枚の宗教画をもとに、「子どもたちに問いが生まれることば」について考えました。子どもたちが作品の中からお話を見つけたり考えたりするには、どのような手立てが必要であるのか、子どもたちの見方や考え方を充分に引き出す方策について、参加者の先生方と検討しました。しかし《ゲッセマネの祈り》は、宗教画であるだけに、その背景となるお話がチラチラと見えます。その中で、どのような言葉がけが、子どもたちの創造的な鑑賞活動を可能とするのか。短い時間の中で、なるべく沢山の見方や考え方に触れられるよう、グループ内をさらに少人数に分け、ワールドカフェ方式でグループを幾度か組み替えながら、議論を深めました。意欲的な先生方のおかげで、ファシリテーターの私が一番楽しい時間を過ごさせていただきました。有り難うございました!それにしても、アドリブ満載のなりきり寸劇は最高でした!B班の先生方に感謝申し上げます!
西村 德行
サブファシリテーター感想
昨年は受講者、今年はサブファシリテーターとして参加しました。作品は同じ《ゲッセマネの祈り》で、課題は「子どもたちへの問いかけの言葉を考える」でした。このグループワークを通して、前回と今回私が感じたことは、先生方が鑑賞教育で大切に考えるのは子ども達が感じたことを言葉にする、そして伝えあい成長することであり、学芸員の立場上伝えたい「作品はいつ誰がどんな目的で描いたのか」が、鑑賞の授業の中ではなおざりになっているということです。特に宗教画では重要なことなので、説明する時間を設け、関心を美術館に繋げてほしいと強く思いました。学校と美術館の連携も、この認識の違いがポイントになってくるのではないでしょうか。そのことが端的に示された時間だったように思えてなりません。2回の研修から学んだことを今後の仕事に活かしていく所存です。ありがとうございました。
木暮 和代
受講者感想(抜粋)
- 小学校教諭
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- 自己紹介もかねてのアートカードゲームで和んだところで活動に入ったので、その後の話し合いも盛り上がった。西村先生の個々への言葉がけに励まされ、意欲的に取り組めた。また子どもと一緒に見るための様々な見方、感じ方を伝えあえることが楽しかった。
- 1日じっくりと、一つの絵画について、たくさんの人の意見が聞けておもしろかった。子どもなら、何と言うだろう?何を感じるかな?といろいろな場面で考えることがあった。
- 学芸員
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- プログラムの仕掛けの面白さに引き込まれ、あっという間だった。一つの作品だけに集中したワークだったことも満足だった。発表も思い出深い経験となった。
- 内容は極めて質の高いもので、ファシリテーターの西村さんの準備や進行に支えられてとても刺激的だった。国立西洋美術館や東京国立近代美術館の床に座り、絵について全国各地の方と語り合うことに幸せを感じた。
- 指導主事
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- 一つの絵をじっくり見て、対話することで見方や感じ方がどんどん広がって変化していく体験に驚いた。見ること、話すこと、聞くことをじっくり時間をかけて行うこと。メンバーを変えて何回も絵を見ようとすることで、鑑賞が深まっていくことがあると実感できたことは、とても有意義だった。