グループワーク 09

中学生にとっての鑑賞とは

Group 09
受講者:
11名(中学校教諭9名、学芸員2名)
課題作品:
ヴィルヘルム・ハンマースホイ
[1864年-1916年]
《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》1910年
油彩・カンヴァス 76 x 61.5 cm
国立西洋美術館蔵
ファシリテータ:
松永 かおり(東京都教育庁 指導主事)
アシスタント:
稲庭 彩和子(東京都美術館 学芸員)

《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》


活動内容

「情報交換から、日頃の悩みや疑問の解決の手立てを探す」

  1. これまでの鑑賞の取り組みや、美術館と連携した経験等について自己紹介
  2. ギャラリートーク1 
    作品に対する印象など、自由に意見交換
  3. ギャラリートーク2
    この作品を使用して、どのような鑑賞が可能か、教員の場合は授業、学芸員の場合はプログラムを考える視点で自由に意見交換
  4. ファシリテータが用意したワークシートを記入
    ワークシートの項目
    (1)この作品を使用して、どのような授業(ワークショップ)展開が考えられるでしょうか
    (2)この作品を使用する利点は何でしょうか
    (3)使用する作品を選定する際に、どのようなことを考慮すべきでしょうか
    (4)中学生にとっての鑑賞とは
    (5)効果的な美術館との連携とは
  5. ワークシートに基づいた意見交換
    体験的な活動よりも、ギャラリートークをきっかけとして、受講者のみなさんができるだけ自分の思いや考えを語り、情報交換からお互いに学び取ることができるような内容にしました。
    自己紹介の段階から、それぞれが日頃の取り組みから疑問に思っていることや悩んでいること、学び取りたいことを話していただいていたことから、その後のギャラリートークや話し合いが自然に課題解決の手立てを導くような流れとなりました。
    グループのメンバーは、現在は美術館に勤務していても、元々は教員である方が多かったため、最初は中学生にとっての鑑賞の在り方についての議論が中心でしたが、そのような中学生に有効な美術館との連携とはどのようなものか、そのためには、学校、美術館共にどのような準備が必要かという形に話が発展していきました。

発表

成果物はないため、口頭発表のみで行いました。

  • ギャラリートークの後、「中学生にとっての鑑賞とは」というテーマで、話し合いを行いました。
  • 自分の中で鑑賞についての疑問があり参加しましたが、話し合いの中から、答えを見つけることができました。
  • 生徒が感じていることを、指導者がどのようにキャッチするかについて、お互いの実践を紹介することで、「文章の上手い、下手で評価するのではない」「生徒が自分の感じたことや考えたことを書きやすいワークシートを工夫すること」「言語活動の充実を図る」など、様々なヒントを得ることができました。
  • 生徒が鑑賞したことを「すごい」「きれい」などの一言でしか表現できない場合は、指導者の発問が鑑賞する作品の形や色彩、イメージなどの共通事項に関連する内容にしてみることにより、生徒がより具体的に言葉に表すことができることがわかりました。
  • 鑑賞する作品を選ぶ際には、「生徒の興味・関心を引くもの」、「生徒に考える余地を与えることができるもの」、「生徒のこれまでの学習に関連したもの」などが挙げられました。
  • 豊かな心を育てるために、すぐれた文化財に触れる、自ら探求的に求めていく、という中で、鑑賞を捉えるのが大切ではないかという意見も出ました。
  • 美術館との連携を充実させるためには、事前の打ち合わせで学校側の考えをしっかり伝えるということも確認されました。



ファシリテータ感想

まず、受講者のみなさんの、この研修に対する意気込みに驚き、感動しました。また、それぞれがすでに日頃の鑑賞に対する経験が豊富であり、課題意識をもって研修に臨んでいらっしゃったので、自己紹介の中からグループワークで何を話し合うべきか、何を学び、持ち帰るべきかという目標が明確に浮かび上がり、とても有意義な話し合いの時間を過ごすことができたのではないかと思います。
なぜ、美術館との連携を行うのか。どのような作品を選択すべきなのか。どのような展開が望ましいのか。学校と美術館が事前に打ち合わせ、行っておくべきことは何か、具体的に話す中から、中学生に鑑賞で何を身に付けさせたいのか、中学生の時期だからこそ大切なものは何か、という鑑賞の根幹に至る部分まで、話し合いが充実しました。
みなさんの今後のご活躍を心からお祈りいたしております。

松永 かおり

サブファシリテータ感想

午前中は松永先生のファシリテートで、グループ内で作品についての発言が活発に行われました。的確なファシリテートが参加者の発言を活発にする事例を共有できたと思います。午後は各参加者の授業例や体験を共有し、これも有意義でしたが、もし時間があれば松永先生がなぜこの作品を 選んだのかをもう少し掘り下げ、また午前中の活動で実践されたファシリテートのコツをまとめて先生に伝える場面があると、午前中の活動で参加者が作品に引き込まれた理由が明快になりより良かったかなとも思いました。参加者の皆さんの意欲が高いだけに、時間は短く感じ、充実した研修だったと思います。

稲庭 彩和子


受講者感想(抜粋)

中学校教諭
  • 美術館でのギャラリートークは初めての経験だった。生徒の立場になって参加できていろいろな解釈、考えを伺うことができ、楽しく有意義な経験をさせていただいた。
  • 中学校の教育、美術館の関係者という立場の違った方々とのグループワークで、様々な意見を聞くことができた。時間が足りずあまり多くの話し合いができなかったように感じた。また、何か一つのグループでプログラムを作り上げてもおもしろいのでは、と思った。
  • 一枚の絵をあんなに長い時間見たのは初めてだった。やはり複数の方の目で見て、複数の方の意見を聞いたから、一枚の絵をいろんな見方で見られたのだと思う。
  • ハンマースホイに久しぶりに出会えて、以前は見逃していたことに改めて気づき、とても納得のいくワーキングの機会となった。
  • 作品を前にして感じたことを自由に言う体験は自分も初めてのことだったので楽しく受講できた。また他の先生の意見も聞けて良かった。
学芸員
  • 時間が足りないと感じた。発表は、一番知りたいところ(他のグループの意見)を時間の都合上、話せなかったと思う。
  • ギャラリートークにちゃんと参加・体験したことがなかったので、大変参考になった。小さい子どもたちと一つの作品を見ながら話し合いがしたくなった。