グループワーク 西村グループ
子供の見る力を高めるワークシートをつくろう
- 課題作品:
- 藤田嗣治
《自画像》1921年 -
アンリ・ルソー
《第22回アンデパンダン展に参加するように芸術家達を導く自由の女神》 1905-6年
>> 作品情報はこちら(画像有り)
- 受講者:
- 9名(小学校教諭5名、学芸員3名、指導主事1名)
- ファシリテーター:
- 西村德行(東京学芸大学芸術・スポーツ科学系 美術・書道講座准教授)
- サブファシリテーター:
- 矢花俊樹(埼玉県立近代美術館 学芸員)
活動内容
1. アートカードでかるた遊びをしながら自己紹介
一人2枚ずつのアートカード(絵札用)と、付箋2枚(読み札用)を配布。書き終えたらカードを机の上に広げ、読み札はファシリテーターのもとに集める。カルタをとった方から自己紹介ができる。
2. 課題作品をじっくりと鑑賞する
課題作品の横に展示されている、藤田嗣治『自画像』で作品鑑賞のウォーミングアップ。対話による鑑賞活動で、見ることそのものを十分に味わう。その後、課題作品をじっくりと見て、何が描かれているのか、絵を見て思ったことや発見したこと等を配布した図版に書き込む。
3.「子供の見る力を高めるワークシート」をつくる
グループを2つの班(アンリ版とルソー班)に分け、今日のグループワークが、「子供の見る力を高めるワークシートをつくろう」であることを伝える。対象は小学校高学年という設定で、課題作品を見たときにどのような対話をしたいのか、図版に書き込んだこと等を参考にしながら、「問いと予想される子供の発言」を考える。そしてその考えた問答を付箋に書き込み、模造紙に貼ってそれぞれの考えを共有する。
4. 授業展開の検討とワークシートの作成
ワークシートは、「子供の見る力を高める」ことが目的である。どのようにすれば「子供の見る力」を高めることができるのか、高めるための発問等を検討しながら、それが反映するよう、ワークシートを作成する。
5. 2グループによる発表(各グループ5分程度)
グループごとに考えた授業を発表する。「子供の見る力を高める」ために、ワークシートで使った言葉や画像、レイアウトなどの工夫した点についても発表する。
発表
アンリ班の考えた授業
まず作品を上半分・下半分・全体の順で鑑賞する。気になるところをワークシートに記述し、発表された友達の意見もまとめるようにする。その上で、「吹き出し」の描かれたワークシートを見て、作品の中の人や動物などが何をつぶやいているのかを想像し、さらに作品に感情移入するようにする。最後に「みんないろいろ考えたけど、わからないところは作者に聞いてみたら?」となげかけ、作者への手紙を書いて授業をまとめる。
ルソー班の考えた授業
ワークシートには作品画像を載せず、拡大画像をみんなで見る。まず気付いたことや気になったことを、理由とともにワークシートに記述する。その上で作品を上半分・下半分と分けて鑑賞し、それぞれの箇所について思ったことを書く。最後に作品に題名をつけ、3行程度で簡単な物語を書き、相互に発表して授業をまとめる。
グループワーク講評
最後は「芸術を導く女神」というシンボリックな作品で、今日半日のみなさんの努力が実るような発表でした。このグループもたっぷりとこの作品を媒介にしながら、いろんな話をまずメンバーの中でして、その中のほんの少しのものを絞り込んで、小学校高学年向けのワークシートに落とし込んでいきました。出来上がったワークシートは非常にシンプルに見えますが、そこに学校の先生、指導主事、さらに学芸員の立場を超えた実りが宿されているということがよくわかります。そのことを芸術の自由の女神が祝福してくれる、というエンディングでした。
長田 謙一
ファシリテーター感想
西村+矢花グループでは、高学年の授業づくりをおこないました。ワークのテーマは「子供の見る力を高めるワークシートをつくろう」です。近年、作家作品をもちいた鑑賞の授業が多くの学校でおこなわれるようになってきました。そこで先生方からよくお聞きするのが、「子供たちの感じたことや考えたことをもっと知りたい」というご意見です。しかしワークシートは記録するためだけでなく、まず何よりも、子供たちの鑑賞の能力をより発揮させるためのものでなければなりません。そこで今回は、「子供の見る力を高める」ためのワークシートづくりをおこないました。アンリ班・ルソー班とも、作品を思わず見たくなる工夫満載の、すばらしい授業展開・ワークシートを作成いただきました。グループの先生方、また一緒にグループワークを進めていただいたサブファシリテーターの矢花先生に深く感謝いたします。有り難うございました!
西村徳行
サブファシリテーター感想
グループワークの課題は「アンリ・ルソー《第22回アンデパンダン展に参加するように芸術家達を導く自由の女神》の鑑賞授業を想定し、授業の展開に合わせたワークシートを作成する」でした。鑑賞の指導案を考える上で大切なことは、児童・生徒の立場に立って考えていくことです。それを実感する為に、小・中学生になりきって、藤田嗣治の《自画像》で“対話による鑑賞”を行いました。私が発問すると初めはなかなか大人の視点が抜けませんでしたが、対話を進めるうちに子どもらしい発言が出るようになりました。子どもの発言を予想することで、子どもに適した発問も生まれてくるのです。とは言え、子どもの絵の見方や感じ方は大人の想像を超えるものです。なかなか教師が思い描いた通りに進むものではありませんが、そこに鑑賞授業の面白さ、奥深さがあるのです。参加者がつくり上げた鑑賞授業の展開やワークシートはとても工夫がしてあり、参考になりました。
矢花俊樹
受講者感想(抜粋)
グループワークのご意見・ご感想
- 小学校教諭
-
- ワークシートづくりがグループの主な課題でしたが、いつもワークシートに悩んでいたこともあり、有り難かったです。時間をかけて意見を出し合いかたちにできたことがとてもよかったです。今後の参考になりました。またそれぞれのグループのテーマが違っていて、いろんなやり方があることが学べて今後にいかしていけそうです。同じグループの方とも仲良くできました。
- 矢花先生との授業シュミレーションにおいて、実際に自分が児童の立場になることができて大変参考になりました。授業で発問を精選したいと思います。また、西村教授との自己紹介が明るく楽しい雰囲気で進行し、緊張していた心がほぐれました。
- 学芸員
-
- 鑑賞というキーワードは全体でおさえながらも、それぞれのグループで多様な鑑賞方法でグループワークを行い、その成果を全体で共有できたことが有意義でした。
- 指導主事
-
- 小・中学校教員、学芸員、指導主事が職種をこえて鑑賞教育について話し合うことができ有意義でした。
グループワークの経験を、現場でどのように生かしたいと考えますか
- 小学校教諭
-
- 自分のグループでやったワークシートをもとに自分の学校や美術館での鑑賞授業で生かしていきたいです。その他のグループの行った身体表現での鑑賞や付箋を多く使う方法なども使っていろんな方法で活用していこうと考えています。また自校だけにとどまらず、自分の地域の教師にも伝えて鑑賞授業の方法を多くの教師に実践していけるように広めていきたいと考えています。
- ワークシートの制作を通して、授業の流れや児童の反応を想像することができました。学習のねらいを明確にし、児童の発達の段階に応じた授業を展開したいと思います。グループワークで学んだ視点の切り替えや鑑賞における場の設定の工夫を生かしたいです。
- 学芸員
-
- 鑑賞する子どもたちに寄り添いながら、その時々の状況に合わせて多様な鑑賞活動を展開していきたいです。
- 指導主事
-
- 一つの作品を児童生徒に鑑賞させる際の視点としたいです。また、ギャラリートークを行う際のモデルとして活用したいです。