グループワーク I

中学生と一緒に考える哲学~人間って何だろう?
世界って何だろう?

Group I
課題作品:
シュテファン・バルケンホール《大きな頭部と3枚からなる黒レリーフ》2007年
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ゲオルク・バゼリッツ《自画像Ⅰ》1996年
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モーリス・ルイス《神酒》1958年
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受講者:
11名(中学校教諭7名、学芸員4名)
ファシリテーター:
山田 一文(埼玉県立総合教育センター指導主事)
サブファシリテーター:
横山 佐紀(国立西洋美術館学芸課 主任研究員)

活動内容


授業やギャラリートークのプログラムを作成

学習活動の流れや働きかけを考えた

自己紹介のための作品鑑賞

1. ファシリテーター、サブファシリテーター自己紹介(5分)

2. 課題作品3点の紹介、3グループになり自己紹介のための作品鑑賞(5分)

3. グループメンバー自己紹介(30分)
例:「この作品を○○のように解釈した、○○の○○です。」(3分)

4. グループワークの提案(20分)
・中学生に、ここの作品を使った授業やギャラリートークのプログラムを作成する。
・作成するプログラムは、学習指導要領が示す鑑賞の内容に準ずるものにする。
・作品や作者に関する情報を提供するので、プログラムの作成に活用する。
・プログラムは、まずグループ内で行うので、具体的なものを作成する。

解説には「自分がこの世界に生きているということを、どのように確認し、そして、それをどのように伝えていくかという哲学」とある。作者がとらえている世界・人間・自分と、中学生が見ている世界・人間・自分の関係を意識させることで、作品を味わうヒントを得ることができるのではないかと考えグループワークテーマの紹介をした。必要な情報を適時に与えて中学生ならではの、哲学の議論ができたらいいと思う。また、中学校の先生は、美術としてどのような生徒を育成して社会に送り出すべきなのかを考えていかなければならない。

5. グループ内グループの活動Ⅰ(40分)
・資料の読み込み、情報の整理
・学習活動のイメージ作りとその共有
・学習活動の流れや、具体的な働きかけ、提示資料の作成等

6. グループ内グループの活動Ⅱ(50分)
シミュレーション

7. グループ内プログラムの実施(60分)
プログラムを行うグループ以外は生徒役

8. グループワークのまとめ(40分)
感想や意見の交換、全体発表の準備


発表

1. グループワークの報告

  • 《大きな頭部と3枚からなる黒》少人数の話し合いから考えを深める取組み。
  • 《自画像Ⅰ》付箋のコメントから話題を膨らませる取組み。
  • 《神酒》対話型鑑賞を活用した取組み。

2. グループメンバーの感想の発表

  • 美術館で生徒に、どう話すのか、どのような情報を提供すればいいかがわかった。
  • 意見を引き出すコツとして、グループで話し合わせるのが有効であった。
  • 現代美術は、意見を求めたり考えさせたりするに有効と思った。特に、生徒に感想を持たせるという点で。もやもや感を残せて、これから子どもたちがずっと考えていけるのがいいと思った。
  • 美術館では、立体の作品をいろんな角度から見られるのがよい。
  • 知識よりも自由な見方を引き出せるほうがよい。ただ、評価するとなると難しい。
  • 本物を見せることの大切さを再認識した。適切な発問で、生徒が作品と対話できることに感動した。

グループワーク講評

対話型鑑賞は、個人の経験や体験に基づくことを重視するものなので、教師の価値観と子どもの価値観とのあいだに優劣はありません。言葉で上手に表現することはできなくても、もしかすると、子どものほうが、感性豊かかもしれません。ということは、対話型鑑賞においては、子ども扱いしない問いかけが重要になってくるのではないでしょうか。子どもと一緒に作品を分析する、考えるという視線で対話すると面白い鑑賞になると思います。

三澤 一実


ファシリテーター感想

Iグループの活動の特徴は「生徒向けのギャラリートークづくり」に「大人向けの説明」加えたことでした。トーカーは、生徒向けの発問の時は先生でしたが、大人向けの説明の時は新鮮な驚きや感動をもつ鑑賞者でした。その内容も大変興味深く、鑑賞する心を刺激してくれました。そこで、考えたことですが、中学生はもっと大人扱いしてよいのではないのでしょうか。今は幼い考えであっても、一人の人間として対応することでこれからの価値観を刺激できると思います。美術と社会との関わりについても同様です。中学生に、中学校卒業後、美術に対してどういう態度をとる人になってほしいのかを人間として伝えていかなければならないと考えました。学校の美術と違って世の中の美術は多様。その多様な美術に学校の美術はつながっていることをもっと意識する必要があると思いました。Iグループの皆さんと楽しく過ごせて幸せでした。感謝いたします。

山田 一文

サブファシリテーター感想

三つのグループに分かれての授業案づくりの間は、担当する作品と資料の間を行ったり来たり。いざ発表となったら、中学生のことばを引き出すような質問や、体を使って見る試み(両脚の間から作品や天井を見てみよう!)など、作品との実に生き生きとしたやり取りが交わされました。「学校側のニーズを知りたい」という動機で参加した学芸員の方にとっても重要な機会となったのではないでしょうか。
山田先生が提案した課題のひとつが、「中学校で義務教育が終わり、全員が受ける美術の時間はなくなる。中学校の美術の教員としてどのような生徒を育成して社会に送り出すべきなのか」というものでした。それは教科としての美術ばかりでなく、美術館における教育のあり方にも関わる重要な問いだと思います。時間は限られていましたが、このような基本的な問題を考えるきっかけを与えてくれたグループワークとなりました。

横山 佐紀


 

受講者感想(抜粋)

中学校教諭
  • 短時間の中でそれぞれの立場の先生方の考えや指導方法など交流させていただき大変勉強になった。
  • ギャラリートークを自分自身が体験したことがなかったので大変勉強になった。本物を見るということの大切さを実体験できた。
  • 実際に授業の展開例を示していただき大変参考になった。
学芸員
  • グループ内で実際に模範的は鑑賞授業をしたことで具体的な課題、必要なスキルなどが明確になった。時間がもう少し長くとれれば互いの活動の評価もできたと思う。
  • グループでの意見交換は大変有意義だった。
指導主事
  • 新しい手法や考え方を知ることができ大変勉強になった。

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