グループワーク J
中学生にとっての鑑賞とは?
- 受講者:
- 11名(中学校教諭7名、学芸員3名、指導主事1名)
- 課題作品:
- ヴィルヘルム・ハンマースホイ
[1864年-1916年]
《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》1910年
油彩・カンヴァス 76 x 61.5 cm
国立西洋美術館蔵
>> 作品解説はこちら - ファシリテーター:
- 松永 かおり(東京都教育庁 指導主事)
- アシスタント:
- 亀井 愛(三井記念美術館 教育普及員)
活動内容
「作品の賛否から中学生へ向けた鑑賞教育の在り方に迫る話し合いへ」
ワーク内容
(1)これまでの鑑賞の取り組みや、美術館と連携した経験等について自己紹介
(2)学芸員が進行することを前提としたギャラリートーク(サブファシリテーターが進行)
(3)授業やワークショップ等のためにこの作品を用いることを前提としたギャラリートーク(ファシリテーターが進行)
(4)ファシリテーターが用意したワークシートを記入
(5)二つのグループに分かれ、ワークシートに基づいた意見交換
ワークシートの項目
(1)この作品を題材として選定する利点は?難しさは?
(2)授業として鑑賞する作品を選定する際に気を付けることは?
(3)中学生にとっての鑑賞とは?
(4)効果的な美術館との連携とは?
最初は「なぜ、今回この作品が選定されたのか?」という疑問を持ちつつも、ギャラリートークを通して作品の良さや美しさ、面白さ、などの特徴を捉え、そこから「この作品は中学生にふさわしいか?」という話合いに発展し、「何年生を対象とするか?」「どのような作品を選択すべきなのか?」「鑑賞によって何を身に付けさせるのか?」「充実した連携にはどのようなことをするべきなのか?」と、鑑賞教育の本質に迫る話題へと発展していきました。
発表
具体的な成果物を作成することはできませんでしたが、活発な意見交換ができたグループワークとなりました。作品そのものに対する意見は賛否ありましたが、その答えを出すことが目的なのではなく、「この作品が中学生の鑑賞にふさわしいか否か」をきっかけとした話し合いから、教員や学芸員として子供たちに作品を鑑賞させる際に大切にしたいことを確認することができました。また、途中で、この「ピアノを弾くイーダ」とその隣の作品との関係を知ることで「新しい知識を得て鑑賞すると、見方や感じ方が大きく変わる」ということを体験し、中学生に知識を与えるタイミングについても考えました。
ファシリテーター感想
連携に対する経験値は様々でしたが、「中学生への鑑賞」という共通項から、学校や子ども達の実態に応じて連携の形や作品を選定すること、学芸員の方とどれくらい打合せを行い、どのような場面で具体的に連携するのかを確認できました。学芸員の方からも、「中学生への鑑賞が難しい」との声があり、発問の工夫や、「なかなか発言はしていないけれども自分なりにきちんと鑑賞し、意見をもっている生徒」のみとり方などについて話題が発展しました。私自身が作成したワークシートを盛り込みすぎ、話合いの時間が足りなかったことを申し訳なく思っています。これからの皆様の各地域での御活躍をお祈りしています。
松永 かおり
サブファシリテーター感想
Jグループは、全国各地から集まった受講者の考えやニーズをつなぎ合わせ、交流することが主眼となったワークだったと思います。受講者の多くが現場での豊かな経験を持ちながらも、それぞれの環境で苦心されており、ハンマースホイの作品を出発点に、中学生の鑑賞と美術館との連携について、全員で、またグループで共有し、考え、深めることを繰り返した1日でした。松永先生の的確なファシリテートはもちろん、教員経験のある学芸員の方が積極的に発言してくださったこともグループワーク充実のポイントだったと思います。具体的なプログラムを作るまでには至りませんでしたが、ディスカッションを通して、どのように美術館を活用していきたいのかを整理し、また美術館側からどのような提案ができるのかを考える貴重な4時間でした。参加者のみなさんの意識が高く、時間が大変短く感じました。
亀井 愛
受講者感想(抜粋)
- 中学校教諭
-
- 自由に話せる雰囲気をファシリテーターの先生方が作って下さり、発表しやすかった。また、二つのグループに分けて少人数になったことも良かった。
- 生徒の思いを引き出す発問の内容がいかに重要かを感じた。また、教師自身がしっかりと狙いをもって進めることの大切さもわかった。
- 他県の先生方と意見を出しながら、一つのテーマについて話し合えたことが刺激となった。
- 鑑賞において人の意見を聞くことや、作品の見せ方によって、絵の見方が変わるという体験をすることができた。
- 学芸員
-
- 話し合いの中で多様な考えやアイデアを知ることができました。
- 十分な時間を取って様々な地域と職種の方と話し合える機会は貴重だった。鑑賞が何か具現化できたことは大きな収穫だった。