グループワーク 松永グループ
ポスターを題材とした中学生の鑑賞
- 課題作品:
- 亀倉雄策
《東京オリンピック》 1962年
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- 受講者:
- 10名(中学校教諭7名、指導主事1名、学芸員2名)
- ファシリテーター:
- 松永かおり(町田市立金井小学校 副校長)
- サブファシリテーター:
- 江藤祐子(三菱一号館美術館 学芸員)
活動内容
1. 1964年東京オリンピックポスターのギャラリートークから
中学校ではポスターを題材とした授業がよく行われます。また、2020年の東京オリンピック開催へ向けて、本作品は生徒にとっても話題性のある作品だと考えての選択です。 参加された先生方も、本作品を見たことがあるという方が多かったことから、最初のギャラリートークは比較的スムーズに行われました。 オリンピックというテーマに基づくデザイン性、1964年という時代背景から感じられる製作の過程に関する意見など、じっくり鑑賞すればするほど新しい発見や気付きが生まれ、時間を忘れて対話が進みました。 今回特に気をつけたことは、ファシリテーターが教員、サブファシリテーターが美術館の学芸員の役割を分担してギャラリートークを行ったことです。 全体の進行は美術館に生徒を連れてきた教員の立場で私が行い、作品に関する新たな情報や作品の見所を伝える場面は江藤さんに活躍していただきました。 また、みなさんに参考資料として配布したものは、東京国立近代美術館工芸館学芸員の今井さんから御提供いただいたことも紹介しました。 後半は、生徒が本作品を鑑賞した場合の予想される反応、授業のねらいや展開について話し合いました。 例えば、大人であれば1964年の情況がある程度予想できることから、CGで作られたものではないこと、高度経済成長の時期であることなどを手掛かりとしながら鑑賞できるが、 現在の中学生にはその知識等が無いことから、必要な情報をどの時期にどの程度与えるべきなのかなどということも議論されました。 その後は、ギャラリートークの経験を踏まえ、鑑賞プログラムのねらい、指導の流れ、連携のあり方、評価などを大切にしながら三つのグループに分かれて作品を選び、 中学生向けの鑑賞プログラムを考えて発表し合いました。
発表
ギャラリートークの経験を踏まえた鑑賞プログラムの作成
岡本太郎「燃える人」を用いた美術の授業としてのプログラムを二つ、東京国立近代美術館の常設展全体を用いた総合的な学習の時間のプログラムを一つ考えました。
いずれの内容も、美術館との連携は美術館を訪れる当日だけでなく、事前学習の段階からの連携の仕方を大切にしました。
また、プログラムで生徒に何を学ばせたいのかを事前に明確にし、それを学芸員の方に事前に伝えること、ねらいに応じた鑑賞の手だてとしてどのような事が必要なのか、
また、評価はどのように行うか、など、各グループで工夫しながら取り組みました。
グループワーク講評
中学校になると、デザインや工芸などの活動を通した学習が始まります。
鑑賞では絵画や彫刻がメインになりがちですが、こういったポスターなどもぜひ取り上げていただきたいものです。
ポスターは、伝達という目的をもった表現ですので、子どもたちに「他者」を意識させるということが大事になってきます。
また子どもたちは、現代の感覚でこのポスターを見ますが、これは1964年のオリンピックに向けてつくられたものです。
子どもたちにどういった視点を与えると、時代や意味を考えるきっかけとなるか。
例えば、このポスターに「TOKYO1964」とありますが、「オリンピック」という言葉は一言も使われていません。
なぜそうしたんだろうね、という投げかけから考えを広げることができるかもしれません。
常にヒントは作品の中にあります。後は、いかに先生方が「子どもはどう考えるんだろう」という指導者としての視点を持つことが大切です。
東良 雅人
ファシリテーター感想
東良先生の講演の直後にグループワークが行われたことから、みなさんが鑑賞で大切にしなければならないことをしっかり理解してくださっていたことが印象的でした。 私は、課題作品を選ぶ際、サブファシリテーターと話し合いながら出来るだけ先生方の日常の授業に繋げることができるものを選ぶよう心がけていますが、 今回のポスターは、独立した鑑賞の授業はもちろん、表現の授業にも関連が深く、生徒の姿を具体的にイメージしながら話し合いを進めることができたと思います。 また、生徒の姿について語る際のみなさんの熱い姿に感動しました。 グループワーク進行に当たっての、みなさんの御協力に感謝です。今後の各地区でのご活躍をお祈りしています。
松永かおり
サブファシリテーター感想
今回サブファシリテーターを担当させていただき、私自身再認識することができたのは、鑑賞者の年齢や活動の目的に合わせてファシリテート方法をいかに変えるか、 鑑賞者にかける言葉の選択の重要性、そして鑑賞者の言葉を前向きに聴くことの大切さでした。 特に「聴くこと」については、日常生活の中で私たちの周りに常にある「傾聴の機会」にきちんと向き合うことを、あらためて意識するきっかけになりました。 また、学校とより密に連携して行くために、美術館の姿勢として、美術館が持つ情報を可能な限り発信していくこと、 たとえ制約があっても、先ずはできることから始めて行くことが必要ということに、あらためて気付かされました。 ファシリテーターの松永先生をはじめ、全国各地から集まった熱心なグループメンバーの皆さんと意見交換させていただいて、とても貴重な機会でした。ありがとうございました。
江藤祐子
受講者感想(抜粋)
グループワークのご意見・ご感想
- 中学校教諭
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- 実際に自分自身が生徒の立場になって鑑賞を行う活動だったので、自分の指導の在り方がどうだったのかが良く分かりました。
- 子どもの目線や鑑賞する立場に立って考えることができたので楽しかったです。
- グループによって内容がかなり異なるものであったが、発表で共有する事ができてよかった。
- 学芸員
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- 学校の先生方の視点(年間における取り扱い方、他教科との関連)を改めて強く感じた。
- 「作品に関する知識を与えてくれるのが学芸員」であるという先生方の認識など、先生側の考え方と学芸員側の考え方とで思考が異なっているところに難しさを感じた。
- 指導主事
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- 様々な立場の方々と鑑賞という一つの目的でグループを組む事により、自分の見方を広げられた。
グループワークの経験を、現場でどのように生かしたいと考えますか
- 中学校教諭
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- 作者の発信していることを受け取るということをテーマに組み立てたので、美術館につれていくことは現状難しいと思いますが、そのつもり(本物を見た時に感動できるよう)で授業展開をしたい。
- 生徒の視点に立って、また生徒にどのような力をつけさせたいのか「ねらい」をもって鑑賞の授業を積極的に取り入れていきたい。
- 「美術」は文化であり文化は多岐の教科にわたっているので、教育が必要だと思う。生徒の人数のことを考えると、「有効的」に鑑賞するには学芸員や同僚の助けが大切だと感じた。
- 美術、図画工作の時間にギャラリートークをやってみたい。
- 学芸員
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- 授業、ギャラリートークでも主たる一名のみの進行には偏りが生まれやすいのかもしれないと感じた。周囲との協議、細やかな計画が必要不可欠だと思う。
- 学校と美術館とで連携したプロジェクトをつくっていく際に、活動のねらいを決める→適した作品を選ぶ→活動内容を考える、という順序で考えていくやりかたを生かせると思う。
- 指導主事
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- 学校、美術館の橋渡し、具体的なアドバイスを各々に行う。