グループワーク G

絵の中を訪ねて感じたことを言葉と音にのせて伝え合う

Group G
課題作品:
近藤浩一路 《鵜飼六題 (浴泉) 》 1923年
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近藤浩一路 《鵜飼六題 (黄昏) 》 1923年
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近藤浩一路 《鵜飼六題 (夜凉) 》 1923年
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近藤浩一路 《鵜飼六題 (残燋)》 1923年
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三谷十糸子 《夕》 1934年
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近藤浩一路 《鵜飼六題 (深潭)》 1923年
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※研修期間中は展示されていないが、活動中に参照。
近藤浩一路 《鵜飼六題 (飛汀) 》 1923年
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※研修期間中は展示されていないが、活動中に参照。
受講者:
10名(小学校教諭6名、指導主事1名、主査1名、主事1名、学芸補助1名)
ファシリテーター:
小野 範子(茅ヶ崎市立小和田小学校教頭)
サブファシリテーター:
亀井 愛(三井記念館美術館教育普及員)

活動内容


日本画の細部に目を向けてイメージを広げた

1.

自己紹介の後、ウォーミングアップとして、三谷十糸子の《夕》の作品について全員で鑑賞した。この作品を選んだ理由は、瑞々しい子どもの姿と日本画特有の色彩に注目して、日本の美術文化を鑑賞する扉を開きたかったから。二人の関係、季節、場面など感じたことについてイメージを広げ、細部に目を向けることでさらに見えてくることや感じたことを共有した。



班ごとに作品を決めてディスカッション

2.

サブファシリテーターの亀井さんから日本画の顔料、膠、墨の種類、掛軸について、寺崎広業の《渓四題》を見ながらレクチャーを受けた。墨の豊かな色の世界を味わい、掛軸、巻子や屏風など独特な表現形式などの知識を得たりすると、さらに興味が広がるということを共有した。

3.

午後からは、本題の近藤浩一路の《鵜飼六題》についてキャプションを隠し全体で鑑賞をした。まず、右から三番目の作品は火が燃えていて、砲弾が飛び交う戦闘シーンに見えることや連作なのではないかなど気がついたことを揚げ、共有した後、分かれた班ごとに一作品を決めた。



絵の中に自分を飛ばして膨らんだイメージを
書き出す

4.

班ごとに、今回のテーマ「絵の中を訪ねる」ために絵の中にもう一人の自分を飛ばして、そこで見えたことや「耳を澄まして」聞こえてきた声、会話、音、音楽、膨らんだイメージを模造紙にまとめた。


5.

班ごとに見えてきた光と影、動き、聞こえてきたこと、風のながれ、様々なにおいを感じ取り、鵜の気持ちになったり、鵜匠の気持ちになったりしたことを発表した。特に大漁を祝う歓喜の宴の様子や、鵜へのねぎらい、白々明けてくる夜明けの柔らかい様子は音にのせることでより深く伝わった。全体で共有することにより、つながりに注目が集まり、4面ではなく他のシーンの作品があるのではないかなどの気づきも出てきた。



発表

心にこだまする詩の世界がつくりだされた

4面の絵から見えたこと、聞こえたことを鑑賞し、感じたことを言葉と音にのせて発表した。「真ん中の色が濃くなっているのが池、周りは石がごろごろしている。鵜飼の練習風景。鵜匠たちが火を囲んで漁の作戦会議。色の明暗の対比。人の営みが感じられる。鵜飼の漁が終わった場面。大漁を祝う歌。男たちは陸に引き上げる。池は静まる。人々の歓喜。祭りの音だけが響く。打ち上げられる花火、火の玉。盛り上がって、フィナーレを迎える。祭りのあと、かがり火の周りに集う鵜と鵜匠。空気はひんやり、かがり火が暖かさを感じさせる。風は右から左へ流れる。白々と夜が明ける。」

グループワーク講評

視覚だけでなく複数の感覚を働かせることで、鑑賞体験が記憶に深く刻まれました。またストーリー仕立てを上手く発展させると、子どもたちが絵の世界に飛び込みやすくなります。特に水墨画のような作品の場合は有効性が高そうです。但しストーリーは子どもから発信させること。ふだんは指導者と児童という関係性ですが、子どもたちの世界に立ってみることはやはり大切です。参加者が楽しみながら子どもたちに近接した様子が伝わりました。

東良 雅人


ファシリテーター感想

Gグループは、二つの鑑賞の扉を開けました。
一つは、音の世界に踏み込んだことです。普段の美術館では音を出すことは許されませんが、特別に許可をしていただきました。絵から膨らんだイメージを言葉で表すことに加えて、音にのせることにより、美しい墨の世界を味わい、全員で深い鑑賞をつくりました。また、「発表」は感動的で、身体全体の感覚を働かせるよさを伝えることができたと思います。
もう一つは、日本の美術文化への興味を開いたことです。日本画に関してサブファシリテーターの亀井さんが、岩絵の具の原石や様々な色の墨を持参して、分かりやすく解説をしてくださいました。実際に手にすることもでき、貴重な体験になったと思います。私にとっても、計画の段階から亀井さんと協働することで世界が広がり、贅沢な時間を過ごすことができましたこと、心から感謝申し上げます。

小野 範子

サブファシリテーター感想

Gグループは、全員で、少人数で、目で“みて”、言葉にし、その言葉を“音”で表現し、共有することを繰り返し、作品に迫った1日でした。小野先生の素晴らしいファシリテーションで、全員で絵を読み深めていく楽しさを共有したあと、日本美術について学ぶウォーミングアップを行ったうえで、本題材に取り組んだこと。グループ内に音を使った鑑賞教育を実践されている先生がいらっしゃり、具体的な実践事例と意見を出してくださったことは、グループワーク充実のポイントだったと思います。音具を使って、他の参加者の意見を聞きながら、音を積み重ねていく作業は、難解と思われがちな日本美術を理解し、鑑賞を深めていくツールとして効果的だと改めて思いました。サブファシリテーターとして至らない点も多々ありましたが、私にとって鑑賞に対する考えを捉え直す貴重な機会となりました。本当にありがとうございました。

亀井 愛





受講者感想(抜粋)

小学校教諭
  • 水墨画から感じること初めはどうしたらいいのか悩んだが、グループの方の話をきき話し合う中で活動が楽しくなった。音をつけること、物語を考えること、言葉を考えること...音楽の授業ではよくやっていたが、図工の鑑賞の中にも生かせることを知ることができとても役立った。さっそく2学期以降実践していきたい。
  • 日本画をじっくり鑑賞することができた。更に日本画に詳しい美術館の方からも解説をいただき大変充実していた。今回水墨画でこんなにもバリエーションがつくれることを学んだ。
学芸員
  • ギャラリートークをしながらじっくり鑑賞ができた。4枚の作品から物語と音を作るという試みが面白い切り口だった。
  • 作品をじっくり見るということを久しぶりに体験でき、どのように鑑賞を進めていくと楽しく学びができるかを考えることができた。
指導主事
  • 指導者としてではなく学習者としての活動はとても楽しく有意義な時間を過ごせた。ファシリテーターの小野先生の語りがやわらかく、自分からやってみようと思わせる仕方が参考になった。

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