グループワーク J

子どもを育む鑑賞について考える

Group J
課題作品:
大岩オスカール《ガーデニング(マンハッタン)》2002年
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勝又邦彦《Skyline 100280》 2003年
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勝又邦彦《Skyline 101070》 2004年
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勝又邦彦《Skyline 101170》 2004年
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勝又邦彦《Skyline 101030》 2004年
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勝又邦彦《Skyline 100531》 2004年
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勝又邦彦《Skyline 100600》 2004年
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勝又邦彦《Skyline 101420》 2004年
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佐伯祐三《ガス灯と広告》 1927年
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畠山直哉《川の連作》 1993-1996年
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受講者:
9名(小学校教諭5名、指導主事1名、学芸員3名)
ファシリテーター:
南 育子(墨田区立業平小学校教諭)
朴 鈴子(京都国立近代美術館学芸課 研究補佐員)

活動内容


作品に散らばった情報を整理
1. 自己紹介(20分)

48色のカードを使用し、今日の気分を表す色を選び、その色に対する自分のイメージをかけて自己紹介しながら、造形要素の1つである色に注目した。色に対するイメージが個々の生活に結びつけられ和やかに展開された。


2. 対話型鑑賞体験(50分)

《ガーデニング(マンハッタン)》を全員で鑑賞。まずは知識的な情報は伏せ、作品にある「色、形、質感、構成、空間、視点」などの情報のみに注目した。そのあと、「個人で見る」→「集団でお互いの見方を交流」→「個人で見て、感じて、考える」鑑賞を行った。途中、見る位置を変え細部から全体へと視線を移した。これにより対象作品を鑑賞する上で重要な要素となる「画面にある空間」が注目され、作品から感じ取れるテーマ性に迫っていった。最後にタイトルを伝え、その言葉の意味することと作品から感じ取ったことを結びつけながら、新たな見方の探求につなげた。



どのような鑑賞授業ができるか話し合う


作品から感じ取れるテーマを追う
3. グループワーク1(60分)+発表(20分)

4~5名のグループになり、作品にある事実とそこを根拠にどのような見方ができるのか、個々の考えを持ち寄った。作品に散らばった情報を整理し、この作品でどのような鑑賞授業ができるのか、実際の子どもの姿を念頭にシミュレーションし、発表した。

4. グループワーク2(60分)+発表(20分)

3名のA~Cまでのグループになり、「子どもと一緒に鑑賞する」というステージに立ち、課題作品(A班:勝又邦彦《Skyline》、B班:佐伯祐三、《ガス灯と広告》、C班:畠山直哉、《川の連作》)を以下の問いに基づいて話し合った。
① はじめに子どもに投げかける問いは?
② この問いによって子どもが働かせる力は?
③ どのようなねらいをもち鑑賞の授業をおこないたいか?
各グループが作品前で問いへの回答を発表しながら、この作品を通じてできる鑑賞やそのあとの活動ついてアイデアを話した。


5. 振り返りと全体発表の準備(20分)

最後に全員で全体発表の際の発表者を決め、グループワーク全体の振り返りを行った。「子どもと鑑賞する」という指導的立場から解き放たれ、グループワーク中には気づかなかった見方やアイデアが飛び交った。


発表

発表はグループ内の代表者が行った。グループワークで行った一連の活動内容についての発表があった。一つ目のワークでは、《ガーデニング(マンハッタン)》の「気になる部分」について枠状の紙を通してその部分をシーンのように捉える鑑賞や、見えることから想像したことをどんどん言い合ったあと、作品から広がる続きの絵やストーリーを考えてもらう鑑賞授業を考えた。二つ目のワークでは、異なる課題作品で各々のグループが、好きな空、見たことない空について知る鑑賞や、作品の中の止まっている事物から時間軸に沿って動きを想像する鑑賞、最後に想像力、比較する力を働かせるために作品の部分を見せたり、鑑賞後にフィールドワークを伴う活動を考えたりした。

グループワーク講評

鑑賞前にユニークな自己紹介をされたようですが、これは実は子どもたちの場合でもとても大事です。関係性を築くことで、互いの見方・感じ方の共有に通り一遍でない有機的な繋がりが生まれるからです。また抽象的イメージを時間や場所という切り口から子ども自身の生活体験と重ねて分析する手法も有効でした。そのためには子ども同士だけでなく指導者も彼らの実状を把握し、それを美術館と共有することで学びの連携が深まると感じました。

東良 雅人


ファシリテーター感想

Jグループが活動した展示室は小企画展示室で、この部屋にはテーマがあり、「ガーデニング(マンハッタン)」に関連した作品が意図的に展示されていました。展示室全体をみれば、企画者の企画意図も作品のように空間が構成されています。いろいろな広がりを予感させる展示室でもありますが、1つの作品をじっくり見る鑑賞体験からグループワークを始めることにしました。この共通体験により「一人ではなく、みんなで見ることで感じ取った鑑賞の手応え」や、話し合われたことを「子どもを育む鑑賞を考える」手がかりにしていただきたいと計画をたて、環境設定をしました。午前は緊張感あるスタートでしたが、絵にある出来事にいろいろな方向から踏み込み、たくさんの視線や会話を交差させる姿がありました。この活動のすべてに鑑賞の授業をつくるポイントがあると実感しました。午後は、職種の違いはあれど、「子どもを育む鑑賞を考える」を子どもの姿を思い描きながら考えるグループワークをしていただきました。昼食時のリラックスした会話からでしょうか、すっかり表情もかわり、たくさんのアイデアが生み出されていました。一緒にこのグループワークをつくりあげたJグループのみなさまに感謝申し上げます。朴さんと一緒に考えた計画の過程そのものも貴重なものとなりました。ありがとう!!

南 育子

ファシリテーター感想

Jグループのグループワークで印象的だったことは、皆さん共通して「(鑑賞において)子どもの見方は自由だ」という考えを持っていたということです。鑑賞の対象作品を見て授業のアイデアなどを共有する時も、子どもたちの多様な発見、自由な想像力に期待を寄せながらも、育った時代、地域、環境、経験なども考慮して、鑑賞の可能性について最大限に話し合っていただけました。
Jグループは東京国立近代美術館の小企画展示室全体を使ったグループワークを行ったのですが、「都市」をテーマに企画された展示空間で、課題作品はグループ毎にバラバラでしたが、目に飛び込んでくるイメージに共通要素がとても多かったと思います。そんなワークの中でもしっかり作品毎の特徴を観察し、多様なアイディアを発表してくださいました。
私よりも経験豊富な皆さんが、拙い私のファシリテーションに最後まで参加くださったことに、心から感謝したいと思います。あと、同じファシリテーターの南先生と議論を重ねた経験は、今後の美術館での活動でもしっかり役立てたいと思います。

朴 鈴子


受講者感想(抜粋)

小学校教諭
  • 1枚の作品についてみなさんといろいろと話ができて楽しかった。また授業にどう生かせるかも話し合うことができ、実践にもつながる活動だった。
  • 一枚の絵から真剣に考えることができた。他の人の意見を聞いて自分とは異なる考えを知り、ためになった。
  • いろいろな立場や環境からの意見や取り組みを知り、深め合うことができてよかった。
学芸員
  • たっぷりと時間をかけて、一緒に考えることができてよかった。
  • 実践的で良かった。
指導主事
  • 鑑賞しながら、皆さんとの意見交換はとても楽しく、それにより自分の作品への見方を変えることがあった。子どもにもこの楽しさを感じさせたいと思う。

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