グループワーク G

感動体験と楽しさを生徒に味わわせ鑑賞の指導を探求

Group G
受講者:
11名(中学校教諭7名、学芸員3名、指導主事1名)
課題作品:
クロード・モネ
[パリ1840年-ジヴェルニー1926年]
《睡蓮》1916年
油彩・カンヴァス 200.5 x 201 cm
国立西洋美術館蔵
>> 作品解説はこちら
ファシリテーター:
田中 晃(川越市立美術館 主任)
サブファシリテーター:
関 聖美(国立国際美術館学芸課 事務補佐員)

《睡蓮》


活動内容


見つめること、考えることを体験しながら鑑賞
【前半】よく見て考える活動から鑑賞の姿を探る
  1. 一緒に見るための準備…手元を見ないで相手の顔を描く。普段、何かを見つめる時間がどのくらいあるか?互いに描いた顔を交換して自己紹介。描かれたユーモラスな顔から緊張がほぐれ、コミュニケーションの一歩が始まる。しかし、これは単なるアイスブレークではなく「見る活動」の導入となる。
  2. 絵の一部分をトリミングしたカードから作品を探す。色味で探しつつも筆致で確認したり、全体との比較で見たりして絵の中をくまなくよく見ている。よく見てイメージをつかんだところでタイトルを付けてみると、その人の感じたことや鑑賞の視点がよく見え、気持ちが理解できる。
  3. タイトルを紹介し語ることで、他者から共感や異なる見方が生まれてくる。いっしょに見て考えると、また見直しの繰り返しでどんどん鑑賞が深まったり変化したりする。こうして午前中は見つめること、考えることを体験しながら「鑑賞」に迫った。


授業における「ねらい」や美術館との連携を
話し合う
【後半】鑑賞の指導および学校と美術館の連携を探る
  1. 学校と美術館それぞれの鑑賞教育や連携について、思うところや課題、期待を付箋に書いてもらいカテゴリー別に分ける。その中から課題を見つけ設定し、創造的な鑑賞と作家、作品に迫る鑑賞に分かれて話し合う。
  2. 作品の中に入って会話を考えたり、そこからの景色を楽しんだりして対話を広げる創造的なスタイル、作品の特徴を探りモネ自身や印象派の作品を紐解いていくスタイルなど、生徒の実態や発達を考えながら「ねらい」をどう設定するか双方のアイデアや意見からさまざまなことが導き出される。
  3. 創造的に広げる鑑賞とモネや印象派を追求する鑑賞など、中学校3年間を見通した鑑賞の指導のあり方を工夫することで、より多くの美術好き、美術館好きが生まれるようにしたい。学校と美術館の連携について実践も踏まえてアイデアなど情報交換してまとめた。


発表

発表は、前半の活動と後半の2グループによる3つの活動について報告した。


[前半の活動]

作品の一部からどれかを探す、タイトルを付けるなどさまざまな鑑賞の視点や方法を体験しながら対話を広げていった。中学生になった気持ちで見てみると新たな気づきがあり、他の方の意見に「なるほど」とうなずくことが多々あった。

[後半の活動1]
作品の中に入って自由な対話を楽しんだり、好きな作品を選んで理由を述べたりするなど、学年に合わせて設定を考えていく等のアイデアが出た。

[後半の活動2]
一人の作品なので共通点から印象派の特徴やモネの人物像、造形的な要素に迫るなどして生徒の生きる力につなげたいという意見などが出た。


ファシリテーター感想

モネの作品は、誰でも一度は教科書なり資料集で見ているだろう。また指導者としてもどこかで鑑賞の指導や、自分自身の鑑賞の対象として触れてきたことがあると思う。そのため、誰もが何かしらの知識や情報を蓄えている対象といっても過言ではない。となると、指導者はどこに視点やねらいを持ってモネの作品を鑑賞するだろうか?予め蓄えた知識に従ってモネ自身や印象派について語ったり、技法について解説したりするかもしれない。もちろん指導者として作品に対する思いを伝えることはごく自然なことである。
しかし今回、一日たっぷりとモネの空間に包まれて作品と対峙し話し合ったことで、純粋に作品を見つめることや自由な見方から新たな発見や感動を覚えるなど、これまでにないことを感じ、作品に対する親しみが更に湧いたことと思う。自分の感動体験と楽しさを生徒に味わわせる素敵な鑑賞の指導を探求していただければと願う。

田中 晃

サブファシリテーター感想

Gグループでは、全ての作品のキャプションが隠されていたこともあり、ほとんどの方が一度はみたことのあるモネの作品が新鮮なものに感じられ、また、じっくり時間をかけ対話を通して鑑賞したことにより、作品の新たな魅力を発見できたと思います。終始穏やかな雰囲気で活動は進んでいきました。中学生の発達段階や求めることを考慮しながら美術館での具体的な鑑賞活動を考えることは、容易ではありません。学校側の課題もあれば、美術館としての思いもあります。そのような普段皆さんがお持ちの意見を他業種間で交換することで得られた収穫も各々にあったのではないでしょうか。そして何より、「本物の作品の前で、参加者の皆さん自身が中学生になりきり、鑑賞に没頭した」というめったにない体験自体が、中学生の鑑賞を考えるうえでのきっかけとなり、今後何らかの活動に役立てて頂けるのではないかと感じました。私自身も今後の糧にしていきたいと思います。

関 聖美





受講者感想(抜粋)

中学校教諭
  • モネの部屋でじっくり作品を間近で見ることができ、また座って話ができたことがとても貴重なので、贅沢な時間を過ごしたと思う。進め方や導入も面白く、授業でやってみたいとどんどん想像が膨らんだ。
  • 展示室を使って、作品に囲まれながらの活動は本当に豊かなものだった。対話型は自分の見方で自由に話すことができるので安心感がある。対話型鑑賞は、温かい雰囲気をつくりあげ、初対面にかかわらず距離が近く感じることができた。
  • 様々なアイディアを得ることが出来、鑑賞の際の言葉の投げ方も参考になった。
学芸員
  • グループメンバーには消極的な方もいたので、意見交換が上手に進まなかったのが少し残念だった。
  • ファシリテーターの方の進行がとても良かった。
指導主事
  • 時間がたっぷりあってよかった。教員だけでなく、美術館関係者もメンバーだったので、多様な話が聞けたのはとても素晴らしく、有意義であった。

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