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NCARワークショップ007 2026年度全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」活用講座 開催レポート「鼎談:SHŪZŌをどう使う?――協力館の立場からみる活用法」

NCARワークショップ007 2026年度全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」活用講座 開催レポート「鼎談:SHŪZŌをどう使う?――協力館の立場からみる活用法」
登壇者

溝上 心太(国立アートリサーチセンター・進行)
成相 肇(東京国立近代美術館)
副田 一穂(愛知県美術館)
江上 ゆか(兵庫県立美術館) 
川口 雅子(国立アートリサーチセンター)
手錢 和加子(アートプラットフォームジャパン進行管理)

はじめに

NCARワークショップ007 2026年度全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」活用講座 会場風景
会場風景

2026年6月19日(金)、国立アートリサーチセンター(NCAR)は、全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」へ参加している、ないし参加を検討している美術館・博物館等の担当者を対象に、NCARワークショップ007「全国美術館収蔵品サーチ『SHŪZŌ』活用講座」を開催しました。
本ワークショップでは、冒頭でSHŪZŌの基本機能についての報告が行われたあと、SHŪZŌを活用してきた協力館の学芸員による鼎談が実施されました。本記事は、鼎談内容の書き起こしレポートです。

登壇者紹介

溝上
それでは、「鼎談 SHŪZŌをどう使う?――協力館の立場からみる活用法」のセクションに参ります。まず私から簡単に、本日ご登壇いただく3名の皆様についてご紹介させていただきますと、SHŪZŌを掲載しているプラットフォーム、「アートプラットフォームジャパン」では、美術の研究調査に必要な資料の収集・データ化・公開についてご意見をいただく場として「研究資料委員会」を設置しています。本日ご登壇いただく皆様は、その現在の委員でもいらっしゃいます。つまり、SHŪZŌの裏側も含めてその実態をご存じで、SHŪZŌも何年も活用いただいているので、本日は貴重なお話を伺えるのを私自身も楽しみにしてまいりました。
それでは、本日ご登壇いただく皆様をご紹介します。まずは兵庫県立美術館から江上さん、真ん中が愛知県美術館の副田さん、一番奥が東京国立近代美術館の成相さんです。早速ですが、簡単な自己紹介と、ご自身がどのような担当をされていて、SHŪZŌにどう関わっておられるのかを、簡単で構いませんのでご紹介いただければと思います。
成相
成相です。東京国立近代美術館のコレクションの部署、美術課というところに勤めており、主に広報に関わっています。「コレクション情報発信室」というのですが、半分が学芸員、半分が広報という、ほかにあまりないポジションだと思います。通常の学芸員の業務と変わりませんが、ほかのお二人とは違って、僕自身はSHŪZŌに美術館からデータを提供する部署・係ではないんですね。一方で、僕はSHŪZŌの運営というか、システム構築にずっと関わっているという微妙な立場なので、一人目としてご紹介いただくには微妙だったかもしれませんが、そういう立場です。あとでもお話しすると思いますが、常時SHŪZŌは楽しく使っています。
副田
愛知県美術館の副田です。4月から企画普及課長を拝命しまして、課としては今、企画展と教育普及事業がメインで、いわゆるコレクションの管理ではない部門をやっています。ただ、愛知県美のデータベースを今の形にしたときに、基本的な設計の部分――こういうふうにしようという部分――を私が担当していたので、それ以降も、データベースのこうした連携の動きのようなものは、なんとなく私が引き続き窓口になってやっているような感じです。逆にSHŪZŌを使う側としては、一学芸員・研究者として、自分の企画を立てるときや、コレクション展を何かやるときに、調査で非常に頻繁に使っています。
江上
兵庫県立美術館の江上です。私はこの4月から、十数年ぶりに教育普及の担当になったのですが、それまでは特別展の担当にいました。実は、SHŪZŌに直接データを提供しているのは、別にコレクションを管理するグループがありまして、そちらが担当していて、私自身は協力館ではあるものの、直接データのやりとりをする担当ではないんですね。ただ、なぜ私がこの場にいるのかを改めて考えてみると、先ほどご紹介いただいた研究資料委員会は、アートプラットフォームジャパンの中でSHŪZŌ以外にもいろいろな検索・データベースを扱っていて、その中の「画廊」、日本の画廊に関するデータベースに当初私が関わっていた流れから、今このSHŪZŌのほうにも委員として関わらせていただいています。なので、画廊のような、それまで可視化されずデータが蓄積されづらかったものや、エフェメラ的なものへの関心から、なんとなく関わってきた、という形になるかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

SHŪZŌ活用の具体的な事例

溝上
まずは活用の具体例から伺います。調査研究・展示企画・連携事業、あるいは教育普及活動での活用事例を知りたい、という声を多くいただきました。
成相
おそらく最初に公式に「SHŪZŌを使いました」と表に出したのは私だと思います。2024年の「ハニワと土偶の近代」展の図録に「美術と『縄文』の150年」という論考を寄せ、150年間に美術へ縄文がどう現れたかを辿りました。調べてみると、戦後すぐの1950年代に「縄文」「土偶」「原始」「化石」「古代」といった語をタイトルに含む作品が多い――古代ブームが起きていた――という見立てを裏づけるためにSHŪZŌを使い、それを論考に明記しました。ある年代に限ってタイトルを検索し、全国の所蔵品をずらりと一覧する。これはSHŪZŌ以前にはできなかったことです。ほかにも、同じ版画を別の館がどう英訳しているか、素材表記をどうしているか、新しい所蔵品にどうタイトルを付けているかを他館で参照する、といった使い方ができます。
副田
宣伝も兼ねてですが、日曜日(2026年6月21日)まで愛知県美術館で開催中のコレクション企画(「地方独立行政法人化記念 県美+愛陶コレクション企画 コレクション、往来!」)で、姉妹館の愛知県陶磁美術館と二館のコレクションをコラボさせた展示を担当していて、まさにSHŪZŌを活用しました。自館の所蔵品に、中国・大同市の雲崗石窟を描いたものや拓本がやたらと多く入っていて、行っている年代もバラバラ、日本画家も洋画家も行っている。その傾向を横断的に調べたくて、SHŪZŌで「石窟」と入れて制作年の古い順に並べると、鶴田吾郎が1937年に行っている、川端龍子も行っている、とわかる。日中戦争の最中に誰がどのタイミング・理由で行き、戦後どうなるのか、を大づかみにつかめました。コレクション展なので借用はしませんが、一点一点の解説を書くときに「こういう状況でうちの所蔵作家も行ったのだ」と自信を持って書ける裏づけになります。同じように「アンダーソン壺」を描いた戦後の洋画家を調べたら、最後に三岸節子が出てきて――一宮市三岸節子記念美術館に行くとアトリエにこの壺が転がっているんですよ――という発見もありました。
江上
成相さんと共同で企画した巡回展(「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」東京国立近代美術館・豊田市美術館・兵庫県立美術館を巡回)でも、一箇所、謝辞でSHŪZŌに触れています。戦後の、それまで言及されることの少なかった人を含む14名の女性美術作家を紹介する展覧会で、その中に大橋コレクション所収の作家・作品が多くありました。大橋コレクションは国立国際美術館・奈良県立美術館・京都工芸繊維大学美術工芸資料館の三館に分かれて収蔵され、全体で2000点弱あります。以前から関心があり、この機会に一本書いたのですが、[編者注:SHŪZŌ協力館の]奈良県美も国立国際も紙のカタログとデータベースがあり、SHŪZŌ未参加の京都工芸繊維大学からもデータを提供いただけた。つまり三館分のデータをCSVでダウンロードでき、分かれていた三館分を一本のリストにまとめて、そのうち女性作家がどれだけいるかを確認できました。このデータがなければ、絶対にやろうとは思わなかった作業です。ただ補足すると、ダウンロードした上で紙資料との付き合いはやはり必要でした。当時は海外作家をSHŪZŌに入れない方針だったので、その部分を補ったり、各館の表記の揺れを処理したり――要は再調査ですね。SHŪZŌは今までできなかったような入り口のデータを提供してくれますが、それをどう使うかは使う側の工夫次第、とも言えます。
成相
補足すると、あの展覧会は途中から評価されなくなった作家が多く、個展を開いていない作家が多かった。普通は個展カタログを参照して所蔵先を確認し借用交渉に入りますが、個展のない作家はとても調べづらい。そこでSHŪZŌがめちゃめちゃ役に立ちました。オンライン会議中にみんなでSHŪZŌを開いて、「この作家はここにある、これ借りますか」とリアルタイムに使いながら出品リストを固めていった。個展を開催していない作家の検索には非常に便利です。
溝上
チャットでも、「当館でも新収蔵品のタイトル等の英訳の参考にSHŪZŌを使っている」とコメントをいただきました。ありがとうございます。
副田
作品収集とも絡みますね。購入でも寄贈でも、まず作品情報・作家情報をSHŪZŌで叩いてみて、どのくらい各地に入っているか、同じエディションがどこにあるか、参加館に関しては大づかみに傾向がわかる。
成相
一般の方でも、自宅にある作品を寄贈したいがどこへ寄贈すればいいか、というときに検索して、その作家の作品を多く持つ館を見つけられる。依頼を受けた側も「その作品ならこの美術館にたくさんあります」とデータ検索のために使える。使い道はいくらでもあります。

作品公開のメリット・デメリット

登壇者写真
左から江上 ゆか(兵庫県立美術館) 、副田 一穂(愛知県美術館)、成相 肇(東京国立近代美術館)
溝上
SHŪZŌを導入して館にどんな変化・効果があったか、資料に与えるメリット・デメリット、公開している情報に寄せられる反応など――この質問も非常に多くいただきました。
江上
一つ良かったと思うのは、管理データベース「I.B.MUSEUM SaaS」の修正履歴を、別途Excelの一覧にまとめるようになったことです。単なるミスタイプと、判断を要するものとでシートを分けて。それは「SHŪZŌさん」へ提供したデータとの差分の一覧にもなります。作品ごとの個票には「こう修正した」と書いてあっても、一覧になったものはこれまでなかった。一覧にして初めて見えてくる問題もある。データ管理の手法を見直すきっかけに、SHŪZŌへの提供がなった気がします。
成相
SHŪZŌを「SHŪZŌさん」と呼ぶのが、関西カルチャーを感じますね(笑)。
江上
そうですか(笑)?
成相
SHŪZŌという名前をつけたときは、人のように愛されてほしいという意味もあったので、嬉しいです。
副田
館にとってのメリットというより、むしろ参加していないと自館のコレクションがそこから漏れてしまう――参加しないことのデメリットもありそうだ、という趣旨の質問でもありますね。
成相
暗に「これ、面倒くさくないですか」「業務の負荷が増えませんか」と聞かれているのだと思います。思い当たるデメリットは二つ。一つは借用依頼が増えて手間にならないか。これは、増えても担当者が適宜業務に従って断ればよく、最終判断は所蔵館にあります。実際に「SHŪZŌに入って借用が増えた」という声は聞いていませんし、むしろより細やかに検索結果が出るので、従来は代表的な美術館ばかりが検索されていたのが分散するのではないか、というのが私の印象です。もう一つの業務負担については、これは大事な点で――このSHŪZŌというシステムを作ったときに一番考えていたのは「現場への負担減」でした。全国の所蔵品の横断検索という試みは何度もあって、何度も頓挫してきた。それが今回、だいぶ土台が築けて成功と言えるレベルになったのは、「フォーマットに入力してください」という方式ではなく、「所蔵品目録は紙のままで構わないので送ってください」「管理データを全部送ってください」として、事務局側で入力したからです。エンジニアと事務局が頑張ったからこそ、この短期間でこれだけのビッグデータを集めてローンチできた。負担が増えるどころか、負担がないように進めている、ということは強調しておきたいです。
江上
「資料に与える」という点に戻ると、これまで集中していたものが分散することもとても大事です。今までだったら注目されなかった作家・作品・所蔵者が、全国的・全世界的に可視化される。存在が可視化され、気づかれなかった価値が与えられる可能性が生まれる。資料に与えるメリットとしては、実はそこが一番大きいのかもしれません。
副田
自館の公開用データベースを持つ館と持たない館で、印象はだいぶ違うと思います。持たない館なら、SHŪZŌを導入すればそこで検索システムをお客さんに提供できる。それがもう最大のメリットです。持つ館は、出しているデータをそのままスライドして入れていただくのが一番手っ取り早い。借用依頼が自館DBとSHŪZŌのどちらから来ているかは私もあまり把握していないので、SHŪZŌで借用が増えているのかはよくわからない、というのが正直なところです。
溝上
派生して伺います。作品公開にあたって館内の業務負荷をどう分担しているか、という質問も多くいただきました。限られた人員で長期的に更新・活用していくために、現場でどう分担しているか、いかがでしょう。
副田
これもデータ提供の仕方によって負担感が全然違います。手厚いがゆえに、紙の目録を事務局にお渡しして入れてもらう形だと、入れてもらったデータを全部チェックしなければならず、確かに大変です。一方、うちのように自館データベースで公開している情報をそのまま吐き出して渡せば、機密情報の欄を出していないか等は見ますが、それさえ合っていれば二度のチェックはそれほど要らない。Excelをさっと吐き出してメールする程度で、分担するほどの負担もない。何をしなければならないかは各館の状況でだいぶ差があると思います。
江上
兵庫は比較的早い段階でまとまった数の画像をお渡ししたので、事務局もまだ画像の受け渡し方を試行錯誤している段階で、担当者と事務局でかなりやりとりをしました。逆に言えば、そういう経緯を経てSHŪZŌもやり方をアップデートしてきた。一方的にやるのではなく、現場がよりやりやすいように「これならできます」という声を聞いてやろう、という姿勢を事務局が持ってくださっている。
成相
「ぜひご相談ください」と。
江上
ええ、ご相談いただくのが本当にいいと思います。
成相
国立館でも、東京国立近代美術館にはアーキビストやコンサバターのポジションがなく、各担当者がデータを提供している。どの項目を出す/出さないを慎重に複数人でチェックして出すフローなので、その分の手間はあります。ここは難しいところで、我々は提供館でもあり、SHŪZŌを作っている側でもあります。作る側の立場から言うと、参加していない美術館が「借用依頼が増えるかもしれない」と二の足を踏んでいる、と実際に聞いたことがあります。建前で言えばそれは非常に残念なことで、「借用されないために情報を出さない」というのは、裏を返せば公開という義務を果たさないことと変わらない。SHŪZŌは便利に使えるツールでもありますが、基本的には、美術館の所蔵品を公開するというパブリックなミュージアムとしての義務を拡張・補強するためのものです。ぜひ参加いただきたい、参加すべきである、というところまで強めに言っておきたいと思います。
江上
一つ思い出しました。ちょうど著作権法が改正されてサムネイル画像の公開ができるようになり、館のデータベースでどうするか、と議論していた時期にSHŪZŌの話をいただいた。最初は「I.B.MUSEUM SaaS」側にその機能が実装されていなかったのですが、やりとりしている間に各館からの声が多かったようで、機能が実装され、最終的にそこから吐き出したデータを提供する流れになりました。困っていること・大変なことは、本当に声を上げるのが大事だ、という一例として。

自館システムとSHŪZŌの使い分け

溝上
自館システムとSHŪZŌをどう使い分けるか。自館の所蔵品データベースとの使い分けや連携のヒント、自館サイトの収蔵品紹介・検索との棲み分けや併用のコツ、今後データベースを持つ館に推奨したいこと――この使い分けについては、かなり多くの質問をいただきました。
成相
これが一番びっくりしました。考えてもみなかった、というか、実際に使い分けは考えていない。でも、この質問はすごく多かったですよね。副田さん、お願いします。
副田
あまり意識していない、というのが正直な答えです。まず自館データベースがどういう状態かにもよりますが、うちも「I.B.MUSEUM SaaS」を使っていて、お客さんに公開している情報は、そもそも所蔵品管理データベースの副産物として、出せるところだけを吐き出しているものです。元をたどれば、出庫入庫や修復歴の管理といった作品管理のためのデータベースがあり、その中で出せる部分をお見せしている。そのデータを「SHŪZŌが欲しい」というので「どうぞ」という話でしかないので、そこで使い分けを考えたことがなかった。ただ改めて考えると、愛知県美のコレクション検索を毎日訪れて検索する人は、ほぼ自館の学芸員くらいなんですよ。来る人は「クリムトの作品を知りたい」のような明確な目的があるか、Googleでたまたま引っかかったか、くらい。一方SHŪZŌは、学芸員的に何か調べたいときに、とりあえず行って叩くのが結構便利にできてしまう。「これを調べたい」と来て、「たまたま愛知県美がいっぱい持っている」に出会う、出会いのポータルサイトなんですね。ユーザー側からすれば用途が全然違う。その窓口的なところからうちに来てくれればいいし、アクセス数を増やす目標を立てているわけでもないので来なくてもいい。でも、愛知県美のコレクションを少しでも知ってもらうきっかけがたくさんあること自体は、超ウェルカムだと思っています。
成相
「使い分けはどうするの」という質問が多いのは、たぶん、まだあまり使ってもらえていないからかもしれない。
副田
使い方がわからないから、と。
成相
使い分けも何も、冷やかしでいいから見てもらえれば。SHŪZŌを触ると爆発する、なんてことは絶対にないので(笑)。デパートで買う人もいれば、ヨドバシカメラに行く人も、コンビニに行く人もいる、くらいの感じです。使っていれば、使い分けは自ずとわかると思います。
江上
想像するに、この質問の背景には、館内などで「SHŪZŌに協力した方がいい」と思っている人と、「そこまで手間をかけなくても」という人がいて、どう違うのか・何がメリットなのか、という参加のメリットの話につながっているのかな、と。
成相
参加するメリットはめちゃくちゃ大きいです。
江上
「すでに自館で公開しているのに、わざわざここに登録する? 自館サイトのアクセス数という意味では、自館に来てもらった方がいいのでは」――これに対する反論は。
成相
参加するメリットは、その館にとってのメリットのみならず、むしろ全員の利益になる。そこが大きいんです。
江上
さっきの「所蔵館だけだと気づかない価値の発見」で言えば、参加館が増えれば増えるほど、より多様な検索・多様な視点が生まれる。単に量が増えるだけでなく、本当に見出されうるものが広がっていく。
成相
公共性が高まる。
江上
そこですね。ただ、そこがすごく抽象的なので、ロジックとしては押しが弱いというか。
成相
使ってください。面白いし、いろんな使い方ができるし、インターフェースも非常によくできていて見やすい。ぜひ使ってほしい。
溝上
いまの点はかなり声として上がっていて、要は内外にどう働きかけるか、という質問でした。例えば「作品管理者と他の職員との間に、データベースへの理解や活用への温度差がある」という内への働きかけ。あるいは「一般の方・研究者・他館の学芸員に、自館の収蔵ページを活用してもらう働きかけの方法を知りたい」という外への発信。この点はいかがでしょう。
副田
何かをやるとき、わかりやすいメリットとして来館者増やアクセス増を言いたくなる気持ちはよくわかります。でも一方で、公共性のある美術館として、持っているものを何らかの形で情報をオープンにしておくのはマストな話で、いわば土台の話なんですよね。その先に、打って出る広報的な活動や教育普及的な活動がある。まずその土台を整えよう、という意味では、SHŪZŌ連携まで行かなくてもいい。立派なデータベースを作る余裕もお金もない館はもちろんたくさんあると思いますが、ExcelのリストをPDFに吐き出してウェブに貼っておくだけでもいい。それで十分、責務を果たしていると思うんです。何を持っているかを、とにかく一旦、誰でもアクセス可能な形にしてあげること。それが基本のキだ、という意識を共有してほしい。データベースというと、こういったことに詳しい人とそうでない人の温度差がもちろんあるけれど、そういう話ではなくて、持っている情報をちゃんと公開して、お客さんにも研究者にも「うちはこういうものを持ち、こういう活動をしている」とアピールするための単なるツールなんです。そのツールの中で、SHŪZŌは本当によく作られていてめちゃくちゃ便利なんですけど、そこまで行かなくても、まず情報を出そう、という意識を館の中で共有してほしい、とすごく思います。
江上
参加している協力館の側から言うと、どうしても自館データベースとの「時差問題」が出てきます。一度データを提供した後にまとまった大口の寄贈があっても、それが反映されるまでに時間がかかる。自館の方と差ができてしまう。作品データに敏感な学芸員ほど、「早く最新版にしたい、間違ったものが出てしまっている」と気になる。
成相
それで参加したくない、というところもある。そこは大事です、すごく。
江上
その気持ちはすごくわかる。わかるけれども、というところですよね。
副田
私も実は、昔は結構な完璧主義者でした。「データベース、データベース」と言われ始めた頃、自館の所蔵品たちが可愛いので、ちゃんとしたデータで出してあげないとかわいそうだ、という気持ちでいた。でも真面目にコレクション研究をやっていくと、研究すればするほどデータは書き換わっていくんですよね。新しい情報が出てくれば制作年も遡る。それを「ミス」と捉えるのか、「新しい知見・研究の成果」と捉えるのかで、気持ちの面でだいぶ違ってくる。やればやるほど情報は書き換わるので、「うちの子たちの完璧なプロフィールです」と言って出せることは、永久にない。そこでどこかで踏ん切りがついたんです。ワーキング状態で出すしかない。どの館も今、ワーキング状態で出しているわけです。だって絶対に完璧じゃないんだから。だからどんどん出して、なんなら批判ウェルカムですよ。うちはもともと近現代専門の収集をしていたのに、木村定三さんというコレクターから考古遺物から江戸絵画、茶道具までバーッといただいたので、自館の学芸だけでは到底調査もできない。だからジャンルごとに外部研究者をお呼びして見てもらう、ということをやってきた。そういうものだと思ったんですよね。差分の問題はもちろんありますが、去年の段階と今の段階でも変わっているし、今日もうちの学芸が何か新しい発見をしているかもしれない。長い目で見れば、一年の差分などはどうでもいいんじゃないか――言い方は極端ですが。よほど重大なミス、例えば高知・徳島の県立美術館であった贋作の件のようなものなら、即時反映が必要だと思いますが、そうでないアップデートは多少のタイムラグがあってもいい、というのが私の個人的な感覚です。
成相
素晴らしいと、僕も思います。
江上
各館のホームページの方が最新なら、むしろそれを売りにしてもいい。
副田
いいですね。「こちらが最新ですよ」と。
成相
タイムラグについては、ぜひご寛容に。もちろん更新のお手伝いはこちらからも行います。あと細かい話ですが、SHŪZŌのどのページにも、下の方に「このページの修正を提案する」というボタンがあって、誰でも修正依頼ができるようになっています。あまり使われていないので、ぜひ使ってください――といって死ぬほど来たら事務局が大変ですが(笑)。「ここが違いますよ」とすぐ通報・修正できるようになっていますので、ご安心ください。

SHŪZŌのさらなる活用に向けた課題

溝上
ここまでさんざんSHŪZŌを褒めていただいたので、最後にさらなる活用に向けた課題を伺いたいと思います。「SHŪZŌがこうだったらなお良い」「将来的にはこうあるべき」など、綺麗事だけでなく本音の部分を。利用している皆さんが現在問題だと感じている点があれば併せて、いかがでしょう。
成相
僕はSHŪZŌを作る前から関わって、ずっと一緒にやってきた立場なので、「こうしたらいい」というのは基本的に実装してもらっていて、今の形が理想ではあるんです。本音と言われても難しい。あえて理想を言わせてもらえば――さっきの話に戻ってしまいますが――全美術館が参加することです。それが一番望まれる状態で、叶っていないのは、僕は残念です。これは我々だけではどうしようもないので、各館のご協力を仰ぐほかない。使ってみて便利で、それでもご参加いただけていないのなら、「自分のところは使うけれど所蔵品は公開しない」というのは残念なので、フェアに使い、データも提供する、というようにしていただければと思います。問題と感じている点は、僕からは特に思いつきませんでした。綺麗事でも本音でもなく、率直にそうです。あとは画像ですね。画像がもう少し欲しい。画像があれば見た目もリッチになり、利便性も高まる。著作権法に従った出し方をしているので、パブリックドメインか否かに関係なく、所蔵品の画像をお寄せください。業務上難しいことがあれば、ご相談いただければと思います。検索についての要望も多くいただきますが、皆さんGoogleのような巨大プラットフォームの使い勝手を当てはめてご指摘くださることも多くて。SHŪZŌはGoogleほどの規模では動いていないので、予測検索や曖昧検索などはなかなか難しい。そこはご勘弁いただきたい、とも言い添えておきます。
江上
SHŪZŌ自体の機能はだいぶこなれてきたと思うのですが、自分たちの側のデータの取り方とSHŪZŌの枠組みとの齟齬があります。わかりやすい例で言うと、版画作品のシリーズでシリーズ名が一括してあるとき、個々の作品には枝番しか入っていないと、《作品名1》のような――ピカソの《カルメン》が《1》みたいに――出てしまうことがある。これはデータの吐き出し方や、使っている管理ソフトとの相性の問題です。そういうことで実際にデータ提供を担当する現場の人はひとつひとつ躓くので、そこが実は業務負荷になる。別のフェーズの問題がいろいろ絡んでいるんですね。その大きな一つは、作品データを取るときの標準的な記述スタイルが、日本ではあまり確立されていないという問題です。それはNCARの中で別の取り組みをされているのだと思いますが、今回のSHŪZŌのようにテーマを絞ったときの問題ではなく、美術館全体のデータ管理や、作品データを巡るさまざまな重要な問題がくっついてきている部分がある。こういう機会にいただいたご意見から課題を抽出して、みんなで解決していく場ができればいいな、と思っています。

質疑応答

NCARワークショップ007 2026年度全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」活用講座 会場風景
会場風景
溝上
時間が迫ってきましたので、チャットでも、会場で対面参加の皆さんでご質問があれば、ぜひお願いします。
会場質問者1
ご発表ありがとうございます。データベースを拝見すると作者不詳のものも結構入っていますが、博物館を抱えている立場からすると、作者が不詳というより「作品というより資料」のようなものもあります。SHŪZŌはそういうものも含みうるのか、入れた方が皆にとって幸せなのか、どういうスコープで作者がわからないタイプのものを扱えばよいか、伺えればと思います。
川口
SHŪZŌは基本的に美術作品を扱う、というのがまず大きな枠組みです。その美術作品も、日本の美術館・博物館が収蔵する、そしていまは19世紀以降の作品としています。もちろん時代の制約は少しずつ広げているので、今後また変わるかもしれません。基本はその枠組みの中で、各館から提供されたデータからこちらで抽出して載せています。作者がわかっている19世紀以降の作品はすぐ載りますが、作者不詳のものは――もちろん議論はありますが――議論し相談しながら「これは入れていい」と入れています。制作年がわかれば作者不詳でも入る、というのが今の状況です。
会場質問者1
曖昧な事例も、とりあえず扱ってみればいい、と。
成相
美術専門のアグリゲーターとしての枠は保たなければならないので、博物館資料も含むのであれば、ジャパンサーチもありますし、というくらいの考え方ですね。
会場質問者1
ありがとうございます。
会場質問者2
当館も参加し情報提供しているのですが、どれくらいの頻度で更新・情報提供をしていけばよいかが、少し分かりづらい。補佐員の周期で担当が変わったりして、前任がどうやっていたかが見えづらい部分もあります。更新頻度の目安や、他館がどうしているかなど、目安があると分かりやすいのですが。
溝上
SHŪZŌ自体は、まず随時修正を受け付けています。緊急性が高いものは即時反映する体制を取っています。そのうえで定期的なスパンとしては、SHŪZŌは年に一回、12月に全体を公開しています。ただ、SHŪZŌのスパンに合わせるというより、各館が「この期間にこう修正して反映したい」というのを決めて提供いただければ、アグリゲーターとしてはそれをそのまま公開する、というのが基本的なスタンスです。
会場質問者2
細かい修正が全部は追いきれないとき、「全部更新してください」とお願いしていいのかも気になっています。
成相
皆さん結構躊躇されるのですが、むしろ、前に送ったデータと同じフォーマットで更新版をまるっと送っていただいた方が、こちらは拾いやすい。
手錢
「ここを変えました」という細かいメールをいただいてももちろん歓迎ですが、一年分を追うのは大変かと思います。年に一回、だいたい4〜5月頃にお声がけをして、夏までにデータをいただき、冬に公開する、という一年のスパンにしていきますので、そのタイミングに乗っていただけると嬉しいです。その時は丸ごと送っていただいて大丈夫です。
溝上
時間も迫ってまいりましたので、鼎談はここまでとさせていただきます。ご登壇いただき、ありがとうございました。

執筆者:国立アートリサーチセンター特定研究員 溝上心太